第220話 A級試験 前半

 やってまりました千葉県栄町!!!


 本日は駅から500メートルほどのところにあるミラマーレホテルに宿をとっております。緑が溢れ、自然豊かな景色はとても素晴らしいですね。

 《龍の町さかえ》と呼ばれているそうで、ドラムダンジョンと言われるドラゴンがいるような雰囲気には見えません。


 A級試験を受けるために参りましたが、とてもいい雰囲気の街並みです。


「やっときたやん」


 待ち合わせ場所に辿り着くと、すでに四人が揃っておりました。


「お待たせしました。皆さん準備万端ですね」

「そらそうや、ドラゴンやでドラゴン!」

「師匠とミズモチ師匠は、のんびりしていて緊張感がないですね」

「先生らしいね! 今回は私は楽しみで楽しみで仕方ないんだよ! 藤丸もドラゴン肉が楽しみって言っているしね」


《ワン!》


「ドラゴン肉? それはなんですか?」

「え〜先生、知らないの? ドラゴンと言えばドラゴン肉だよ。ドラゴンを倒したらドロップするんだよ! 尻尾を輪切りにしたような形で、焼くとジュウシーな肉汁と食欲をそそる匂いが半端ないんだって! 食べたらとんでもなく美味しいってネットに書いてあったんだよ!」


 サナさんの力説に、私以上にミズモチさんが食いついております。

 ジリジリと藤丸くんの横に行って、肉祭りだと叫んでいるサナさんに合わせてジャンプをしております。


「にっく、にっく、にっく!」


《ワン! ワン! ワン!》

《にっく〜にっく〜にっく〜》


 三人が盛り上がっている中で、私は静かにしている綾波さんを見ました。

 

「綾波さんも本日はよろしくお願いします」

「うん。講師、今日の私はあまり役に立てないかもしれない」

「どうしました?」

「ドラゴンは私が今まで戦った中で一番強靭な体を持っている。生命力も強いからいくら矢が刺さってもダメージは小さい。だから仕留められない」


 私はアーチャーのスキルを知りません。

 ただ、パーティーとはそれぞれに役目があるということは学びました。


「綾波さん、仕留めることは私やタツヒコ君に任せてください。パーティーにはそれぞれが役目があります。綾波さんはドラゴンの意識をそらし、全体を見て他の襲撃がないのか見るための目の役目をお願いします」

「全体を見るための目?」

「はい。アーチャーの方はパーティーでも一番全体が見えている存在だと思います。最前線で攻撃に集中してしまう私では見えていないことも綾波さんが知らせてくれれば助かります」

「わかった! 私がみんなの目になる」

「はい!よろしくお願いします」


 私の言葉を素直に聞いてくれる綾波さんは若いのに優しいですね。


「それではそろそろ出発しましょうか」

「ええよ。いよいよやね!」


 私たちは早速ドラムダンジョンに向かいました。


 広大な小山が全てドラムダンジョンと言われるドラゴンの住処になっています。

 一体一体が巨大なドラゴンはそれほど数が多くはありません。

 今回の採取部位はドラゴンの鱗と呼ばれる装備に使われる素材だそうです。


「皆さん、それではドラゴンといよいよ戦闘です! 気を引き締めていきましょう」


 私の言葉に皆さんの顔が引き締まりました。

 さすは専業で冒険者をされている方々です。

 普段との、切り替えがはっきりしておられます。


「ハルカさん、右に一体のドラゴンがいるようです。お願いできますか?」

「任せとき!」


 この間のダムとは違って、山はハッキリと魔物の位置が危機察知によって把握できます。そして、数による襲撃を警戒しなくて良いのはありがたいです。


 雰囲気としては、某恐竜映画の世界に入った気分です。


 山はそれほど高くないため、開発された場所や、荒野のように広がっている場所もあるのです。そして川も近くにあるので、様々なドラゴンが出てきそうです。


「みんな! 来たで!」


 ハルカさんはその素早さをいかしてドラゴンを連れてきてくれました。


「タツヒコ君、挑発でハルカさんからドラゴンの意識を外してください」

「はい!」

「ミズモチさん、タツヒコくんに意識を向けたら、ドラゴンに氷の槍をお願いします」


《は〜い!》


「サナさん、綾波さん、状況を見て攻撃をお願いします」

「「はい!」」


 私は全員に指示を出し終えて、ドラゴンを待ちます。


 現れたのは地を這う巨大なトカゲでした。


「ドラゴンというよりも地を這うトカゲですね」

「何言ってるの先生! あれがドラゴンだよ!」

「えっ! そうなんですか? もっとこう翼が生えて、口から火を吐くとか」


 私のイメージのドラゴンと違いました!


「そんなファンタジーのドラゴンがいるはずないよ!」

「講師、意外に少年?」

「うっ、はっ、恥ずかしいです」


 事前に魔物の画像を見てくればよかったです。


 突進してくる大きなトカゲさんに、ミズモチさんが氷の槍を突き刺し、タツヒコ君が剣を突き立てて決着がつきました。


「ドロップ品は出ませんんでしたね」

「う〜、ドラゴンの肉が出るまでやるよ〜!!」


 戦いが始まるとB級の魔物だと理解できます。


 五人で力を合わせればなんとか、倒すことはそれほど難しくないようです。

 

 

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