番外編

 私はレイチェル、ペリグリンお兄さまは私よりも七歳年上で、私のお兄さまと同じ年。お母様は兄さまを産んだ時に、乳母としてプレストン子爵家に雇われる事になったの。


 お母様の実家は服飾を扱う大きな商家で、複数のブティックやオートクチュールを私のお父様が経営しているの。このお父様とペリグリン様のお母様が遠い親戚関係にあったので、お母様は乳母として働くことになったのよね。


 そんな訳で、生まれた時から実の兄のようにペリグリンお兄さまは私の面倒を見てくれたのです。そんなお兄さまは、私が物心ついた時から、たくさんの女性にモテていました。


 プレストン子爵家も商家を経営していたりするのですが、ライフル銃と爆薬のなんとかかんとかの開発で、お金儲けに成功したんですって。ペリグリンお兄さまはお顔立ちがやけに整った三男ですから、婿養子希望の御令嬢が列となったわけです!


 でもぉ、女性に興味のないお兄さまは十三歳の時に軍に入隊して十四歳の時には少年兵としてインディナへ出兵されたのです。その後、時々ブリタンニアに帰って来てはいたのですが、みんながみんな、噂していたんです。


ペリグリンお兄さまは、もしかしたら男の方が好きなんじゃないかって。


一時期は私のお兄さままで名前が上がるほどです!怪しい!怪しい!なんて言われていたんですけど、お兄さまはもう結婚しているので、それは違うかなあって。じゃあ、軍に恋人が居るのかしらって思い続けて数年が経ち、先ほど、ちびっ子将校を追いかけて海に飛び込んだお兄さまを見て、ピーンと来ちゃいましたぁ。


「お兄さま!めっちゃめちゃ気にしちゃっている感じじゃなあい!」


しかも、教会まで探しに来ちゃっているのよん!


「確実にラブじゃない!」


 でも、そこでハッと気が付いてしまったの。ちびっ子将校は確実に女性よ!私は着替えを見てたから知っているもの!お兄さまは男の人が好き、だからちびっ子将校が好き。だけど、ちびっ子将校は女の人よ!大丈夫なのかしら!


「あ・・でも・・お兄さまったら・・・」


 きちんとちびっ子将校が女の人だってわかった上で好きになったのかしらん?思わず視線が彷徨ってしまう、これって趣向の問題が関わってくるわん!男か女は重要な違いよ!


お兄さまの両腕を掴みながら、

「お兄さま!あの・・私・・・」

尋ねようと思ったわよ!だけど、


『お兄さま、ちびっ子は女の子よ、お兄さまは男の人の方が好きだと思ったのだけど、女の子でも大丈夫になったのかしら?』


なんて訊けないわ!不甲斐ない自分に涙がこぼれ落ちそう!


「ふえーーん、ピオーリョさーん!ちょっとお話し聞いて欲しいのですけどおーーー」

「面倒くさそうで嫌だ、絶対に嫌だ」

 漆黒の髪のイケメンはすげなく断ってきたわん!そんな貴方も大好き!


「でも!でもお!とっても重要な事なんですぅ!」

「嫌だ!嫌だ!」

 そんな嫌そうな顔も大好き!

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