聖女隊回復するよ!

「エーデルさん!おまたせー!」

 美桜は教会の前で指示をしているエーデルに声を掛ける。


「ミオさん、お手数おかけします。」

「そんな固く言わないで下さい♪」

 エーデルは申し訳なさそうに言うと千春達も声を掛ける。


「エーデルさんお疲れ様でーす、この教会に怪我人が居るんですか?」

「はい、大きな怪我の者は別の部屋に入っております。」

「大きな怪我・・・。」

「御心配なさらず、命に関わる者は今の所見つかっておりませんので。」

「そっか、それは良かったです。」

 皆がエーデルの話を聞いていると教会からルクレツィアが現れる。


「チハルちゃん!」

「ルクレツィアさんお疲れ様でーす。」

「ルプ様!」

「頑張ってるな。」

「はいっ!」

 ルプの姿を見つけたルクレツィアは嬉しそうに答える。


「ではご案内させて頂きます。」

 エーデルはルクレツィアを見ると、ルクレツィアは扉を開け皆を中へ促す、広い教会の奥に進むと幾つかの部屋に分かれていた、そして千春達は1つの部屋に案内された。


「ココが一番酷い扱いをされていた者達です。」

「ルクレツィアさん、ユラ達お願いします。」

「分かったわ、ユラちゃん、レンちゃん、イーナちゃんこっちに来なさい。」

 ユラ達は別の部屋に連れていかれ千春達はエーデルの言う部屋へ足を踏み入れた。


「・・・うん。」

「・・・酷いね。」

「・・・手分けしようか。」

「そだね。」

「私はこっちから回復していくよ。」

「了解、うちはコッチから。」

「リョ。」

「みんな、魔力ブースト掛けてもらってるけど一度回復したら泉の水ね。」

「「「「「「「はーい。」」」」」」」

 皆は答えると分かれて怪我人へ回復していく。


「こんにちわ。」

「貴女は?」

「ジブラロールから来たヒーラーですよ♪」

 千春は犬獣人女性に声を掛ける、右腕にはあちこちに痣が有り、体を見て行くと足の先が無くなっていた。


「・・・回復します!」

 千春は気合を入れる、そして魔力を溜める。


「ヒール!」

 腕の痣が薄くなり綺麗に治ると足に手を当て、もう一度魔法を掛ける。


「ヒール!」

 足の先が盛り上がる様に元に戻ると犬獣人女性は目を見開く。


「すごい。」

「他に痛い所ありますか?」

「・・・尾が。」

 女性は横を向くと尻尾が途中から無くなっていた。


「酷い!」

 ルプの尻尾もモフモフしながら喜ぶ千春は怒りをあらわにする。


「ヒール!」

 もこもこと毛を生やしながら尾が伸びていくと女性はまた驚きながら自分の尻尾を触る。


「有難うございます!」

 目に涙を溜めながらお礼を言う犬獣人女性。


「ごめんね、人間がこんな事・・・許せないよね。」

 千春は女性を見つめながら謝罪すると、女性は微笑みながら首を振る。


「あの人間を許す事は無いかもしれません・・・でも・・・人は憎みません。」

「・・・え?」

「ここに居る獣人や妖精族は皆そう思っていますよ。」

 女性はそう言うと千春の手を取る。


「エーデル様、ルクレツィア様からお願いされました。」

「・・・。」

 微笑みながら話す女性を千春は見つめる。


「私達獣人が人を恨み、憎しみを持てば、私達を救った聖女様達が悲しむと。」

「・・・。」

 千春が話を聞いていると頼子達も千春の方を見る。


「それに、他国の事なのに必死に、本当に必死に私達を救ってくれた騎士団の方々に申し訳ありませんもの。」

 微笑みながらもほろりと涙がこぼれる犬獣人女性、頼子が回復をしようと話をしていた耳の長い獣人男性も頷きながら話す。


「俺達は聖女様達を裏切る事は無い、そして悲しませる事はしないと皆で約束した。」

「あぁ、俺達は身を助けられただけではないからな、心を、獣人の心も助けられた。」

「これから迫害されず、国民として生きて行く事を約束されたんだ、そんな事をしてくれた聖女様やジブラロールの人間を裏切れるわけがない。」

 周りにいる腕が無い男性獣人、胸から腹にかけて抉れた傷のある男も頷く。


「それにそんな傷を治すヒーラーを連れて来てくれる騎士団を信用しないわけがないよな。」

 皆は足の先と尻尾が元通りになった犬獣人女性を見ながら微笑む。


「さ!千春!バンバン回復するよ!」

「うん!」

 頼子は千春に声を掛けると耳の長い獣人男性に向き直る、そして魔法を掛ける。


「ヒール!」

 痣どころか深い傷が上半身に沢山ある男性に回復を掛けると、みるみる傷が盛り上がり傷跡が消えていく。


「凄いな・・・古傷まで治るのか。」

「まぁね!他に痛い所とかあります?」

「いや、俺は大丈夫だ、次のヤツをお願いしていいか?」

「まっかせなさい!」

「ヨリ!水飲んでね!」

「おっとぉ!りょーかーい!」

 気を取り直したJK軍団は次々と回復してはグビグビと世界樹の泉水を飲み干しながら回復を続けた。



---------------------



「ルクおねーちゃん。」

「なに?ユラちゃん。」

「ユラもかいふくする!」

「私も!」

「イーナもやるのです!」

「大丈夫?出来るの?」

 ルクレツィアがユラ達を見ると、後ろからアルデアが話しかける。


「チハル達が魔法を教えてるわ、私が付いているから部屋に案内してもらえるかしら。」

「アルデアさんが付いているなら大丈夫かしらね、それじゃこっちの部屋に来てもらえる?」

 ルクレツィアは比較的傷の少ない者が集まる部屋に案内すると扉を開ける。


「聖女様だ。」

「聖女様達が御出で下さったぞ。」

「聖女様・・・かわいい。」

「聖女様、あぁ聖女様だ・・・。」

 ユラ達を見た獣人達が呟く。


「ほら、あなた達落ち着きなさい、聖女ユラ様、イーレン様、イーナ様が傷を回復するわよ。」

 ルクレツィアは獣人達に言うと、獣人達は大人しく座る。


「えっと、ケガはどんなかんじなの?」

「この部屋の者は大きな痣や傷があるだけよ。」

「おねーちゃんの入ったへやは?」

「・・・欠損、腕や足が無かったり、骨や筋肉が折れたり切れたりして動かない者よ。」

「・・・レンちゃん、アレできるかなぁ。」

「ミオお姉さまが言ってたアレ?」

「アル、アレできるのです?」

「多分出来ると思うわよ、あなた達も魔力の底上げしてるもの。」

「やってみよー!」

「うん!やってみよ!」

「やるのですー!」

 3人は部屋の中央にテクテクと歩き手を繋ぐ。


「この部屋に魔力が広がるように、あとは教えた回復魔法を解放するのよ。」

 アルデアは3人に教えながら周りを見渡す、ルクレツィアが言ったようにこの部屋に居る者は顔や体に痣や傷があるが身体は健康そうだ。


「せーのでいい?」

「いいよ!」

「いいのです!」

 手を繋ぐ3人は魔力を溜める。


「せーのっ。」

「「「えりあひーる!」」」

 魔力が放出され部屋がうっすらと光り、その後獣人達に吸い込まれる様に魔力が消える。


「傷が消えた。」

「お前、顔の痣が消えたぞ!」

「お前も消えてる。」

「私の傷も消えたわ!」

「聖女様凄いです!」

「聖女様!」

「聖女様!」「聖女様!」「聖女様!」「聖女様!」

 聖女様コールが始まると、扉の外が騒めき始める。


「どうしたんだ?」

 1人の獣人が声を掛けて来るとルクレツィアが答える。


「聖女様が回復してくれたのよ、あなた達の部屋にも行くからおとなしく待ってなさい。」

「はい!」

 男は答えると直ぐに戻る。


「はい、ユラ、レン、イーナ、これを飲みなさい。」

 アルデアはアイテムボックスから泉の水を取り出し3人に飲ませる。


「上手だったわよ、さ、次に行きましょうか。」

 ニコッと微笑むアルデア、幼女達は嬉しそうに頷くと、部屋の獣人達に手を振り部屋を出て行った、部屋の獣人達は両手を握り神に祈るように幼女聖女を見送った。







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