チチル逃亡する!
「あー、ココに出るんだ。」
メイド姿でテコテコ歩く千春は、小腹が空いて屋台に向かう。
「おねーさんコレくださーい。」
千春は巾着袋から銀貨を出しながら言う。
「はいよ、ケチャップはいるかい?」
フランクフルトのようなソーセージを手に取り問いかける女性。
「うん!マスタードあります?」
「あるよー。」
たらりとケチャップ、マスタードを掛ける女性、そして千春に渡すとお金を受け取りお釣りを返す。
「ありがとー!」
千春は歩きながらソーセージに齧り付く。
「ん~♪うっみゃ♪」
ふと千春は屋根上の方を見ると、部隊の者がチラっと見えた。
「やっば。」
千春は裏路地にすっと入り覗く、部隊の者は箒に乗って何かを探しているようだ。
「・・・バレた?」
千春は自分の部隊が探すのは何か考えるが、自分しか思いつかない。
「ん~・・・もうちょっと遊びたいな~。」
千春は通りを見渡すと古着屋が目に入る。
「・・・。」
部隊の者が見えなくなった瞬間ダッシュで店に入ると、何事も無かったように服を見て回る。
「おばちゃーん、この服くださーい。」
「はいはい。」
「ここで着替えれます?」
「ん?大丈夫だけど、あんた仕事中じゃないのかい?」
メイド服を着た千春に女性が問いかける。
「あ、仕事おわったんで♪」
「そこの部屋で着替えて良いよ。」
千春にお金を受け取ると指を差す、千春はスキップしながら部屋に入り着替える、メイド服はアイテムボックスに放り込む。
「よし、ウィッグどうしよ・・・これでいっか。」
町娘風に着替えた千春は服以外はそのままで部屋を出る。
「おばちゃんどう?」
「似合ってるよ。」
「ありがとー♪」
店を出る千春はキョロキョロと見まわす、部隊の者は見えない。
「さ~て、最近王都見て無いし、食べ歩きもしよっかな!」
そう言うとぴょんぴょん跳ねながら通りを歩いて行った。
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「・・・。」
「どしたの?ロイロちゃん。」
黙ったままニヤリと笑うロイロをみてユーリンが問いかける。
「ん、チハルが楽しそうに遊んでおる。」
「帰って来てるの?」
異世界の事を知っているユーリンが聞くとロイロは頷く。
「帰って来たのは知っておったが、罪悪感がチラホラ出ておる、後でサフィーに怒られる事でもしておるんじゃろうなぁ。」
「ふぅーん。」
犯罪ギルドの拠点になっている酒場でのんびりしていると、男が2人入って来る。
「可愛い子だったな。」
「俺はもうちょっと胸がボーンとした方が良いな。」
入って来るなり胸の話をする2人にユーリンが睨む。
「なに?喧嘩売ってんの?」
「ちがいやす!西裏の通りでメイド姿の女の子がいたんでさぁ。」
「珍しい目の色してたんっすよ。」
「へぇ、どんな?」
「真っ黒な目で気さくに話す子で可愛かったっす。」
男2人はウンウンと言いながら話す。
「黒目で気さく、それで胸が小さいと。」
「・・・チハルか?」
「っぽいよねぇ。」
「その娘は何処に行った?」
「中央通りの方に行くように言ったら向かいやしたぜ。」
「あとはしらねーっす。」
「ふむ、ちと見て来るか。」
「場所わかるの?」
「なんとなくしか分からんのぅ、ルプなら匂いで分かるかもしれぬが。」
ロイロはそう言うと立ち上がる。
「護衛も居るならすぐ分かるじゃん、チハルちゃん目立つし。」
「いや、1人でしたぜ?姐さん。」
「は?1人?」
「へい。」
「えーそれチハルちゃんかなぁ。」
「多分チハルじゃな。」
ロイロはそう言うと扉を開け出て行った。
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「また着替えたのか。」
ルプは屋根の上から通りを見る、その先には町娘姿の千春が居た。
「キキッ!」
「俺が見ているから問題無い、お前は戻って良いぞ。」
ルプは蝙蝠に言うと、蝙蝠はパタパタと飛んで行く、代わりにアルデアが現れた。
「楽しそうね。」
「あぁ心底楽しんでるな。」
「しらないわよ~?メグがプンプンよ?」
「だろうなぁ、1人で、しかも何も言わずに城を出たみたいだからな。」
ルプは千春が帰って来た気配を感じた時点で直ぐに千春を探し出し見張っていた。
「でも気持ちは分かるわ。」
「あの千春を見たら強引に連れて帰るのもなぁ。」
スキップしながら屋台を見て回る千春、時折買い物をしつつ楽しそうに歩いている。
「仕方ねぇなぁ、俺も一緒に怒られてやるか。」
「優しいわね、私からもメグに伝えておくわ。」
「そうしてくれ、あとは俺が護衛する。」
ルプが言うとアルデアはニコッと笑い影に消えた。
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『チハル王女殿下はまだ見つかりません。』
「そう、引き続き探して頂戴。」
通信を切るサフィーナは溜息を吐く。
「チハルさん見つからないんですか?」
「えぇ、モリー、チハルが行きそうなところ分かる?」
「街をブラブラするくらいしか思いつきませんねぇ、ルプさんかロイロさん居たらすぐ見つけれるんでしょうけどぉ。」
サフィーナは仕事が終わり王宮をスタスタ歩く、そして千春の部屋に入ると蝙蝠も一緒に入って来た。
「アルデア様、チハルの居場所は分かりませんか?」
「キキッ!」
蝙蝠がひと泣きするとアルデアが現れる。
「あらあら、オコなの?」
「・・・いえ、心配なだけです、まさかこんなに早く帰って来るとは思っていませんでしたので。」
「大丈夫よ、私の眷属がずっと付いてたし、今はルプが離れて見てるわ。」
「良かった・・・もう!チハルのバカ!」
サフィーナは珍しく怒りをあらわにする。
「怒ってるじゃない。」
クスクス笑うアルデア。
「ノースの警護とユラの警護に分けたのが間違いでした、やはり誰か居させるべきね。」
「良いんじゃないですかぁ?蝙蝠ちゃんも気付いてたんですよね?」
「えぇ、直ぐに連絡が入ったわ、誰もいなくて楽しそうだったから寝たふりさせたけれど。」
「もう・・・アルデア様、そこは止めてください。」
サフィーナはアルデアに言うと、アルデアはメグに連絡してくるわ~と消えた。
「はぁ。」
一息吐くとサフィーナは通信をする。
「全部隊、チハル王女殿下の追跡は中止、各自持ち場へ戻りなさい。」
「良いんですぅ?」
「ルプさんが付いてるなら話は変わるわ、ノースに何か有っても困るもの。」
サフィーナはもう一度溜息を吐くと、侍女の制服に着替えに戻った。
「・・・チハルさん帰ってきたら地獄ですょぉ~?」
いつも怒られるモリアンはクスクス笑いながらサフィーナの後ろを付いて行った。
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