閑話:三匹でダンジョンのお散歩!

「風斬!」

 ルプは目の前のゴーレムを風の刃で切り裂くと、てくてくと歩いて行く。


「今何階層だ?」

「35やね。」

「あと5階層ですか?」

 ルプが聞くとビェリーとコンが答える。


「しかし、40階層ってのも昔の話だろ?」

「増えとるかもしれんねぇ。」

「誤差じゃないですか?」

 ルプ、ビェリー、コンのペット組はジブラロールに近いエイクラーダンジョンを進んでいく。


「しかし手ごたえ無いダンジョンだなぁ。」

「そうですねぇ、クルメール国のダンジョンはもっと手ごたえありましたよね。」

「ドラゴン達が無双しとったけんねぇ。」

「こりゃぁダンジョンマスターもたいした事なさそうだなぁ。」

 サクサクと魔物を倒しながら進む3匹。


「次僕やりまーす。」

 コンが先頭を歩く、まだ魔物は見えないが皆気配を感じながら進んでいた。


「・・・あれ?敵意無いですよ?」

「無いな、数も多い気がするが、ビェリーどう思う?」

「熱感知しとーけん、生物やね、魔物っぽいんやけど。」

 そして進んでいくと道が分かれている。


「こっちに居ますね。」

 コンが右の通路を指す。


「取り敢えず行ってみるか、魔物なら適当に狩れば良いだろ。」

「そやねー。」

「それじゃ行きましょー!」

 コンは狐の姿でピョンピョンとスキップするように歩く。


「あ、見えました、毛むくじゃらの魔物?」

「いや、魔物じゃねぇな。」

「なんやろ、こっち特有の種族かいな?」

「ダンジョンにか?」

 コンはテコテコと歩き、毛むくじゃらの生物に声を掛ける。


「こんにちわ!」

「ぶぅふぉぉ!?なんじゃらぁ!?」

「あ、話出来るんですね、魔物さんですか?」

「ちがうだらぁ!おまいら何者だらぁ!?」

「えーっと、コンです。」

「おー、話出来るんだな、俺はルプだ。」

「ビェリーばーい。」

「魔物ぉぉぉぉ!?」

「いやいや、お前が魔物って驚くのかよ。」

 呆れるように呟くルプ、毛むくじゃらの生物は腰を抜かし後ずさりする。


「ダメだ、なんでダンジョンにこんなビビりが居るんだよ。」

「奥にもっと居るみたいですけどね。」

「どげんする?ほっといて先進むのもいっちゃない?」

 蛇の姿でケラケラ笑うビェリー、すると奥から数匹の毛むくじゃらが現れる。


「なんじゃぁおまいらなんじゃぁ。」

「お、驚かないヤツが出て来たな。」

「僕たちは冒険者です!」

「冒険者なん?」

「冒険者だろ?」

 冒険者プレートを首に付けたルプは答える、ルプ達は冒険者ギルドでしっかり人型で登録をしていた。


「ぼ・・・ぼうけんしゃだぁとぉ?人じゃないじゃないかいぁ。」

「で、お前らは何なんだ?」

「わしらはグノーム族だぁ。」

「あー!土鬼ですよ!」

「あぁアレかぁ、初めて見たな。」

「わっちも初めてばい。」

「お、お前らはなんなんだぁ!?」

「あー、女神の眷属 (予定)だ。」

「わっちは・・・なんやろ。」

「土地神で良いんじゃないです?」

 ルプが言うと、グノーム族の毛むくじゃらは驚く。


「女神様ぁ!アイトネ様でございますかぁぃ!」

「お、アイトネ知ってるぞコイツ。」

「土鬼は精霊の分類ですからね。」

「あー、確か地球の精霊でノームとか言うところあったんやない?」

「翻訳魔道具じゃグノームなのか?」

「呼び方色々あるんやろ。」

「アイトネ様の眷属様が何用でござぁぃますかぁぃ?」

「いや、ちょっとダンジョンマスターを狩りに行く途中だが、お前らここで何やってんだ?」

 さらっと恐ろしい事を言うルプに狼狽える毛むくじゃらグノーム。


「ダンジョンマスタァは強いぞぉぅ!?」

「そりゃ弱い奴はマスターなんぞ出来ねぇだろ。」

「マスタァ狩ってどうするんだぁ?」

「いや、ちょっと別のダンジョンでマスターやってるネエちゃんがな?ココのマスターは何だろうって話してたんでな、気になったから狩りに来た。」

「・・・・・はぁぁあ!??!?!?!?!?!?!?!??」

 軽く答えるルプに大きな声で驚く毛むくじゃら、コンは耳を塞ぎビェリーもブルブルと体が揺れる。


「うっせえ!ちったぁ声押さえろ!!!!!」

「うぉぅすまんだぁ。」

「で、なんだお前らここに住んでんのかよ。」

「わしらはぁ土の精霊だぁ、ダンジョンは魔力が豊富だぁからなぁ。」

「へぇ、ダンジョンも行き来出来るのか。」

「出来るだぁ。」

「それじゃダンジョンマスターの所まで行けるか?」

「・・・それは・・・だめだぁ。」

「ふぅん、何か問題があるっぽいな、まぁあと5階くらいだろパパっと行くか。」

「そりゃぁいつの話だぁ?今はもっとふかいぞぉぅ!?」

「・・・マジか、何階層あんだよ。」

「今は68階層だぁ。」

「・・・おい、まだ半分だってよ。」

 ルプはコンとビェリーに呟く。


「マ?」

「マ?」

「お前ら、女子高生の真似すんな。」

「えー、あと半分あるんですかぁ。」

「・・・めんどくさくなったばい。」

「おい、毛むくじゃらのお前、ちょっとダンジョンマスターの一番近い所まで連れていけ、行ける所までで良いぞ。」

 何気に面倒になったルプは投げやりに命令口調で言うと、毛むくじゃらノームが怖がりながら断る。


「だめだぁ!それやるとわしらの居場所がこわされるぅぅぅ。」

「誰にだ?」

「ダンジョンマスタァだぁ。」

「そのダンジョンマスター倒すんだから壊されないだろ。」

「・・・本当にたおせるのかぁ!?」

「倒せるんじゃねぇか?因みにダンジョンマスターって何がやってんだ?」

「ルプさん、それ聞いたら行く意味無いんじゃないです?」

「聞いたら早いやん?」

 3匹は毛むくじゃらを見る。


「で?何なんだ?」

「マ族だぁ。」

「・・・魔族?」

「こっち魔族おるん?」

「へぇ、居るんですねぇ魔族。」

「おどろかないのかぃぁぁ!?」

 飄々と言う3匹に毛むくじゃらが吠える


「いや、驚いてるぞ?」

「ビックリです、魔族が居るって聞いてなかったですから。」

「へぇ~そりゃ会ってみたいばい。」

「で、送るのか送らないのか?」

「・・・送れない。」

 頭を下げながら言う毛むくじゃら。


「ふむ、まぁ無理強いは出来ねぇな、それじゃ行くか。」

「そやね、まだ半分って聞いてだるかったばってん、魔族は興味あるばい。」

「思ったんですけど、ヴァンパイアのアルデアさんも魔族なんじゃないです?」

「あー、あ~~~~あり得るなぁ。」

 コンの話を聞きルプが呟く。


「それ言うならキュクロープスのテールカちゃんもそれっぽいやん?」

「あ、そうですねぇ。」

「まぁ行ってみりゃわかんだろ。」

 踵を返しルプは歩き出す、毛むくじゃらのグノームは3匹を黙って見送る、そしてルプ達はダンジョン攻略を再開した。






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