遠藤正明

遠藤正明①

俺の名前は遠藤正明(えんどうまさあき)

社会人で歳は36

趣味は特になし

あえて言うなら動画配信サービスで適当に映画を見るくらいか

いつも通り社宅と職場を往復する毎日

地道に働いて老後の預金くらいは稼げたらそれで良かった

だがこの世に神様と呼ばれる存在がいるのか知らないが、そいつは俺のプランを許さないらしい

「はは、我ながらすごい顔だ」

美女と野獣症候群

この名前が聞こえ出してから数ヶ月たった

全国的に発症しだしてまもなく俺も発病した

全身には体毛が覆い尻尾が伸び、歯は牙に変わり角も生えた

鏡に映るその姿は正に野獣だった

最初は確かに面食らったが犬のような顎から並ぶ牙を磨くのも慣れてきたもんだ

この症状を治す方法は見つかっている

それは愛を取り戻すこと

野獣になった人の共通点は皆愛情を忘れてる

つまり手っ取り早く治すなら恋人を作るか家族を大事にすればいい

政府は対応するため野獣になった人を対象にお見合いや婚活パーティーを立ち上げている

その甲斐あってか物語よろしく人間に戻ってカップルが成立した事案も多いらしい

実家からもお見合い写真が次から次へと送ってくる

結婚?

冗談じゃない!

俺は今の暮らしが気に入っている

結婚すれば自分の時間が無くなるのは目に見えている

それに今婚活してる女なんて男の年収と勤め先にしか興味が無い奴らばかり

仮に結婚しても俺が病気で動けなくなったり破産しても助けてくれず

財産を取れるだけ取って逃げ出すに決まってる

(あくまで個人の感想です)

この姿になったからと言って今までと変わらない

いつも通り生活していくだけだ

変わったのは髭を剃る面倒が無くなったくらいか

「暑っ

 今日も蒸し風呂確定じゃねえか」

もう9月も後半だってのに夏と変わらない程の猛暑の中を俺は仕事に向かう

いつも通りの生活をするために

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