作戦前夜祭!

「あらあらあら、凄い事になってるわねぇ。」

「お母様いらっしゃいませ!」

 マルグリットは千春の部屋を見回し笑みを浮かべる。


「チハル明日行くって本当?」

「はい、皆行くらしいんで。」

 千春は庭で騒いでいる上位精霊とドラゴンを見る。


「チハルおねえちゃん!」

「いらっしゃいユラ、料理あるよー♪」

 ユラはテコテコと歩くとモートの横にちょこんと座る。


「仲良いなぁ。」

「モート様に懐いちゃってるのよね。」

「安心安全ですからね。」

「それで?王女の救出?」

「って言うか・・・手出すなよって脅す感じですかねぇ。」

「まぁそうなるわよね。」

「問題は穏便に済むかなぁ~・・・って。」

「済むと思うの?」

「いえ、これっぽっちも思ってません。」

 空笑いで答える千春。


「クアータス王はどうするつもり?」

「私的には何かされた訳ではないんですけどぉ~・・・今後の事を考えると何かしらの罰が必要ですよね。」

「えぇ、国法で行けば極刑よ。」

「マジですか?」

「それはそうよ、メラディオとクアータスは同盟国のはずよ?」

 マルグリットはそう言うと近衛兵団団長のマトラを見る。


「・・・はい、同盟国で御座います、王妃殿下。」

「国との約束を反故している時点でそう言う事になるわ、でもメラディオ国王が失墜、貴族も反乱、近隣国もクアータスに付けば裁く者は居ないわ。」

「酷い話ですねぇ~。」

「チハルが一言いえばクアータス国王は即断罪、近隣諸国はメラディオと同盟を再度組むでしょうね。」

「えー?こんな小娘の一声で?」

「それがこの世界の聖女の力なの、実際にチハルが言えば即冥界行きでしょう?」

 マルグリットは千春を見た後モートを見る。


「あ~・・・そっかぁ・・・。」

「チハルにその決断をさせるのは酷よね。」

「・・・。」

 マルグリットは千春の頭を撫で微笑む。


「次期王妃であり聖女である前にチハルは私の娘なのよ、チハルの責は私が受け持つわよ。」

「千春、お母さんもよ。」

「おかぁさん・・・お母様。」

『チハル、この世界の管理者である私が見極めてあげるわ、チハルは心配しなくて良いわよ。』

「アイトネ。」

「罪の重さは俺が計ってやろう。」

「モートさん。」

「俺の牙は千春の牙だ、千春を泣かすヤツぁ俺が噛み砕いてやる、安心しろ。」

「チハルの敵は儂の敵じゃ、儂がすべて焼き払ってやる。」

「ルプ達が言うとシャレになんないんだけどぉ。」

 千春は苦笑いしながら、しかし嬉しそうに突っ込む。


「モートさまー、つかまったおひめさまよべないの?」

 ユラはモートの横で問いかける、モートは何も無い所を見つめると呟く。


「あぁこの娘か、相当弱ってるな。」

「ごはん食べたらげんきになる?」

「チハルの料理を食べたら元気になるだろうな、呼ぶか?ユラ。」

「うん!」

 モートはユラの返事に頷くと指を鳴らす。


「・・・え?」

「フルール王女殿下?!」

 キョトンとするフルール王女、マトラは大声で呼び横に駆け寄る。


「王女殿下!」

「・・・マトラ!?ココは!?」

「ジブラロール王国、聖女チハル王女殿下の部屋で御座います!!!!」

 涙を流すマトラ、キョトンとしたままキョロキョロと周りを見回すフルール。


「いらっしゃい!フルールちゃんここ座ってね♪」

 千春はさも当たり前の様に椅子に座らせるとサフィーナがお茶を淹れる。


「あの・・・何が起きたのでしょうか・・・。」

「えっとー、ユラがモートさんにお願いして呼んでもらいました、ね、ユラ♪」

「うん!」

 ユラは嬉しそうに返事を返す、そしてマトラは膝を突きユラ、モート、チハルにお礼を言うとフルールに説明を始めた。



------------------



「おぉ~混乱してらっしゃる。」

 頼子は説明をしているマトラと百面相かと思うほど表情の変わるフルールを見ながら呟く。


「さっき言ってたお姫様救出作戦ののお姫様よね?」

 陽菜はお茶を飲みながらフルールを見ている。


「そ、でも助けちゃったね。」

「秒でな。」

「神様だもんなーモート様。」

「っていうかこの部屋に3柱も神様居るんだもん、チートだよチート。」

「ミオ、よく見てみ、ロイロちゃんも龍神って言われてたし、ルプ君もビェリー君も土地神、コンちゃんとサンジュ君も御使いだし神みたいなもんじゃん?」

「ミタマは妖怪?」

「吾輩はそっち寄りにゃぁ。」

「でも祀られる事あるんだよね?」

「招き猫でしょ。」

「そう言われる事もあるにゃ、イロハもそうにゃ。」

「イロハは付喪神よ♪」

「神だらけ!」

「それ言うなら聖女もなー。」

「1、2、3、4、あとリーチ掛かってるのが1人と予備軍が4人だね。」

「予備軍言うなし!」

「リーチ言うなし!」

 他人事の様に話すJK軍団。


「ねーちゃんどうしたの?」

 うーんと唸る陽菜に日葵が問いかける。


「いや、こう、ね?あるじゃん?」

「なにが?」

「物語的にさぁ、さぁ!今から救出劇だ!って盛り上がるじゃん?」

「盛り上がるね。」

「そんで明日からドラゴン部隊がクアータスだっけ?軍隊蹴散らし~の、王城まで私達が突き進んで悪い貴族達とやり合ったりとか。」

「あー、まぁそうだね。」

「そんで王様に『お前が元凶か!』みたいな?」

「ねーちゃん。」

「なによ。」

「小説見過ぎ。」

「いやいや!ネタにしたいじゃん!」

「そこは脚色しなよ。」

 JK軍団と陽菜が話している間に落ち着きを取り戻したフルールが千春にお礼を言っていた。


「聖女チハル様有難うございます。」

「お願いしたのユラですけどね♪」

 千春はユラの頭を撫でながら答える。


「ユラ様・・・有難うございます。」

「げんきでた~?」

「はい、元気になりました。」

 涙を溜めた目で笑みを作りながら答えるフルール。


「チハル、クアータスに行くのはやめるのか?」

「んにゃ、進軍してんだよね?」

 ルプに聞かれ千春はロイロを見る。


「そうらしいのぅ。」

「それは止めたい。」

「そうじゃな、母よ、そっちは任せて良いか?」

「いいわよ~蹴散らしちゃう?」

「追い返すくらいで良いじゃろ、どのみちドラゴンが居たら逃げるじゃろ。」

「フルールちゃん、お父さん・・・メラディオ国王とかはどこ行ったの?」

「分かりません、気付けば行方が分からず・・・。」

「ありゃ~、アイトネーわかる?」

『え~っと・・・もうこの世には居ないわね。』

「マジか。」

「自殺とかじゃないよね?」

 千春と頼子はアイトネを見る。


『メラディオ貴族の仕業ね、クアータスの息が掛かっている者よ。』

「最悪だな!メラディオ貴族!」

「ほんと最低。」

 千春と頼子は怒り、しょんぼりするフルールと近衛の2人。


「うん、予定通り明日行きまーす!」

 千春は手を上げ言う。


「作戦は?」

「ママドラさん軍の方お願いしますね♪」

「了解、任せて頂戴。」

「王様の方は私が行く!」

「千春大丈夫なん?」

「ルプ達いるもん。」

 千春が言うと麗奈が手を上げる。


「私達の護衛はオピクスさんとセルッティさん、あと精霊達と妖精が護衛するよー。」

「過剰な護衛だな!」

「ルプ達だけでも過剰だけどね。」

「裏切り貴族は?」

「どうしよっかぁ、そっち方面わかんないもんなぁ。」

 千春は不意に上を見ると蝙蝠が出て来る、そして。


「はいはい、私も手伝うわ~。」

「アルデア頼もしい!」

 影から現れたアルデア、そしてイーナも現れる。


「見つけたらその場で処理する?」

「いや、捕獲してメラディオの国法で裁いてもらお、それで良いよね?フルールちゃん。」

「はい、お願い出来ますでしょうか。」

 深々とお辞儀をするフルール。


「あとは!」

「あとは?」

「野となれ山となれ!」

「でたよ!」

「大雑把すぎ!」

「チハルくぉりてぃ~♪」

「こまけぇこたぁいいのよ!ほら!ご飯たべよ!」

「そうだ!ご飯!ご飯!」

「フルールちゃん!美味しいご飯あるよ!一緒に食べよう!」

 千春はそう言うとフルールの座るテーブルに料理を並べる。


「フルールちゃんご飯ちゃんと貰えてた?」

「はい。」

「アイトネ、メラディオ国とクアータス国のごはんってどんな感じなの?」

『チハルが来る前のジブラロールと変わらないわよ。』

「マジか!フルールちゃん!いっぱい食べてね!」

 千春はフルールに微笑むと皆に声をかける。


「それでは改めて!」

「「「「「「いただきまーす!」」」」」」

「こっちは乾杯じゃー!」

「「「「「「かんぱーい!」」」」」」

 そして陽菜の歓迎会&明日の作戦前夜祭が始まった。







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