料理教室!①

「やぁモリアン、晩御飯か?」

 王宮の厨房に現れたモリアンにルノアーが話しかける。


「いえ!今日は大丈夫です!」

「そうか、で?何の用事だ?」

「お米貰いに来ました!」

「米?炊いたやつか?」

「はい!」

「そこに炊きたてがある、持って行って良いぞ。」

「は~い♪」

 モリアンは魔道具のアイテムボックスに炊きたてのご飯を入れる。


「チハルさんが作るのか?」

「いえ!今日はフミエ様、ハル様、チハルさんが料理教室するそうです!」

「何!?」

「あ・・・えっと、聞かなかったことにしてくださぁぁぁい!!!」

 モリアンはそう言うと駆け足で厨房を出て行った。



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「チー、春恵、どうした?」

「おじぃちゃんきたー!」

「お父さん何してるの?」

「ん、庭に干していた大根を取りに来た。」

 源治は手に持った干し大根を掲げながら言う。


「で?何しに来たんだ?」

「おばぁちゃん居る?」

「いるぞ。」

「あっちで料理教えてもらおうと思ってね♪」

「チーは今更教えてもらう物ないだろう?」

「先生に教えて欲しいの。」

「先生?」

「そ、南せんせー。」

「あぁ、今度結婚する嬢ちゃんか。」

 フムフムと納得した源治は玄関を開けると皆を促す。


「ルプ、正月に言ってた酒手に入れたぞ(ボソッ)」

「おぉ、爺さんもあっち行くか?(ボソッ)」

「そりゃ行くだろ、エイダンさんにも飲ませたいからな(ボソッ)」

 2人はニヤニヤと笑みを浮かべながらコソコソと話をする。


「お父さんあんまり呑み過ぎないでよ。」

「お、おう、聞こえたのか。」

「聞こえるわよ、これでも女神なのよ?」

「あ~、そう言えばそうだったな。」

「おばぁちゃーん!」

 千春は廊下を歩いていると文恵を見つけ走り出す。


「チーちゃん!?どうしたの!」

「おばぁちゃん今日あっちでご飯つくってー!」

「いいよ?」

「やった!」

「何が食べたいんだい?」

「えっとね、南せんせーに料理教えて欲しいんだけど。」

「料理かい?何を教えるんだい?」

「色々?」

「ん~、色々かい、何を教えようかねぇ。」

「南せんせーが作りたいの教えたら?」

「そうだね、何か持って行く物はあるかしら。」

 文恵は千春を連れ台所へ向かう。


「あっちは今夏だったかね?」

「そだよー。」

「食材は?」

「色々あるよん♪」

「それ見て考えようか。」

「うん!」

「それじゃ、南先生もこっちで作れるようにこっちの食材も一応もっていくかね、春恵これ持って行けるかい?」

「はーい、これ全部?」

 文恵はキャベツやゴボウ、小松菜やサツマイモ等が入った箱を見る。


「近所からのおすそ分けだよ。」

「田舎あるあるね~。」

 春恵はそう言うとアイテムボックスに食材を入れる。


「春恵!コレも持って行ってくれ!」

 源治はルプと一緒に肉の塊を手に声を掛ける。


「これ?」

「あぁ、鹿だ。」

「はいはい。」

 同じくアイテムボックスに入れると源治はそっと箱を出す。


「コレも頼む。」

「もう、こんなにいっぱい?」

「呑むのは俺だけじゃないぞ?」

「わかってるわよ。」

 酒の入った箱をアイテムボックスに入れる春恵、文恵は調理道具を布で包むと春恵に声を掛ける。


「さ、準備できたよ。」

「はーい、それじゃあっち行きましょ♪」

 春恵が言うと皆は家を出る、そして庭に作られた鳥居の前に行くと鳥居ゲートを通り千春の家に戻った。



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「ただいまぁ!」

「お帰りなさいチハル。」

「ご飯貰えた?」

「はい、モリーが魔道具に入れてますよ。」

「さんきゅー♪」

 千春はご飯の確認をするとそのまま厨房へ移動する。


「おかぁさん食材おねがーい。」

 春恵はアイテムボックスに入れた食材をテーブルに次々と並べて行く。


「何が作れるかな。」

「何でも作れそうね、千春が持ってる食材は?」

「野菜と肉は一通りあるよ。」

「それじゃ南先生が来るまで待ちましょうか。」

「ほーい。」

 返事をする千春、すると扉のノックが鳴る、サリナが扉を開けもう一度閉める。


「チハル様、ルノアーさんが来られていますが。」

「んにゃ?なんだろ。」

 トコトコと扉の前に行くと千春は扉を開ける。


「はーい?」

「チハルさん!フミエ様が料理を教えるとお聞きしたのですが!?」

「え“?誰に聞いたの?」

「・・・モリアンです。」

「・・・。」

 千春は遠くを見ているモリアンを見つめる。


「もり~ちゃ~ん?」

「はいぃ!」

「・・・まぁ言っちゃダメって言って無いから良いけど、で?ルノアーさんも教えて欲しい感じ?」

「はい!」

「で?後ろの方々は?」

 千春の後ろに居る2人の男性を見る。


「こっちは魔導士団厨房のイヤディスとローダイだ。」

「よろしくお願いします!チハル王女殿下!」

「よろしくお願い致します!」

 ガタイの良い男2人が頭を下げる。


「おばぁちゃーん!厨房の人も教えて欲しいってー!」

 千春は大きな声で文恵を呼ぶ。


「はいはいはい、あらら、丁度良かった、肉を切り分けてもらおうかね。」

 文恵は当たり前の様に男3人に声を掛けると、ルノアーたちは目を合わせ頷き文恵の指示通り動き始めた。



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「あれ?ルノアーさんは?」

 シャリーは王宮厨房に入ると料理人に声を掛ける。


「チハル王女殿下の御婆様、フミエ様に料理を教えて頂きに向かいました。」

「え!?ズルい!」

 シャリーは大声で叫ぶ。


「私も教えて欲しいのに!」

 シャリーはそう言うと厨房から駆け出す。


「シャリーどうしたの?」

「チハルさんの所に行くんです!」

 厨房から飛び出るとルクレツィアとぶつかりそうになる。


「そんなに急いで?」

「フミエ様が来られてるらしいんです!」

「え!?フミエ御婆様が!?」

「はい!」

「私も行くわ!」

 そう言うと2人は千春の部屋へ駆け出した。



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「マルグリット王妃殿下。」

「何かしら?」

 マルグリットはユラと一緒に寛いでいた。


「只今フミエ様が来られました。」

「あら、チハルが呼んだのかしら。」

「はい、料理教室を行うと言う事で。」

「そうなの?」

「おばーちゃんに会いたい!」

「私も挨拶しておきたいわね。」

「おかあさまだいじょうぶ?」

 お腹を抱え立ち上がるマルグリット。


「大丈夫よ~♪女神様の加護が付いているんですもの♪」

 ユラはマルグリットの手を取り一緒に歩く。


「おばーちゃんのごはんたべれる?」

「料理教室って言うくらいですもの、美味しいご飯作ると思うわよ?」

「やったぁ!」

 ユラは嬉し気にマルグリットを見ると満面の笑みで答える、そして2人はのんびりと千春の部屋へ向かった。






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