第6話 思イ込ム

「ぅうううぉおおぁぁあああぎぁあああぁあああ」


「何?この声。うるさいなあ」


「ああ、猫だよ、猫。この辺、野良猫が多くてさ。いっつも家の周りで喧嘩してんの」


「へー。あんまり見かけなかった気がするけどなあ」


「ぉおおおぁあああぁあぁあぎぃいいあああああ」


「……これ、ほんとに猫?なんか、違くない?」


「何言ってんだよ。猫だって。あいつら喧嘩する時、こんな感じの声出すじゃんか」


「ぎぃいぐぅううぅううぎぁあぁああぁああぁあ」


「でも、なんか違うような……」


「気にすんなって。その内どっか行くと思うから」


「ぁああぁいぅぎゃあぁあああぁあああぁあああ」


「……なあ、これってさ。なんか――」


「やめろっ!」


「な、なんだよ、急に」


「うちじゃあ猫ってことにしてるんだ!それ以上何も言うなっ!」


 肩で息をする友人を眺めながら、ふと、家の前の電柱に、轢き逃げ死亡事故の情報を求める看板が掲げられていたのを思いだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る