2人でデート!②
「んふ~♪」
千春とエンハルトは荷馬車に乗ったまま王宮から王都に向かっていた。
「殿下何処で降りられますか?」
「街の中央広場で降ろしてくれ。」
「はい。」
食堂に食材を運んで来た男は笑顔で答える。
「楽しそうだな。」
「うん、楽しい!」
ニコニコしている千春にエンハルトが問いかけると、嬉しそうに答える。
「何が楽しいのかわからないが、まぁ楽しければ良いか。」
ポツリと呟くエンハルト、そして中央広場で2人は降りると男に小銭を渡しお礼を言う。
「さて、行きたい所が有るわけじゃ無いんだろ?」
「うん、ぷらぷらお散歩するだけ~。」
千春はそう言うとエンハルトと手を繋ぎ通りを歩く。
「前より露店増えた?」
「あぁ、人族以外の種族も増えたからな。」
「へ~、あ!兎族の店だ!」
千春はテテテーと小走りに露店へ突っ込む。
「わ~可愛い。」
「いらっしゃいませー♪手作りのアクセサリーです。」
「この髪留め可愛いね。」
千春は並べられた髪留めを手に取り物色する、エンハルトはチラリと周りを見ると、数名部隊の者が見えクスっと笑う。
「ハルト、これどう?」
「ん、可愛いな。」
「んふ~♪これください!」
「はい!大銅貨5枚になります。」
値段を言われ千春は財布を取り出そうとすると横からお金を渡される。
「ハルト、お金あるよ?」
「こう言うのは男が払うもんなんだよ。」
「えー?こっちのルール?」
「ん~、貴族男子の自己満足だ。」
「ふ~ん・・・ありがと♪」
千春はそう言うと、早速ウィッグに髪留めを付ける。
「どう?」
「可愛いぞ。」
「んふっ♪」
ご機嫌そうに千春は歩き始める、エンハルトはクスっと笑い横を歩いた。
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「ん?アレって姫様じゃねぇか?」
冒険者パーティー狼の牙のパトリスは、ニコニコしながら露店を見ている千春を発見する。
「あぁ、変装してるっぽいが姫様だな。」
「横に居るのは殿下だな。」
男3人は千春を見ながら呟く。
「何してんだろうな。」
「声かけるか。」
「挨拶くらいしておいた方が良いだろ。」
そういう男3人の後ろからシャルルとユーリンが手を出す。
スパパパン!
「いてぇ!!!」
「ちょ!何するんだ!」
「いってぇ~、なんだよユーリン、シャルルまで。」
「あんた達あれ見て分からないの?」
「何がだよ。」
「変装してるって事はお忍びって事でしょ。」
「いやいやいや、見たらわかるだろ。」
「変装って意味知ってるか?自分と分からない様にするんだぞ?」
「見たまま姫様と殿下だもんなぁ。」
ユーリンの言葉に反論する男達。
「こういう時は知らないふりするものなの!」
シャルルも男達に言うとユーリンも追撃する。
「だからあんた達モテないのよ。」
「なっ!?」
「それは関係ねーだろ!」
「・・・そうだったのか。」
「楽しそうにしてるんだから邪魔しないでおきましょ。」
そう言うとシャルルは歩き出す、男達もしぶしぶ付いて行く、するとユーリンと千春の目が合う。
「・・・。」
ユーリンとシャルルは無言でプルプル手を振ると、千春もニコニコと手を振る。
「なんでお前達意思疎通出来てんだよ。」
「そう言う仲だからだよ~ん、ほら!ギルド行くよ!」
ユーリンとシャルルは男達に蹴りを入れギルドに向かった。
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「ハルト、ほら!アレ!」
「ん、あぁアレはクレアのカエルだな。」
「持ってきたの?」
「大量に取れて食べれると分かれば王都にも運ばれるだろ。」
「へぇ~。」
「食べるのか?」
「うん!食べる!」
「ダイエットは?」
「・・・ハルトぉぉ。」
「冗談だ。」
笑いながら店に行くとエンハルトは店主に注文する。
「二本くれ。」
「あいよぉ~・・・ん?貴方様は・・・いてぇ!!!」
店主が話していると後ろから女性が店主を叩く。
「あー、旦那が失礼したね、二本だね?大銀貨4枚だよ♪」
女性はニコニコとカエルの串を渡すとお金を受け取る。
「ありがとね、美味しかったらまた来て頂戴。」
女性は千春にウインクすると微笑む、千春はニコッと笑顔で返す。
「おまえ・・・本気で叩いたろ。」
「当たり前でしょ!姫様と殿下の姿見えなかったのかい?」
「見たから声かけようと・・・いてぇ!!!」
「変装してんだから声かけたらダメに決まってるでしょ!」
「えぇぇ~?」
「まったく、ほら!次の客だよ!」
「あぁ・・・いらっしゃい!」
男性は頭を摩りながら接客を始めた。
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「んみゃ~。」
「久しぶりに食べたが美味いな。」
「唐揚げ串かぁ、コンビニみたい。」
「コンビニって言うとあの明るい何でも有る店か。」
「うん、お店で揚げて売ってるんだよ。」
カエルの唐揚げ串をパクパク食べる千春。
「たしか照り焼きも作ったよな。」
「あれも美味しかったなぁ、肉仕入れてまた作ろうかなぁ。」
「作ったら呼んでくれ、俺も食べたいからな。」
「おっけ~、ルノアーさんに言っておくよ。」
「それなら商業ギルド寄って行くか?」
「イイね、寄ってこ!」
2人はそう言うと商業ギルドに向かった。
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「カエルの唐揚げ串か。」
屋根の上から千春を覗いているルプが呟く。
「ルプ様、買って来ましょうか?」
「ワークス、居たのか。」
「えぇ、人が多いので向こうの屋根から見ておりました、ルプ様の気配を感じましたので。」
2人は千春を見る、かなり離れており千春からは絶対に気付かれない距離だ。
「アレ食うと酒飲みたくなるんだよなぁ。」
「お酒に合う料理で御座いますか?」
「あぁ、ワークスも食べてみたらいい、ハマるぞ。」
「それは興味深いですね、少々お待ちください。」
そう言うとワークスは人気のない路地裏に飛び降り唐揚げ串を買いに行った。
「ルプ!」
「ロイロ、どうした?」
「儂のセリフじゃ、何しておる。」
ロイロは人の姿のまま翼を出しルプの所に飛んで来た。
「ま、俺は散歩中なんだがな?」
「ほう?・・・チハルか。」
「あぁ、今日はハルトと2人でデートだ。」
「2人でか・・・その割には沢山隠れておるのぅ。」
ロイロは千春の周りに居る部隊やサフィーナ達を見つける。
「たまには2人で出かけたいんだとよ。」
「どおりでチハルの機嫌が良いわけなんじゃな。」
「あぁ、ウキウキだろ?」
「こういう時は魂が繋がっておるのも良いのう。」
「あぁ俺達も楽しくなるからな。」
ルプとロイロは遠くに居てもすぐにわかる千春を見ながら微笑む。
「ルプ様、買って来ました。」
「なんじゃ、ワークスもおったのか。」
「ロイロ様も食べられますか?」
「いや、カエルの唐揚げ串なら何度も食べておる、エールと合うんじゃ。」
「あぁビールも良いなぁ。」
ルプは狼男の姿になり唐揚げ串を受け取ると口に入れる。
「うめぇな、クレアで食べた唐揚げよりうめぇ。」
「料理人達が試行錯誤しておるからな、昔ではありえん事じゃ。」
「本当に美味しいですな。」
ワークスも唐揚げを一口食べ微笑む。
「やっぱり酒欲しくなるなぁ」
「帰って飲めば良いじゃろ。」
「そうだなぁ。」
「それでは多めに買っておきましょうか。」
「悪いな、あそこにサフィーが居る、買ったら預けてくれ。」
「わかりました。」
ワークスは唐揚げを食べ終わるとまた飛び降り唐揚げを買いに行った。
「ワークスは中々使えるのぅ。」
「使えるレベルじゃねぇよ、あの距離の千春を見つけれるんだぞ?」
ルプとロイロは小さく見える千春を見ながら呆れる様に話した。
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