30秒小説集 僕と彼女のタイムリープ
朱
僕と彼女のタイムリープ
たまに記憶がとぶ。それは自覚している。
この今日は、あの事故から何年たった今なのかと店のなかを見まわした。
駅ナカの喫茶店……
むかい合ってノースリーブの女性がいる。
指輪のくすり指が、カップを包んでいる。
目をあげると、その人も僕の顔を見た。
「もしかしてまた、とんじゃった?」
僕は観念して、うなずいた。
すると、そのひとが微笑んで、
「じゃあ。また私に、恋してくれる……?」
僕の指輪に、おなじ指輪のある手を重ねた。
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