第71話 オークの廃道 終

私が前衛でかばうを使ってオークを引きつけます。

ハルカさんが後衛で投擲してオークを仕留めます。

ミズモチさんは遊撃隊として、ボアをツマミにオークを食しておられます。


三人の連携は、私が想像しなかったほど上手くいきました。

簡単にオークを倒せてしまいます。


ハルカさんがいることで、背中への不安がなくなりました。察知さんで気付いたオークを、近づく前に倒せてしまいます。ダンジョンを歩くのが、ここまで安心して進めるのは初めての経験ですね。


オークの廃道に来て、始めて中腹まで進行することができました。中腹には、今まで見たことがない巨大なオークを見つけました。


「オークナイトやね」


巨大なオークは中世の鎧を纏って、剣と盾を持っておられます。これまでも武器を持つ魔物たちは危険な者が多かったです。


いばらき童子さんは、武器を持っていなかったので倒すことができました。

ですが、ご近所ダンジョンに現われた金棒を持ったオーガさんには、いばらき童子さんよりも恐怖を感じていました。実際に強かったのです。


「大丈夫?ヒデオさん」

「ええ。私たちなら戦える気がしています」

「その意気や!ボアが五体に、配下のオークが10は居るな。まとめて来られたら厄介やから、少しずつ数を減らすで?」

「はい。私は接近戦しかできませんので、ミズモチさんの魔法と、ハルカさんの投擲に任せます。何かあれば私が守ります!」

「ホンマに…… そういうとこやでヒデオさん」

「えっ?」


何を言われたのかわからなくて、私が振り返る前にハルカさんが飛び出しました。


「消音」


ハルカさんのスキルで気配と音を消して、所定の位置へ移動していきます。


「ミズモチさん、合図があれば魔法をお願いします。私も魔法を放ちます」


【ミズモチ】《は〜い》


「合図です!」


ハルカさんが一匹目のオークに投擲したことで、合図として攻撃を開始します。


「行きます。ミズモチさん!ウォーターアロー!連射でお願いします!」


ミズモチさんが飛び出して、魔法を連射します。


「ライトアロー!」


私も額から光の矢を放って、ミズモチさんとは別のオークを狙います。

遠距離から攻撃していることに気付いたオークナイトが雄叫びを上げました。


「ブヒーーーー!!!!!!!」


オークナイトの雄叫びは、ただこちらへの威嚇という意味だけでなく仲間を呼ぶ叫びとして、オークたちが集まってきてしまいました。


「ハルカさん!」


私が名を呼ぶと、オークナイトの近くまで接近していたハルカさんが、オークナイトの振り回した剣によって姿を現しました。


「くっ!こいつ!」


接近して仕留めようとしたところに不意打ちを食らってしまったのです。


「ハルカさん!かばう!!!」


私は急いで接近しながら、ハルカさんへ向いた意識をこちらへ引き寄せました。


「ミズモチさん!」


ミズモチさんは、近くのボアを食して、私の元へ飛んできてくれました。


「杖へ!」


私はミズモチさんを杖へ変えて、黒杖と両手に一本ずつ持って二つのスキルを同時に放ちました。


「刺突!引っ掛け!」


黒杖でオークナイトを盾ごと突いて下がらせながら、ミズモチさん杖で、ハルカさんを引き寄せます。


「ヒデオさん!」


私はハルカさんを抱き寄せ、ミズモチさん杖を空へ投げました。


「ミズモチさん、ウォーターカッター!」


近距離から、ミズモチさんの魔法がオークナイトへ放たれ、私は周囲へ視線を向けます。

今、オークナイトを倒さなければ、近づいてくるオークたちとハサミ討ちにされてしまう。


「ハルカさん!一気にいきますよ!」

「うん。任せて!」


腕の中から飛び出したハルカさんは忍術を放つように、手を組み替えました。


「火遁!」


ハルカさんの口から火炎放射のような火が放たれました。これにはたまらずオークナイトが熱せられたカブトを脱ぎました。


「今です!ライトランス!」


私の頭頂部から光の槍がオークナイトの額へと突き刺さります。


「ミズモチさん!トドメをお願います」


仕留めきれなかったことを悟った私、はミズモチさんにオークナイトのトドメをお願いしました。


私は、迫るオークへ意識を向けます。


オークナイトに背中を向けることになりますが、私は相棒を信じます。


ミズモチさんなら、オークナイトだって倒してくれるはずです。


「ヒデオさん!」

「退路を確保しましょう!オークナイトは、ミズモチさんが倒してくれます」

「うん」


ハルカさんと退路の確保をするために、迫るオークを倒して行きます。私が前衛、ハルカさんが後衛で突き進めば、道は作ることができました。


「ミズモチさん!行きますよ!」


私は振り返ることなくミズモチさんを呼びます。


【ミズモチ】《は〜い》


念話が聞こえて、ミズモチさんは私の頭へと着地しました。


「おかえりなさい。ミズモチさん」


【ミズモチ】《ただいま~》


「なんや、二人は凄い信頼関係なんやね。妬けてまうわ」


集団オークから逃げ切った私たちは盛大に息を吐きました。


「ハァ~!!!なんとか逃げられましたね」

「うん。でも、ごめんな。私が思っていた以上にオークナイトが厄介やったわ。すいません」


ハルカさんは、Bランク冒険者としての実力を見せようとしていたのでしょう。実際に強かったと思います。

ですが、今回のオークナイトは予想外としか言いようがありません。


「また、助けられてもうたわ」

「助けたとはいわないでしょ。仲間なのですから」

「そっか、そやね。でも、ありがとう。あいつに不意打ちで攻撃されて、反撃ができんくなってもうて助けてに来てくれて」


そういってハルカさんが私をギュッと抱きしめました。


ハルカさんは無防備過ぎです!私一応男なので、綺麗な女性に触れられたら好きになってしまうじゃないですか!!!




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