部長、うっかり出社する

朝からもう、泣きそうだ。


改札は俺の直前で故障するし、自動ドアは俺にだけ開かない。

新入りの守衛には無視されて、会社では廊下でも、フロアでも、すれ違う俺に誰もどこうとしない。


挙げ句のはてにだ。菊の花が俺のデスクに置いてある。


嫌われたものだな。自覚はあったけどさ……


立ち尽くしていると、いつもぼーっとして気の利かないと有名な奴と、目が合った。


立ちあがったそいつは、俺のデスクの花の前で手を合わせ、ちらと横目で俺をみると、


「……部長、大変もうしあげにくいのですが、あなたは昨夜、息をおひきとりです」


と、つぶやいた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る