【完結】不夜城のヒーローたち -歌舞伎町トラブルバスターズ-

卯月 絢華

Introduction

 眠らない街、歌舞伎町。

 僕は、歌舞伎町の再開発に伴って新しく出来た映画館のポップコーン売りのアルバイトをしている。


 歌舞伎町というのは、東京の中でも治安の悪い街として知られていた。しかし、コロナ禍や再開発もあって最近では治安も落ち着いていると聞いている。けれども、それは表向きの話であって、裏向きではまだまだ邪悪な分子が蔓延はびこっている。その分子は、警視庁もさじを投げてしまうレベルである。半グレ集団や暴力団、そして違法在留外国人による犯罪……。まだまだ、この街は浄化されそうにない。


 ある日、きれいな女性がポップコーンを買いに来た。どこかで見覚えあるような女性だったのだけれど、僕はそれが思い出せなかった。

「いらっしゃいませ! 何にしましょうか?」

「コーラと、キャラメルポップコーン下さい!」

「ただいま用意しますので、少し待っていてください」

 ポップコーンを入れている間、その女性が誰だったのか考えていた。そして、コーラとポップコーンをトレイに入れた瞬間、僕の記憶はフラッシュバックした。

「アレ? 薫くん?」

「えーっと、君は……」

「何寝ぼけたこと言ってんのよ。アタシの名前は毛利碧もうりあおいよッ! そんなことも忘れちゃったの?」

「ああ、そうだったな」

「まさか、アンタが歌舞伎町に新しく出来た110シネマズのポップコーン売りのアルバイトやってるとは思わなかったよ」

「まあ、僕は映画が好きだからな。少しでも映画に関わる仕事がしたかった」

「ふーん」

「それで、碧は何を見に来たんだ」

「リバイバル上映でやっている『大怪獣ガゼラ2』よ」

「ああ、国会議事堂が滅茶苦茶めちゃくちゃになるやつか。昔金曜ロードショーで腐るほど見たよ」

「アタシもテレビで厭になるほど見ていたけど、矢っ張り怪獣映画は映画館で見ないと」

「君の意見は一理あるけど、もう入場が始まるぞ。さっさと行って来い」

「はいはーい」

 こうやって、僕のガールフレンドである毛利碧は入場ゲートへと向かっていった。


 ――僕の裏の顔なんて、碧に言えないよな。

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