第911話 見えている?


「古野白?」


「ここで出るのは賛成できないわ」


「……」


 その思いも勝利への算段も武上君らしいもの。

 でも今は、何を重視すべきか忘れちゃ駄目。

 それに何より、有馬君なら、この状況からでも何とかしそうな気がするから。


 ただ……。


「うぅ」


 その有馬君は、結界の外。

 異能を受けて、動きを止めたまま。

 吾妻が近づこうとしている。


「有馬!」

「兄さん!」

「功己!」


「……」


「大丈夫だ! 結界解除しても、オレたちと有馬がいりゃ、何とかなる!」


「古野白さん!」


「……」


 だから、解除は最良じゃないの。


「古野白ぉ!」


 武上君、そんな顔やめて。

 私は冷静でいなくちゃ駄目なの。


「古野白さん、わたし、自分の身は自分で守りますから」


「僕も再構築を急ぎます」


「……」


「いいから、全部オレに任せとけ!」


「……分かったわよ」


 みんなの熱に押され、つい声が出てしまった。

 はぁぁ……。


「よし!」


 けど、こうなったらもう止まってられない。

 やるしかない。


「武志、今すぐ消せるな?」


「はい」


「なら、頼む」


「……結界解除」


 その一声で結界が消失。

 と同時に武上君が走り出す。


「武志君、できるだけ下がって結界再構築の準備をお願い」


「了解です」


 備えは、こうするしかない。

 あとは、えっ!?


「姉さん?」


 幸奈さんが駆け出そうとしている。


「待って!」


 いえ、もう駆け出してる。


「幸奈さん!」


 すぐにあとを追い彼女の腕を押さえたけど、止まらない。


「私と武上君で何とかするから」


「……」


「後ろで待ってて」


「……」


「幸奈さんは、もしもの時よ。その時は頼むから、ねっ?」


「古野白さん……」


 ようやく力を抜いてくれた。


「頼りにしてるわよ」


「……はい」


 これでいい。

 さあ、ここからは私も……って、吾妻が有馬君に!?


「武上君!」


「おう!」


 有馬君を挟んで前後に武上君と吾妻。

 ただ、吾妻の方が早い。

 一撃もらってしまう!


 バシッ!


「なっ!?」


「えっ!?」


「はぁ!!」


「……」


 嘘でしょ!


 有馬君が手のひらで吾妻の右拳を受けている?


「おまえ、それ?」


 続く吾妻の左拳も……簡単に避けてしまった。

 まるで目が見えているように、軽快に?


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