温泉旅館の怪奇!

「温泉旅館で変な事が起きてるんだってさ。」

 千春は頼子に言うと頼子は、ん~~~~と考える。


「古い民家とかならまだしも、新築じゃん?あの温泉宿。」

「そうなんだよねぇ~。」

 2人は部屋で猫と遊ぶ和人形を見る。


「なに?」

「なんにゃ?」

「いや、最近ミタマとイロハ2人で温泉旅館行ったりした?」

「行って無いにゃ。」

「行って無いわ。」

「だよねぇ。」

「何かあったの?」

「うん、置いてある物の場所が動いてたり、声がするんだってさ。」

 千春はルノアーに言われた事を思い出しながら2人に言う。


「悪戯かしら。」

「悪戯するって言うにゃらあっちじゃないにゃ?」

 ソファーに座りお菓子を食べているユラとイーレンを見る、いや、視線はテーブルにいる2人の妖精だ。


「あー、妖精って悪戯するって言うよね。」

 頼子はフムフムと呟く。


「私は悪戯なんてしないわ~♪」

「俺もたまにしかしないぜ~。」

「あ、たまにするんだ。」

「妖精は悪戯好きだもの、でも酷いはしないわよ?」

「危ない悪戯はしないぜ!」

「・・・うん、物が動いたり声聞こえるだけだから、言うほど迷惑って程じゃ無いんだよね、ポポ温泉旅館に最近いった?」

「行って無いぜ?」

「ルルも行って無いわよ?」

 妖精2人は新しく作ったビスケットをモシャモシャと齧りつきながら答える。


「ふむ、調査する?」

「そりゃするでしょ、暇だもん。」

 2人はテーブルに広げた参考書をぱたんと閉じる。


「勉強はいいのにゃ?」

「受験勉強は息抜きが必要なのよ?ミタマ」

 呆れる様に言う三珠に彩葉が言うと、そういうもんにゃ~?と首を傾げながら言う。


「よし、ちょっくら行きますかい。」

 千春が立ち上がると、三珠と彩葉、そしてユラとイーレンも立ち上がる。


「・・・え?皆行くの?」

「いくぜ!」

「いくわ。」

「いくにゃ~。」

「いくわよ?」

「いくー!」

「私もいきまーす!」

 皆はそう言うと立ち上がる。


「ま、行ってみますかぁ。」

「だねぇ~。」

 子供達を連れ千春と頼子は温泉旅館に向かった。



------------------



「こんにちわー。」

「いらっしゃいませ!チハル王女殿下!お泊りですか!?」

 従業員の女性が頭を下げる。


「泊っても良いんだけど、最近変な事が起こるってルノアーさんに聞いたんで来たんです。」

「・・・あー・・・はい。」

「あなたも何かあったの?」

「はい、掃除の最中に道具が消えたり移動したりと。」

「へぇ、何処の部屋とかそう言うのは?」

「旅館の中であっちこっちです。」

「あっちこっちかー、ヨリどうする?」

「んー、取り敢えず皆分かれて見て回る?」

「おっけー、何かあったら声かけて、ユラ達も良い?」

「はーい!」

「がんばりまーす!」

「おれもがんばるぜ!」

「ルルもがんばるわよ!」

「わかったにゃー。」

「了解よー。」

 それぞれが旅館に入ると手分けして見て回る事になった。


「さてと、何処から回ろっかな。」

 千春は廊下を歩きながら進む、頼子は温泉の方を見るようだ。


「こっちから良い匂いがするぜ!」

「ちょっと!ポポ!」

「あははは、妖精の仕業ならルルポポが見つけるだろうしなぁ。」

 旅館の中央にある庭園を見ながら千春は廊下を歩く。


「チハルおねえちゃーん!」

 ユラが庭園を挟んで反対側から手を振っている。


「ユラも楽しそうだねぇ、って言うか何が原因か分からないから探しようがないかぁ?」

 てくてくと歩き厨房に到着すると、料理人から料理を貰って食べているポポが居た。


「ポポ美味しそうだねー。」

「んっぐ!?」

「いらっしゃいませチハル王女殿下。」

「こんにちわー、厨房で最近変な事有りました?」

「はい、お皿の場所が変わったり鍋が隠されていたりしました。」

「おぉ、結構めんどくさい事してくれるねぇ。」

「はい。」

「その時何か変化ありました?」

「いえ、気付いたら動いてたりと何も感じませんでした。」

「・・・ふむぅ、ポポ何か感じる?」

「んー、同じ妖精なら隠れても分かるんだけど、ここにはいないな!」

「そっか、妖精の可能性は薄いか。」

 千春は料理人に手を振りまた歩いて行く、途中頼子とすれ違い何も無いねと笑い合うとまた他を見て回る。


「・・・ふむぅ、奥の手使うかなぁ。」

 千春が考えていると目の前を白いモヤが通り過ぎる。


「・・・えぇぇぇ。」

 千春はスマホで頼子にLIMEすると頼子がパタパタと走って来る。


「何か有った!?」

「うん、そこを白いモヤがすーーーっと通った。」

「・・・えぇぇぇ。」

 千春と同じ反応をしながら嫌な顔をする頼子。


「チハルおねえちゃーん。」

「あ、ユラ、どうだった?」

「あのね?えっとね?ゆうれいさんがいたよ?」

「へ?ユラ見えるの?」

「うん!」

「レンは?」

「私はみえませんでした。」

 残念そうに言うイーレン。


「ユラとレンは幽霊怖く無いの!?」

 頼子が反応に驚き問いかける。


「こわくないよ?」

「こわくないです。」

「えー!?幽霊だよ!?お化けだよ!?」

「「?」」

 不思議そうに頼子を見るユラとイーレン。


「んー、こっちの幽霊って怖がられないのかな?」

「まもののゆうれいさんはあぶないけど、普通のゆうれいさんはこわくないよ?」

「・・・魔物の幽霊?」

「普通の幽霊って何?」

「っていうか、犯人は幽霊か!」

 千春はモヤの通った方に歩き出す。


「ちょっ!千春行くの?!」

「ユラ達の反応みたら怖くないっぽいし、行ってみよっかなって。」

 そう言うとモヤが通った廊下を曲がり先にある部屋を開ける。


「・・・んー、何も見えない・・・・ん?」

 一瞬だけふわりと窓の外をモヤが通る。


「いた!ヨリいた!」

「えー、見えないよぉ?」

「あそこいるよ!」

「みえないです、ユラちゃんどこー?」

 目を細めながら見る頼子とイーレン、そして千春は窓を開ける。


「幽霊みっけ!」

「ゆうれいみっけ!」

「で?見つけたけどどうするの?除霊?」

「・・・除霊ってどうやんの?聖魔法で出来る?」

「さぁ?アイトネ様に聞いたら?」

『呼んだー?』

「うん、ヨリやっぱり聖女の称号もってね?」

「持ってないよ、見てたんでしょーアイトネ様。」

『うん、楽しそうだなーって見てたわ。』

「いきなりでアレなんだけど、あの白いモヤって幽霊だよね?」

『んー、この土地に憑いた魂の残滓ねぇ、何もしないわよ?』

「幽霊とは違うの?」

『チハルの言う幽霊は魂が残った状態、アレは魂の残滓、よっぽどココに思い入れがあったのねぇ。』

 アイトネはそう言うと白いモヤに手を振ると白いモヤは消滅した。


「あ、消えちゃった。」

「アイトネ様除霊したの?」

『消しただけよ、魂なら輪廻に戻してあげるけど、アレはただの残滓だもの消しても問題無いわ。』

「ふみゅ、これで一件落着かな?」

「そだね。」

『話聞いてたけど、アレ何もできないわよ?』

「え?」

「へ?」

『話す事も触る事も出来ないわ、考える事も出来ないもの、悪戯なんて出来るわけがないわ。』

「えー!振り出しに戻ったのぉ!?」

「その言い方だとアイトネ様原因知ってる感じです?」

『・・・教えたら面白くないんじゃないの?』

 クスクスと笑みを浮かべるアイトネ、千春と頼子は目を合わせる。


「どする?」

「んー、結構見て回ったけど原因わかんないよねぇ、ユラちゃん達は?」

「わかんなーい。」

「わかりません。」

「ルルとポポは・・・どこ行った?」

「ルルとポポは調理場でお菓子たべてました。」

「たべてたー!ユラもお菓子もらったー!」

「え、ずるい。」

 頼子は思わずユラに突っ込む。


「アイトネ!ヒント!」

『ん~どうしようかなぁ~♪』

「はい、チョココーティングのビスケット。」

『女湯の湯船を調べて見なさいな♪』

「さっき見たよ?」

『目に魔力を集めて視てね♪』

「ほほう?ヨリも出来る?」

『できふできふ♪』

 お菓子を口に入れながら答えるアイトネ、千春達は女湯へ向かった。






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