かみよもきかず〜言霊師の怪異調伏活動及びそれに関する事柄の記録〜

鴻 黑挐(おおとり くろな)

前説

2040年、日本は科学立国としての地位を確立していた。

携帯端末は手首に収まり、公道は自動運転車両がほとんどを占め、AIが公務を補助し、個人の適性を測る遺伝子検査が広く普及した。


もはや神秘は科学という尺度を以て過去のものととされた。

街灯や照明が余す所なく暗闇を照らし、未開のジャングルにすらインターネットが張り巡らされている。


では、神秘は絶滅したのか?

そうではない。

神秘は今も我々のすぐそばに--この世界に薄皮のように被さっている領域に存在している。


ああ、安心してほしい。あなたがこの領域に触れる事は、きっと生涯無いだろう。


なぜなら、それは神秘に境を引く人々――言霊師《ことだまし》たちの生業《なりわい》だから。

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