第26話 石ロボ!
ロボットだ。天井から木の根が無数に飛び出ている大広間に、石でできた巨大人型ロボットがオレの目の前にいた。
体高は5メートルを超え、頭が天井につきそうだ。その額には「EMETH」と刻印されている。
「石のロボットか」
「いや、どちらかと言うと岩石巨人って感じじゃない? もしくはゴーレムって言った方がファンタジーっぽいと思う」
「いや、あれはロボットだろ。中腰で膝が曲がっている感じとか。モノアイのところとか」
「リン! そんなディテールにこだわってる場合じゃなさそうよ!」
確かに。石ロボはそのモノアイでオレたちを視認すると、右腕を振りかぶり、パンチを繰り出してきた。
とっさに避けるオレとマヤ。さすがにマヤも石ロボのパンチをその大盾で受けようとはしなかった。
ズゴッ!
という凄い音を立てて石畳の床が衝撃でえぐれる。うん。あれを受けたら革の盾なんて一発で壊れるな。
石ロボは一発の威力は脅威だが、その分動きが緩慢だ。避けることには苦労しない。
オレとマヤは石ロボが第二擊に移る間に銅貨と拳で攻撃を仕掛ける。が、それは意味をなさなかった。
攻撃を避けられた訳じゃない。攻撃自体は石ロボに通り、その表面をえぐることに成功したが、なんとすぐに傷が塞がったのだ。
「再生!?」
マヤは驚きつつも二擊、三擊と攻撃を加えるが、やはりすぐに傷口が再生してしまう。
「このゴーレム、破壊不能に設定されてるんじゃないの?」
与えた攻撃がたちどころに回復されたら、そう愚痴りたくなるのも分かるが、もし破壊不能なら、傷が付くこと自体あり得ないだろう。
「いや、多分明確な弱点があって、そこ以外を攻撃しても意味ないんだ」
「弱点ってどこよ!?」
そんな怒鳴るようにオレに言われてもな。
「いや、関節とか?」
マヤばかりが石ロボに攻撃しているからだろう。石ロボもマヤばかりを攻撃している。
「腹立つゴーレムね!」
自慢の大盾を振るえず、そのストレスを拳に込めるマヤ。その拳が石ロボの膝関節を砕き、石ロボは自重を支えきれずにズドーンッとうつ伏せに倒れる。
「やった!?」
とマヤが声を上げるも、膝関節はただちに修復され、立ち上がる石ロボ。
そんな恨みがましそうにオレを見詰められても。
関節が弱点じゃないとなると、他にロボットの弱点ねぇ。動力部とか? いや、そもそも魔物なんだからモーターやエンジンで動いてる訳じゃないんだった。何だっけ? ゴーレム? ゴーレムの弱点って…………、
「あそこか!」
オレは手にした銅貨で、いまにもマヤに襲い掛かろうとしているゴーレムの額、そこに刻まれた最初の「E」の文字を撃ち抜く。
すると途端にゴーレムはその動きを止め、魔核と素体へと分解されたのだった。
「フゥー」
額を拭うオレにマヤが声を掛けてくる。
「何したの?」
「弱点を突いただけだよ」
「弱点?」
「物の本で見たんだよ、ゴーレムにはEMETH(真理)と書かれており、そこから最初のEを削ると、METH(死)になるんだとさ」
「へぇ〜」
どんな本でも読んでおくと、意外なところで役に立つものだな。それにしても、
「何で石のゴーレムの素体が、金、銀、銅貨なんだ?」
「多分、この
なるほど。どういう仕組みで集めているのかは知らないが、マヤの説は的を射ている気がした。
「とにかく、これでダンジョンコアは倒したな」
「は? 何言ってるのよ。ダンジョンコアはアッチでしょ?」
オレが硬貨とバスケットボール大の魔核をポーチに回収していると、マヤが大広間の奥を指差す。
そこには木の根によって何重にも護られた一抱え程はあるだろう真っ赤な魔核が輝いていた。う〜む、ロボットに気を取られて、あんなデカイものを見落としていたとは。
「あれ、オレのポーチに入るかな?」
「他の魔核や素体を出せば、何とか入りきるんじゃない?」
マヤが言う通り確かに入りきったけど、他の物を担いで持って帰るのが一苦労だった。
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