闇オークションで落札するぞぉ!

「ココじゃ。」

 馬車に乗って移動する千春達に声を掛けるロイロ。


「闇って言う割に立派な所でやるんだね。」

「別におおっぴらにしてないだけじゃからな。」

「ロイロちゃん、もうマスクした方が良い?」

 青空がマスクを顔に当てながら聞く。


「降りる前に付けておけ、まぁ見られた所で別に構わんが。」

 ロイロはそう言うと馬車を下りる、馬車はそのままトコトコと移動すると、扉の前で止まる。


「ココ?」

「チハル達はココから入るといい。」

 ロイロは門番の様に立つ男へ一言二言話すと頷き扉を開ける。


「さ、行くぞ。」

「あいよー。」

 皆はどこぞのオペラに出て来るような、目元を隠すマスクをして扉に入っていく。


「オークションの説明は要らんじゃろ?」

 ロイロはエンハルトに問いかける。


「あぁ、やり方は一緒だからな、金の方は確認しなくていいか?」

「はっはっは、チハルが持っている額をしっとるからの、問題無いわ。」

 エンハルトとロイロは話ながら歩く、千春達を挟むようにアリンハンド、エーデル、ホーキンが付いて来る。


「護衛多くない?」

「一応必要なんですよ、ほら、ココ犯罪ギルドの建物なので。」

 小さな声でアリンハンドは頼子に説明する。


「ねぇ、例の子は私が落札して良いんだよね?」

 大愛はねぇねぇと青空の腕を引っ張りながら問いかける。


「いいよ、ジャンケンで勝ったじゃん。」

「良いのかなぁジャンケンで決めて。」

「さぁ、言い出したのはミオだし、皆それで納得したからいんじゃね?」

「そうだよ、それにお金は気にしなくて良いよ、私とチハルが出すから。」

「りょ!そこは任せた!」

 麗奈が言うと、前を歩く千春もクルリと後ろを向き笑顔で答える。


「この部屋じゃ、中から外が見える。」

 千春達はそう言われ中へ促されると小奇麗な部屋があり、右の壁は無かった。


「おぉー、さっきのオークション会場と似てるねー。」

 壁の無い方を見ると、先程の様にステージが見える、下を見れば思ったよりも人が多い、違う所と言えば貴族も多いが、冒険者の様な者、明らかに商人姿と分かる者、そして風貌が悪い者と多種多様だ。


「へぇ、マスクしてる人多いね。」

「冒険者っぽい人達も付けてる人居るね。」

「気休めじゃなぁ、見る者が見たら分かるからのぅ。」

「私達のは違うんだっけ?」

 ロイロに麗奈が聞くと、ロイロは頷きコンを見る。


「はい!僕が術を仕込んでいますので、目を凝らして見てもマスク以外の所は良く見えないです。」

「私達は見えてるよね?」

「はい、ミオさん達には見える様にマスクに細工しています。」

 気付けばエンハルトやエーデル達も付けている。


「もう少ししたら始まるからの、ゆっくりしておけばいい、儂はちょっと行ってくる。」

 ロイロは外に出ると、千春達は部屋を見回し探索する。


「これで落札するんだよね。」

「うん、1番じゃん!」

「おー、めっちゃ目立ちそう。」

「この部屋に居る時点で目立つっしょ。」

 大愛は札を手に取り、ステージを見下ろす、よく見るとテーブルに魔石の付いたマイクの様な物がある。


「何これ、マイク?」

「マイクっぽいねー。」

「こっちこういう魔道具あるの?」

 頼子が言うと、アリンハンドが答える。


「近くの対になった物が有るはずです、多分あのステージに有りますね。」

 アリンハンドはステージに有る、司会が立つ場所を指差す。


「あー、ハンマープライス!って言うやつの所か、遠いもんねー。」

「そう言えばあっちでも普通に声届いてたよね。」

「向こうも同じ仕組みで声が届くようになってたぞ。」

「え?そうなの?ハルト。」

「あぁ、テーブルの所に仕込んである。」

 色々と話をしていると、下の観客席も埋まりだし、ステージに男性が立つ。


「お待たせしました、それではオークションを始めましょうか。」

 ひょろりとした男性は、軽く言うと観客が鎮まる。


「それでは・・・。」

 男性がステージの奥に目配せをすると、男が2人台を押しながら入って来る。


「こちらは某貴族の館から運び出された金庫で御座います、厳重な鍵、そして魔法でさらに鍵をかけられた物で、中身は分かりません、我こそは開けて見せようと言われる方如何でしょうか。」

 にんまりと笑う司会は観客席を見回す。


「さて、落札される方はいらっしゃいませんか?」

 司会が声を掛ける。


「ねぇ、ルプ、アレ開けれる?」

「開けれるんじゃねぇか?」

「僕も開けれると思います。」

「わっちもー。」

「よし、落札してみるか。」

「幾らで?」

 頼子が言うが間もなく観客から声が飛ぶ。


「2枚!」

「5枚!」

「6枚!」

 観客は面白半分で出しているようだ。


「刻んで来るねぇ。」

「中身わかんないんだよね?」

「空かもしんないよね。」

「壊して開けて空だったら大損じゃん!」

 そう言いながら頼子達はステージを見ていると千春が参加する。


「10枚!」

 そう叫ぶとすぐに観客が上乗せする。


「11枚!」

「13枚!」

「15枚!」

「あ、上乗せされた、って150万!?」

「えー、何入ってるか分かんないだよね?」

「金貨が1000枚くらい入っているかもしれないぞ?」

 エンハルトは面白そうに声を掛けて来る。


「・・・んー、気にはなるけど、よく考えたら貴族の金庫とか興味無いわ。」

 千春はそう呟きステージを見る、そして15枚の者が落札した。


「次はこちらの絵画です。」

 大きな絵画を男達が運び込む、そしてまた競りだす。


「闇って言う割には商品普通だね。」

「入手経路が怪しいから他で売れないんだろうな。」

「ハルト的にコレはアウトじゃ無いの?」

「ん~微妙だなぁ。」

 そう言っている間にも、宝石が出たり、呪われた椅子や呪いに使う触媒と言われた物が次々と落札されていく。


「それでは、次の商品はこちら!」

 男達が小さな檻を台車に乗せて来る。


「鳥?」

「遠くてよく見えないなぁ。」

 小動物の入った檻を見るがよく見えない千春達は目を凝らす。


「千春、俺が見るからあの石で見てみろ。」

 ルプはそう言うとステージの檻を見つめる、千春はアイテムボックスから石を取り出しプロジェクターの様にルプの見ている物を映し出す。


「なにこれ、鳥っぽいね、可愛い。」

「ハルト、これ何?」

「王都周辺では見ない動物だな。」

「魔物ではない?」

「あぁ、アリン知ってるか?」

「山岳地帯に住む肉食の鳥ですか、小さいですね、まだ子供でしょうか。」

「えー、鳥の子供とか可哀そう、逃がせないかな。」

「競り落とせば好きなように出来るぞ。」

 エンハルトが言うと千春はステージに向かう、既に金貨20枚を超えている。


「50枚!」

 ざわつく観客席、司会者は50枚が出ました!他にありませんか!と煽っている。


「51枚!」

 一人の商人が声を上げる。


「100枚!」

「あの商人っぽい人51枚って・・・儲け無いんじゃん?」

「なにかしら価値知ってるとか?」

「どうだろ、あ、札卸して座ったよ。」

 それを確認した司会者が声を上げる。


「それでは1番の方が金貨100枚で落札で御座います!」

 どよめく人、拍手をする人、そして睨みつける商人。


「それでは次の商品です!」

 男が入って来る、そして例の猫耳少女がてくてくと付いて来る。


「こちら!10年分の奉公を販売致します!決して奴隷ではありません!奴隷ではないですよ?!」

 念押しするように続ける司会者。


「ハルト、アレって意味ある?」

「いや、買ってしまえばどうなるかは分からないからな、一応そう言う形で出していると言う事だろう。」

 2人が話をしていると、続けて話す司会者。


「この子は母親が病気だそうです、是非とも病気を治す為に高くお買い頂ければと思います!」

「よろしくおねがいします。」

 ユラより少し年上くらいの猫耳少女がペコリと頭を下げる。


「よし、良いよね?」

「うん、全力で行って良いよ。」

 大愛が皆に確認すると、麗奈もサムズアップしながら答える、すると観客から声が上がる。


「5枚!」

「10枚!」

「11枚!」

「12枚!」

「・・・安くない?」

「あれだけ小さいと最初は何もできないだろうからなぁ。」

 千春とエンハルトが呟いていると、貴族の男が声を上げる。


「50枚。」

 ニヤニヤしながら低い声で金額を言う貴族風の男。


「ダイア、行っちゃえ。」

「うぃ!100枚!」

 何!?と言わんばかりにこちらを見る貴族風の男。


「ハルトあの人貴族?」

「多分な、俺も貴族全員覚えているわけじゃないからな。」

「110!」

「200!」

 男が110と言えば、大愛は先ほどの倍の200と言う。


「201・・・。」

「400!」

「401・・・。」

「1000!」

 騒めく観客席、貴族の男は睨む事も辞め、席に座った、それをみた大愛はガッツポーズをする、千春達はパチパチと手を叩いている。


「ごめん、勢いで言っちゃった。」

「うん、私なら同じ金額言ってたわ。」

「私もー。」

 千春と頼子、そして麗奈もウンウンと頷いている。


「それでは1番の方が金貨1000枚で落札で御座います!」

 司会者がそう言い、次の品に進む、千春達は残りのオークションを見ながらこれからどうするか話をした。






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