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 それは16歳の夏のある日でしたね。外に出るとまぶしい日差しがまるで私を焦がすかのようでしたよ。風鈴の音が妙に心地よかったような気がします。え?日付?さすがにいちいちそんな日付覚えてないですよ。逆にあなたは覚えているのですか?あ、そう。覚えているのね。記憶力の良いこと。うらやましいわ。そうね。あなたにとってこれは特別なことだったかもしれないけど、私にとっては生きる上で必要な行為ですものね。無理もないか。

やっぱりね、何であっても初めては不安なものですよ。ふふ。私にもそんな時期もあったのよ。このまま始めていいのかしら?事前に用意しておくものがあるかしら?って結構考えたものよ。あ、あと恥ずかしさもかなりあったね。なんせ多感な時期だからねぇ。学校の人にばれないか日々ドキドキしていたよ。懐かしいな。やっているときは夢中だったからね。あんまり覚えてないなぁ。必死だったよ。

 終わった後の話?終わってみれば、なんだ、こんなものか。そんなありきたりな感情だったよ。まさかね、こんなに欠かせないものになるとは当時思いもしなかったけどね。こんな感じでいいかな。相変わらず話すのは苦手なのよ。こんなのじゃ記事が書けないって?もうそのまま録音したものを文字に起こしちゃったらいいんじゃない?記者も大変だね。こんな人たち相手にインタビューしないといけないなんて。ではお疲れ様。


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