乙女ゲーム『恋の魔法を教えます』開幕!
第27話 入学式迫る!ゲームスタート3秒前!
『ガルム王子と婚約して2年経過しましたか……カレリンも15歳。いよいよ舞台に役者が揃いゲームの開幕ですね』
出たなポンコツ駄女神!
『いい加減、名前を覚えてくれませんか』
名前?……う~ん、なんだったかしら?
『全知全能の女神ルナテラスです!』
えッ? 全痴煩悩の女神?
それは恥ずい女神様ね。
『この娘は(怒)』
そんなことより今日から私も魔法学園の生徒よ!
『可愛い制服ですね』
でしょ! でしょ!
世界が中世なのに、こういうところが現代日本ぽいのは、やっぱり乙女ゲームだからよね。
ウフフフフ――
ねっ! ねっ!
可愛いでしょ!
似合う?
ねぇ似合う?
『ええ、よくお似合いですよ。15歳とは思えぬほど大人びて、制服を着るとまるで
何よそれ!?
イヤミ?
今、ボソッと何か言ったわよね!
聞こえてるわよ! ケバいって言いたいの!?
『いえいえ。スタイルもボンッキュッボンッ!で羨ましいと言ったのですよ』
くッ!
この
『こらッ! 女の子がむやみに胸を持ち上げない!』
あんなに鍛えたのに〜!
『ガチムチにはなれなかったのですね』
むしろ下手に筋肉がついて体が引き締まって腰は細くなるし……
『コルセット要らずの見事な美しいプロポーションでいいじゃないですか』
胸筋のせいか、胸も張りが出てさらに大きくなるしで……
『ゲームのカレリンも大概のスリーサイズでしたが、それ以上のスタイルの良さです』
上から96、50、80――因みに身長は165cmよ。
『何ですかその15歳にあるまじき数字は!?』
あんただって似たようなもんじゃない!
『私ですか? 上から99、49、88ですよ』
何それ!?
数字がおかしい!
『私は美の女神だからいいのです。だけど貴女は人間で、しかもまだ成長期でしょう』
そうなの……
お尻がまだ大きくなりそうなのよ。
『……』
それにこの巨大な胸のせいで、重心はズレるし、脇を絞めるのに邪魔だし…ホント格闘戦に向かないのよね。
『揺れて動くのが大変そうですものね』
まあ、令嬢流魔闘衣術でなんとかなるんだけど、関節技キメる時なんて巨乳がつっかえちゃうのはどうにもならなくて。
去年、仕事でハーンメリ賢帝国へ行った時もカマちゃんに関節技キメるのちょっと大変だったし。
『ハーンメリ賢帝国はこの国から大国2つ挟んだ先の帝国ですよね? 国を跨いでの仕事とはさすが冒険者最強のオリハルコン級ですね』
まあね。
『それでカマちゃんとは誰ですか?』
カマちゃん?
ハーンメリ賢帝国で仲良くなったおじいさんよ。
えーと……確か本名はカマーン・ハーンメリだったかしら?
『それハーンメリ賢帝国の皇帝の名前じゃないですか!?』
んー確かそんな肩書きだったかしら?
『皇帝相手に何してくれてるんですかっ! あそこはこの大陸で1、2を争う超大国ですよ。いくら遠い国でも国際問題になったらどうするんですか!』
えーッ!
だってぇ、私はただ依頼を受けて、あの国に寄っただけなのよ。
それなのにカマちゃんったら……
この私にこんなにもプレッシャーをかけた――貴様は危険過ぎる!
貴様は確かに優れたオリハルコン級冒険者らしいが、無礼を許すわけにはいかない!――って。
『貴女はいったい何をしたんですか!』
だから依頼に行っただけだって。
ハーンメリ賢帝国から隣国へ魔獣が流れてきて国を荒らすから、サクッと狩っただけよ?
『ホントにそれだけですか?』
何よその疑いの目は!
それだけよ!
……ただその魔獣が希少部位のために乱獲されてて、ハーンメリ賢帝国で保護魔獣指定受けているのを無断で狩り狩りしたけど。
『貴女という人は!』
だってしょうがないじゃない?
人的被害が出そうで緊急事態だったのよ!
『それはそうかもしれませんが……』
だから後から謝罪に行ったのよ。
それなのにカマちゃんたら――
土足で人の国に入るな! 俗物!
恥を知れ! 俗物!
黙れ! 俗物!
――って、私の話聞かずに、俗物、俗物とうるさいんだもん。
『だからって関節技を掛けますかフツー』
話が通じないから肉体言語でじっくり語り合っただけよ。
最初は反抗的だったカマちゃんも、すぐに大人しくなったわ――口から泡を吹いてたけど。
『それは気絶しただけでしょう!』
その後は誤解も解けてカマちゃんとも和解したのよ。
彼もきちんと話を聞かなかったのは悪かったと反省してくれたわ。
だから今ではとっても素直に私の言うことを聞いてくれるの。
私が言うことには全て――サーイエッサー!よ。
『一国の皇帝を
なによ! 人聞きの悪い!
今では彼とはマブダチよ。
マ・ブ・ダ・チ!
どぅーゆーあんだーすたんど?
お互いあだ名を呼び合う仲なんだから!
カマちゃん、カレリン・アレクサンドール様って!
『いやいや、皇帝をあだ名で呼んで、皇帝からはフルネームの様づけって! 立場が完全に逆転してますよ!』
カマちゃんは気さくでとってもいい人だから大丈夫よ。
今でも友好を深めているわ。
ハーンメリ賢帝国で稲作してるのを知って、私も食べたーいって手紙を送ったら、直ぐに届けに来てくれたわ。
『皇帝自らですか!? 皇帝をパシリにする侯爵令嬢って……』
パシリとか失礼ね。
私はお願いしただけよ。
『いじめっ子はみんなそう言うんです』
なによ!
私だってちゃんとカマちゃんのお願いを聞くこともあるわよ。
『どうせ冒険者としての依頼を受けて、しっかり報酬をもらっているのでしょう?』
まあ……そうだけど。
『完全にみかじめ料もらってる893ですね』
でもぉ、無報酬での依頼の授受は冒険者の存在意義を失いかねないでしょ?
『確かに価格競争で依頼料のデフレが起きては目も当てられませんね』
今じゃ私もオリハルコン級最強の呼び名も高くて色んな国から依頼がきてるから、カマちゃんだけ特別にはできないわ。
『国を跨ぐほど有名になったのですね』
ええ、お陰で大忙しよ。
まあだけど、それも今日からしばらくお休みね。
『魔法学園に入学ですからね。乙女ゲームも開幕ですし』
冒険者家業は自粛して、魔法学園の生徒として学業に専念よ!
乙女ゲームの方は……まあ、予定通り物理で全部ぶっ潰すわ。
前世じゃ女子高生を途中で強制終了させられたからちょっと楽しみ。
『それで……何で侯爵令嬢の貴女が徒歩なのですか?』
走った方が速いからよ!
『貴族の矜持の問題でしょう! 馬車での移動は権威の象徴ではないのですか?』
権威なんて何の役にも立たないわ。私には絶対の暴威があるんだから!
『まあ、その暴力で皇帝をパシらせるのですから説得力はあるのですが……
その発想は貴女の好きな『霊長類最強』よりも貴女の嫌いな『地上最強の生物』寄りですよ』
うるさいわね! だいたい馬車なんて街中を数キロ移動するのに数十分もかかるのよ。走ったら秒で移動できるのに。秒よ! 秒!
『秒!? おかしい! 貴女の身体能力はどうなっているんですか!?』
それに追いつけるあんたに言われたくない!
『私は女神だからいいのです』
なら私も悪役令嬢だからいいのよ!
『その論理はおかしいです!』
うっさいわねぇ。
仕事で国家間を移動する時も走ってたんだから無問題よ。
3日3晩走ればカマちゃんの国にだって着けるわ。
『馬車で2〜3ヶ月かかる距離ですよ!?もはや人間やめてますね』
さて、到着!
『ホントに秒で着いた……』
これくらいできなきゃ国を跨いで仕事できないわよ。
『確か魔法による移動手段があったはずですが』
私は魔法使えないし、走った方がやっぱり速いしね。
『フェンリルはどうしたのです?使役している魔獣で移動される者もいるのでしょう?』
フェンリルは使役してるわけじゃないし、面倒臭がって私の仕事には絶対ついてこないわ。
『あの駄犬が!』
それにもうすっかりグータラ癖がついちゃって、毎日お母様の膝の上でぬくぬくと食っちゃ寝のあの子は、完全に運動不足で私の方が圧倒的に速いのよ。
『あの
あの子も「ここは
だけど、お母様をフェンリルに占領されて嫉妬していたお父様から追い出されてしまって……
『失楽園ですか。暴食と怠惰、色欲と大罪を3つも犯した堕落のつけですね。エロ犬には良い薬です』
まあ、楽園追放でもあの子ウキウキしちゃってるけど。
どこで聞きつけたのか、魔法学園に若くて可愛くてスタイルのいい貴族令嬢が大勢いるって小躍りしてるの。
これで新しい女の子をゲッチュだぜ!って……
『どこまで俗な魔獣なんですか』
だから今朝リード咥えて玄関でお座りしているフェンリルに学園へ連れて行けない事実を告げたら、あの子ギャン泣きして大変だったわ。
『……もうあの駄犬、さっさと駆除しませんか?』
今さら討伐できないわよ。
もう無害だし……
『完璧な女の敵でしょう!完全に害獣認定でしょう!』
王都の使用人たちとも仲良くやっているわ。
と、ダベッてるうちに着いたわね。
『ホントにあっという間ですね(もう人間やめてませんかこの娘?)』
とっても煌びやかな校舎ね。
生徒たちもなんかキラキラしてるし。
なんだか空気も何か甘いような爽やかなような……
ここだけ世界が違うみたい。
『まあ、乙女ゲームの舞台ですから』
乙女ゲームかぁ……
『ここでヒロインと攻略対象が待っていますよ』
大丈夫よ。
どいつもこいつも私が物理でぶったおーす!
『頑張ってください。貴女の将来にも関わるのですから』
まっかせなさーい!
『それでは『恋の魔法を教えます』ゲームスタートです!』
【カレリン・アレクサンドール(制服姿)】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます