魔国で料理します!

「こちらが厨房で御座います。」

 メイドセイレーンに案内された厨房は薄暗く、魔族の男女が肉を切っていた。


「ん?どちら様?」

 大きな包丁を持った女性が出てくる。


「ヘビ!」

「下半身ヘビだね。」

「ビェリーの親戚かな?」

「んな訳ない。」

「あれじゃん?あれ。」

「あれじゃわからぬよミオどん。」

「ほら、ラミアとか言わなかった?」

 下半身がヘビの女性を見ながらワイワイ言っていると、呆れた顔で話しかける女性。


「飯かい?珍しいね人間が城に来るなんて。」

「こんにちは!厨房お借りしても良いですか?」

「おや?陛下も来たのかい、珍しいね。」

 女性は笑いながら気さくに話しかける。


「この子達の案内だ。」

「陛下自ら?何処ぞのお姫様とかかい?」

「あぁ、人間の国の王女達だ。」

「・・・王女が厨房に?」

 不思議そうに呟き千春達を厨房へ招き入れる。


「おぉ・・・焼く以外の調理器具が無い。」

「スッキリしてんね。」

「チハル何作んのー?」

「調味料は手持ちがあるから何でも作れるけどー、チーズあります?」

「あぁ、その部屋にあるよ。」

 千春達はゾロゾロと部屋に入るとひんやりとした空気が頬を撫でる。


「酒でも呑むのかい?」

「いえ、チーズで料理します。」

 部屋を見回すと色々な形のチーズが置いてある。


「お、白カビタイプだ。」

「カマンベールっぽいね。」

「こっちは青カビ生えてんね。」

「ゴルゴンゾーラ?」

「それ匂い苦手。」

「ゴーダチーズもあんじゃん。」

「同じ味では無いだろうねぇ。」

「味見して良いです?」

「好きなだけ食べて良いよ。」

 女性に問いかけると笑顔で了承を得た、千春達は目についたチーズを運び出す。


「それじゃ切りまーす。」

 薄くスライスし小さく切ると皆は口に入れる。


「あー、塩気強いね。」

「カマンベールうんま!めっちゃ濃厚!」

「ゴーダはかったいな、焼いたら溶けるかな。」

 美桜と青空はパクパクと口に入れながら感想を伝える。


「すみません、ここオーブン有ります?」

「あるけど数年使ってないから掃除しないといけないね。」

「サフィー、オーブン持って来た?」

「えぇ、そのスペースに置きましょう。」

 千春が言うとサフィーナは畳一畳ほどのスペースにオーブンをアイテムボックスから出し設置する。


「火入れといてー。」

「はーい。」

 慣れた手つきでオーブンを温めるサフィーナを横目に千春はバケットの様なパンを取り出し切っていく。


「コレもパンか、さっきのとは違うな。」

「はい、味見どうぞ。」

「ありがとう・・・コレも柔らかいがさっきのパンより固いな。」

「そう言うパンですからー。」

 アイテムボックスから調味料や野菜を取り出すと美桜達も手伝う。


「バター有ります?」

 女性に言うと首を振る。


「バターも無いのか。」

 千春は出したバターを柔らかくしていく。


「チハル、それ少しちょうだい。」

「はい、お?ガリバタ?」

「ピンポーン、パセリとかある?」

「あるある、乾燥のやつでいい?」

 はいっと渡すと美桜は手に持ったニンニクをすりおろしバターと混ぜ合わせる。


「うん、このチーズ味濃いからサラダでもイケるね。」

「チハル、ミンチある?」

「あるよ、チーズハンバーグでも作る?」

「うん。」

 最近ブルーワグ王国で料理を披露している日葵は楽しそうにミンチを受け取り調理を始めた。


「サフィー、マヨだしてー。」

「はい。」

 マヨネーズを受け取ると千春は樽を取り出し中に手を入れる。


「めーんーたーいーこー!」

「それは魚の卵の塩漬けか。」

「魔王さんコレ知ってたんです?」

「フリエンツの貿易で一度口にした、生臭く塩辛くて食えたものじゃ無かったな。」

「フリエンツと貿易してるんです?」

「たまに来るな。」

「それじゃパンもそのうち来るかもですね。」

「何だと!?それは本当か!?」

「だってマリーナさんに色々教えましたもん。」

 明太子をほぐしながら答える。


「あの女王と知り合いか。」

「はい、仲良くしてますよ。」

「・・・。」

「どうしました?」

「いや、君に何かあればタダじゃ済まない件がまた増えたなと思ってな。」

「あははは。」

 空笑いしつつ手を動かす、マヨネーズと明太子を混ぜ合わせパンに塗ると上からチーズを振りかける。


「モリー、これもう焼いていいよ。」

「了解でっす!」

 美桜もマクリとラルカ3人でガリバタパンを作り天板に並べていた。


「千春ただいまー。」

 頼子と麗奈がメイドに案内され厨房に到着する、そして頼子は酵母の入った瓶を並べる。


「魔王さんコレが酵母です、あとこれがルノアーさんからの手紙で、作り方書いてるそうです。」

「なんと!お礼は何が良いか!そのルノアーという者は何者だ?!」

「ジブラロールの王宮料理長さんですよー、あとこの瓶わかりやすい様にと頂きました。」

 並べられた5個の瓶には日付らしいものが書かれている。


「コレが今日、昨日、一昨日、その前、コレはもう使って良い物だそうです。」

 麗奈が瓶を指差しながら説明する。


「パンの種類と焼き方はその手紙に書いてるらしいです。」

「ありがとう、コレで美味いパンが食える!」

「誰が作るんです?」

 千春が周りを見るが、男女2人しか居ない。


「・・・これは専門の者を雇うしかないか。」

「メイドさん、コレ作ってみます?」

「はい!」

 メイドの女性はパンが気になるのか、興味津々で先程から作業を覗き込んでいた。


「よし、お前パン職人になれ!・・・いてぇ!」

 魔王は偉そうに命令すると後ろから叩かれる。


「陛下、勝手に決めるんじゃ無いよ、ここの決まりは私の担当でしょうが。」

 下半身ヘビの女性が尻尾で魔王をベシベシと叩く。


「ダリア、すまん、だがコレばっかりは確実に作りたいのだ。」

「仕方ないね、私も覚えるよ、王女さん名前は?」

「千春です。」

「チハル、可愛い名前だね、敬語は要らないよ。」

 ニカッと微笑むと魔王から手紙を奪い取り読む。


「ふむふむ、工程はパンより複雑だけれど大丈夫そうだね。」

「作れそうです?」

「あぁ、ミラン、手伝いな。」

 メイドを呼ぶと瓶を受け取り隣で作業を始めるダリア。


「チハル焼けましたよ。」

「はーい、ダリアさん、このパンはその酵母で作ったパンなんで味見して下さい。


「俺も食べて良いよな?」

「はい、魔王さんもどうぞー、あ、皆んなも食べれるなら食べてね。」

 皆はうどんを食べて間もないがパンを手に取りパクつく。


「んっま。」

「味濃いけど美味しいわ。」

「明太子の量減らしても良いね。」

「魔王さんどうです?」

「うまい!」

 魔王はあっという間に食べ切ると次に手を出す。


「コレは美味しいね。」

 ダリアも味見と口に入れ咀嚼する。


「ダリアさん魔王さんシバいてましたけど不敬にならないんですか?。」

 美桜が心配そうに問いかけると、ダリアは大笑いする。


「はっはっは!昔陛下に楽しませてもらったからね、ね、陛下。」

「ん、んむ、そ、そうだな。」

「ビア、最低。」

 アルデアは汚物でも見る様な視線を飛ばす。


「どういう事?」

「千春、聞いちゃダメ。」

「え?ヨリ意味わかったの?」

「レナ、後で教えるから、しーー。」

 頼子と美桜は2人に言う、青空も意味はわかった様で大愛と日葵にコソコソ話していた。


「下半身ヘビなのにどうやって楽しんdイタァァァイ!」

 無言でモリアンをシバくサフィーナとサリナ、ラルカとマクリは美味しそうに明太マヨチーズパンを味わった。






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