第22話 史上最強の出会い❤️
俺にイヤースル(連打)を盗まれたミニ・イヤースル・ゾンビはその後もイヤースルを唱えようとしていたのだが、どうやら自分は唱えられないと気づくと、「ワーッ!」と叫び声を上げてどこかへ逃げていってしまった。
なんだかそれを見て俺はすごく悪いことをしたような気がしたのだが、すぐに盗賊はこんなことにいちいち反応していてはいけないのだと自分を
でも、その後、残りのミニ・イヤースル・ゾンビはみんなアレーシャ・シャーベ
それからは、野々宮みふゆの
黒のマッシュルームヘアの幼い子どものような見た目のそいつは俺に向かっていきなりこう言ったのだ。
「君がルーフェンス・マークスだね? 僕は闇の魔王ハイトレー様の第一の部下ワーゼイだよ。これから君の記憶を消去してどこか遠くに飛ばしてしまうわけだけど、最後に何か言い残しておきたいことはある?」
「なんだ貴様は?」
と、俺を
「ルーフェンス・マークス以外は別に殺していいと言われてるんだよ。次、勝手に喋ったら殺すからね。・・・・・・じゃあ、何も言い残すことはないようだから、記憶を消去させてもらうね。それからどこか遠くへ飛ばしてあげる。別に僕は君に全然興味もないし、期待もしてないから、殺したっていいんだけど、なんかハイトレー様がもう少し君のことを生かしておきたいんだって。なんで君みたいなつまらない人間にハイトレー様が興味をお持ちなのかは謎だけど、命令だから仕方ないよね」
直後、ワーゼイが手から出した恐ろしく邪悪そうな漆黒の巨大なかたまりのようなものの中に俺は吸い込まれていった(その前に俺はうーピリをほとんど無意識に投げ捨てていた)。
アレーシャ・シャーベ 曹長
ミーファ・ガタラ第1番 伍長
ユアール・プライツ第121番伍長
テス・ハミン上等兵
ジュナ・ヘッケルト一等兵
野々宮みふゆ 一等兵
そして、魔剣(?)のうーピリ
全員が俺に向かって何か叫んでいたが、どれも聞き取ることができなかった。
それから先のことはよく憶えていない(今まで話したことも随分後になって思い出したことだ)。
そして、次に目覚めた時には俺はツーツンツ王国で経験した記憶のすべてを失ってしまっていたのだ。
⚫
「ヒーラーかよォォオォッ!」
と俺は小高い山の上で思いっきり叫んでいた。
せっかく異世界に転生したんだから戦士だとか魔法使いだとかになってむちゃくちゃ
くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、くそっ、クソォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
叫びすぎて喉が枯れてしまってからようやく俺は我に返った。
そして何気に辺りを見渡すと、すぐ近くで女が
白髪ロングだったから婆さんかなとも思ったのだが、髪に妙にツヤがあるし、着てる服がエメラルド色のノースリーブワンピだったので若作りしたオバサンかなとも考えた。
さらに右手の人差し指(なんか高そうな赤い石が埋め込まれた金の指輪をしていた)で地面に文章を書いていたが、俺には全く理解できない異世界の文字だった。
たぶん、たすけて、とか、犯人の名前とか書いたのだろうが、それにしては長文なので、こっちの人の名前はこんなに長いのだろうかとかちょっと思ったりした。
なんかいろいろ謎だったし、見て見ぬふりをしようかとも考えた。
だが、俺は丁度ヒーラーの能力に目覚めた直後だったので、この女で自分の回復魔術の実力をいっちょ試してみるかくらいの軽いノリで、ついさっき初ステータスオープンした時に、1つだけすでに習得していた低級回復魔術を使ってみた。
「イヤースル!」
少々しゃがれた声でそう言っても、女はピクリとも動かなかった。
相当重症なんだろうか?
それとも、もしかしてもう・・・・・・。
そんなことを思いながらも俺はもう一度、
「イヤースル!」
と唱えた。
やはりピクリともしない。
「イヤースル!」
「イヤースル!」
「イヤースル!」
「イヤースル!」
「イヤースル!」
やはり少ししゃがれた声で5回連続でそう唱えると、俺の魔術力は0になったらしく、目の前が一時的に真っ赤になった。
その真っ赤な視界の中で、その女はなんとムクッと起き上がった。
そして、キョロキョロと辺りを見回して俺を発見すると、
「師匠ォォオオオオオオオオオッ!」
と、ついさっきの俺よりもすごい叫び声を上げながら抱きついてきた。
正直すごく怖かったので、その女が驚くほどの美少女じゃなかったら俺はその抱擁を拒否していたはずだ。
だが、結果美少女だったので俺はうっかり受け入れてしまったのだった。
しばらくして女は俺から名残惜しそうに離れるとこう言った。
「あなたがわたしを助けてくれたのですね!」
「ああ、まあ・・・・・・はい」
「じゃあ、よろしいのですね?」
「えっ? 何が?」
「何がって、地面に大きく書いておいたでしょう? わたしを助けてくれた方とわたしは結婚します! それから尊敬の気持ちを込めて一生師匠とお呼びしますねって!」
不思議なものでそう言われると、いつの間にやら地面に書かれた異世界文字のことを俺は日本語のように既知のものとして理解できるようになっていた。
「えっ? ・・・・・じゃあ、わざとそこに倒れてたってこと?」
「いえいえ、本当に死ぬ寸前の意識が遠のく瞬間に思いつきでそう書いたんです」
「思いつきで?」
「はい! ですから師匠っ! わたしと結婚してくださいね! わたしが師匠のことをパパよりも必ず強くして差し上げますから。たかだか魔王10体よりも少しだけ強いだけのパパですから心配しなくても大丈夫です! パパよりもほんの少しだけ強くなって早くマスタードラゴンの帝王のパパに二人の結婚を認めてもらおうね、師匠っ!」
マスタードラゴンって、あのマスタードラゴン?
あの異世界最強生物の?
この美少女がその娘?
嘘だぁぁぁあああああっ!
そもそも俺はヒーラーだ。
強さなどとは全く縁のないしがないただのヒーラーだ。
なあ、そうだろう? 誰かさん?
だがしかし、この日から俺はこのマスタードラゴンの帝王の娘であるらしい美少女と異世界最強を目指す無謀な旅を始めることになってしまったのである(でもなんかとても大切なことを忘れてる気がするのだが)。
※※※
第22話も最後までお読みいただきありがとうございます!
もし少しでもおもしろいと思っていただけたら、作品フォローや★評価をしてもらえるとすごくうれしいです!
【次回予告】
第23話 炎のブレスにご注意を!
マスタードラゴンの娘が本領発揮? 俺の記憶は戻るのか? の第23話っ!
どうぞ続けてお読みくださいませ
m(__)m
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