モート連邦国と友好条約!

「これで条約の締結という事でよろしいわね。」

 マルグリットは会議室に呼ばれた各国の責任者へ話しかける。


「マルグリット・アル・ジブラロール王妃殿下、ありがとう御座います、各国総意の元、友好条約は締結されました。」

 皆立ち上がると、拍手をする。


「交易も行いたい所ですが、距離も有ります、海路での貿易として、ロラカリア国からジブラロール王国ハース領が最短になるでしょうか。」

 モート国女王ルイーズは皆に聞こえる様に言う。


「今はそうなるかしらね。」

「今は?」

 ロラカリアの文官がいぶかしげに言う。


「えぇ、数年は掛かりますが、陸路での交易も可能になりますわ。」

「行商旅団を組んだとして、数ヶ月掛かりますぞ?」

「フフッ、今開発中の魔道鉄道が出来上がれば、モート国まで3日で来れますわ。」

 マルグリットが言うと、皆は驚きの声を上げる。


「何ですと!?それは一体どういった物で?!」

「まだ開発中ですわ、冬にはテスト稼働も始まります、そうなれば大量の物資、そして人の移動も安易になりますわ。」

「連邦国として何か出来る事はございますか?」

 ルイーズは前もってすり合わせをしていた質問を投げかける。


「稼働させる為に線路を引かなければいけません、その為大量の鉄が必要になります、ジブラロール王国内での資材は確保出来ていますが、連邦国までとなると、かなりの量を他国から仕入れる必要が有りますの。」

「モート国からは出来る限りの出資はさせていただきますわ。」

 ルイーズは即答で答える。


「その様な覚束ない物に出資は出来かねますなぁ。」

 そう答えるのはブルーワグ国だ、不敵な笑みを浮かべ口を出す。


「それは構いませんわ、出資して頂いた国優先に販路を引かせて頂くだけですもの。」

「ロラカリア国は一口噛ませていただきましょう。」

「何ですと?!大量の鉄を集めると言う事は軍事強化に繋がりますぞ!その手を貸すと言う事と同意!」

 ロラカリアの声に被せる様に言うブルーワグ国。


「何を言っているのです、貴方が最初に言われていたドラゴンの前に武器が何の役に立つと?その気になれば連邦国をジブラロール王国の配下にする事も出来るのですぞ?」

「それは・・・しかし!」

「この件に関しては計画段階ですわ、追ってモート国へ打診して参ります、詳しくは後日場を設けますので。」

 マルグリットはそう言うと、話をまとめ上げ、会議は終了した。


「ブルーワグ国は最初から最後まで食い付いて来たわね。」

 マルグリットはルイーズに言いながら部屋に戻る。


「ドラゴンを数頭、連邦国へ配れと言った時は驚き過ぎて何も言えませんでしたわ。」

「まぁ渡したら国を燃やし尽くして帰ってくるでしょうけどねぇ。」

 マルグリットは楽しそうに言う。


「本当何を考えているのかしら、同じ連邦国として恥ずかしく思いますわ。」

 2人はマルグリット達の客間に戻る。


「ただいま。」

「おかえりなさい、王妃殿下、面白い会議だったわね、もう笑い過ぎて声出ちゃったわ。」

 アルデアは蝙蝠を忍ばせ会議を見ており、楽しそうに言う。


「どう?何か動きはある?」

「各国概ね良好ね、2国程慎重に考慮中って感じ、ブルーワグって所が当たりね、例の貴族はココに匿われているわ。」

 会議が終わり、それぞれに蝙蝠を忍ばせ情報収集するアルデアは答える。


「そう、どうしてくれましょうか、私の仕事は終わったから乗り込む?」

「もう少し待っても良いみたいよ、どっちに付くか悩んでるわ、没落貴族を匿い続けるか、モート国に寝返るか、魔道具を使って本国と相談中ねぇ。」

「貴族の場所は分かりそう?」

「ガータ侯爵とバルブ侯爵は既にブルーワグ国に居るみたい、ペドラ子爵はこの国に居るわね。」

 蝙蝠が見聞きしている事を話すアルデアは楽しそうだ。


「ペドラ子爵の場所が分かったみたいよ?」

 マルグリットは窓を開けると3羽のカラスが止まっていた。


「ルー、キロダスって分かる?」

「えぇ、キロダス男爵、どこの派閥にも属していない中立派だったはずよ。」

「そこに隠れているわ、ちょっと行ってくるわね。」

「待って!危険よ!」

「フフッ、私を誰だと思っているの?」

「でも・・・。」

「安心しなさいな、私も行くわよ。」

 ママドラは楽しそうに答える。


「私もこれ以上の情報は期待できそうに無いから一緒に行くわ。」

 アルデアも立ち上がる。


「竜騎士団も動かすのかしら?」

「逃げられない様に包囲だけさせましょうか。」

「竜騎士団が動いたら私の取り分が減るじゃ無い、私の眷属を包囲させるわよ王妃殿下。」

「そう?それじゃルー、お留守番よろしくね。」

 マルグリットはルイーズの返事を待たずにベランダに出ると、ママドラはドラゴンの姿になり、マルグリットはその背中に乗る、アルデアは蝙蝠になりマルグリットの肩に乗る、周りには箒に乗ったマルグリットの部隊がスタンバイしていた。


「道案内お願い。」

 マルグリットが言うと、カラスは飛び立ち、貴族街へ向かう、数分飛んだ所でカラスが沢山止まった屋敷が見える、男爵家としては大きく立派な屋敷だ。


「それじゃ包囲するわね。」

 アルデアが言うと、屋敷の周りの影から漆黒の狼が大量に現れる。


「貴女達は空から警戒、逃げ出す者がいたら狼ちゃんと一緒に束縛しておきなさい。」

「了解しました。」

 マルグリット、ママドラ、アルデアは正面玄関に降りると、アルデアがドアノブを握る。


「あら、鍵が掛かってるわね。」

バキャッ!!

 そう言うとアルデアはドアごと引きちぎる。


「こんにちわー。」

 悪びれずアルデアは中に入ると声をかける。


「何事ですか!?」

 執事が走って玄関まで来ると、声を掛けてくる。


「ペドラ子爵を出しなさい、ついでに貴方の主人もね。」

「この人怒らせない方が良いわよぉ?」

 有無を言わさずマルグリットが言うと、アルデアは揶揄う様に言う。


「・・・此方へどうぞ。」

 執事はマルグリットとアルデアよりも、後ろにいるドラゴンを恐れ、震えながら言うと、ママドラはドラゴニュートになりついて行く。


「逃がそうとか考えない様にね、屋敷は包囲してるわ。」

「地下道もダメよー、私の眷属が居るから。」

 2人はクスクスと笑いながら執事に言う、そして豪華な応接間に案内された。


「直ぐにお呼び致します。」

「3分だけ待ってあげるわ。」

 マルグリットは微笑みながら言うと、執事は走って消えて行った。


「何故3分?」

「たまにチハルが言うのよ。」

「変な事言う子ねぇ。」

「可愛いでしょ?」

 フフフと笑いながら答えるマルグリット、そしてドタバタと音をたてながら扉が開いた。


「はぁはぁはぁ、お、お主がドラゴンの飼い主か!」

「別に飼ってないわよ、お友達ですもの、ねぇ?」

「面倒見てもらってるから別に飼われてると言われても怒らないけれど?」

「それで!何の用だ!」

「えっと、どちらがどっち?ペドラ子爵は?」

 男2人に横柄に言い放つマルグリット、しかし男達は素直に答える。


「私がペドラ子爵・・いや、もう子爵ではないが。」

「あら、思ったよりも素直ね、あなた。」

「仕方あるまい、もう私には言われた通り動くしか無いのだ。」

「それはガータ侯爵とバルブ侯爵?」

「・・・そこまで知っていると言う事はルイーズ皇妃・・・いや女王の手駒か。」

「お・と・も・だ・ち。」

「只の友達が貴族の屋敷にドラゴンで乗り込むわけが無かろう、何者なのだ。」

 笑顔で話すマルグリットだが、目が笑っていないことに気付いたペドラは問いかける。


「マルグリット・アル・ジブラロールよ。」

「・・・そうか、ここまでか。」

 ペドラが言うと、キロダス男爵は目を見開く。


「女性3人に恐れるのですか?」

「馬鹿もん!!!!!ジブラロール王国の氷の魔女と言われた人だぞ!その気になれば帝国の兵士すら全滅出来ると言われる氷の魔女だぞ!!!!」

 氷の魔女と言われ、マルグリットの眉がピクリと動く。


「はっ!申し訳ない、私は降伏する、もう遅いのかも知れぬが。」

「頭は回るようね、あなた達2人とも王宮で話を聞くわ、大人しく付いて来るわよね?」

「分かりました。」

 2人は大人しく表に出ると、王宮に連れていかれる事になった。






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