天元突破の超越達~輝く超越の星光達~

赤地 鎌

第1話 ネオデウス学園への入学


 それは数多の閃光の嵐だった。


「エネルギー値増大!」


「ディスカードが増殖!」


「結界の密度を上げろ!」


 激しく飛び交う声達、それを背にするのは、聖帝ディオスだ。 

 聖帝ディオスが編成した時空軍隊は、後にヴァナルガンド事変を呼ばれる事件に遭遇していた。


 聖帝ディオスが睨む艦橋の巨大画面に、銀河の半分を呑み込む光の円環があった。

 星系を遙かに超えた銀河サイズのそれは、事案が発生した時空で暴走しようとしていた。


 その暴走する超巨大建造物の中を縦横無尽に駆け巡る機神があった。

 紅蓮に輝き、胸部には光の魔方陣が映る水晶を持ち、背中には赤き光の翼と魔方陣を背負っている。


 その機神を操縦するのは…聖帝ディオスの子、その血族であるティリオだった。

 十六歳に成長した立派な顔立ちのティリオが暴走する銀河サイズの円環を駆け巡ってそのコアへ到達する。


 到達したコアが変貌して、巨大な鯨の怪物になる。

 それにティリオが操縦する機神が立ち向かい。


 星系サイズより巨大な装甲の鯨がティリオの機神によって何度も粉砕され屠られる。


 これによって暴走する銀河サイズの円環は停止、そして…ティリオは、とある名声を得る。

 ヴァナルガンド事変の英雄と…。




 ◇◇◇◇◇


 それから一年後。


「ティリオーーー」

と、とある時空戦艦の操縦するナリルがティリオを通信で呼ぶ。

 青い三つ編みの乙女であるナリルは、操縦桿を自動操縦にすると、その隣にポニテールの赤い髪の乙女アリルと、緑髪をショートにした乙女ジュリアが来て

「あと、どのくらいでシュルメルム宇宙工業学園に到着する?」

と、ジュリアが訪ねる。


 自動運転で移動する時空戦艦は、予定された航路、各ポイントの空間転移ポータルを経由しながら進んでいる。


 ナリルが

「予定通りなら、二時間後に到着するわ」


 アリルが

「そう…問題がないに越した事はないから」


 操縦席にティリオが入ってくる。

 長身で黒髪、がっちりとした体格は何処かの戦士を思わせる。


 ティリオが彼女達三人を並ぶ。

 ナリル、アリル、ジュリアの三人は百七十近い身長で、ティリオはそれより頭半分も大きいので、ティリオの顔を少し見上げる彼女達三人。


 ティリオが

「順調に到着しそうだね」


 アリルが

「ここじゃあ、ティリオは有名人だからね。騒がしいのは嫌いでしょう」


 ティリオが溜息交じりで

「父さんが観光資源になる日が憂鬱だって分かったよ」


 ジュリアが笑み

「ディオスお義父さんは仕方ないって、数多の宇宙王や超越存在を纏める長をしているんだから」


 ティリオが少し呆れた顔で

「今から行く宇宙学園では、ノンビリ静かにやって行きたいよ。波風立てずに、穏やかな学園生活を満喫したい」


 ナリルが

「大丈夫よ。シュルメルム学園の理事長のヴィルガメス様も、のんびりと学園生活を送らせる用意は出来ているって約束してくれたじゃあない」


 アリルが

「そこの考えすぎる所が本当に、お義父さんそっくりなんだから」


 ジュリアも頷き

「少しはその心配性を直したら?」


 ティリオが

「そうだな。考えすぎても良くない。能力だけは父さんを見習って、性格だけは違うようにしないな。ただでさえ…父さんと並んで見分けが付かない人もいるんだから」


「そうそう」とジュリア、アリル、ナリルが励ました。



 ◇◇◇◇◇


 ティリオ達が乗る時空戦艦は、順調に航路を終えて宇宙に浮かぶ全長百キロの巨大な学園を目前にする。

 巨大な黄金色に輝く円盤型のスフィアという宇宙コロニー。

 ティリオ達が向かうスフィアは、巨大な学園である。

 シュルメルム宇宙工業学園。

 この時空を維持する幾つもの組織の一つ、アッカドア・インステーション機関が運営する工業学園組織である。


 ティリオ達は、この時空とは別の時空から来た転入生であり、このシュルメルム宇宙工業学園に入学する為に来た。

 十七歳であるティリオ達は、ここで四年程度の勉学を通じて様々な工学やそれに関する法律、知識を学ぶ。

 なにより、このシュルメルム宇宙工業学園は、ティリオ達と同じく別時空から来る編入生を積極的に受け入れてくれる多宇宙総合留学組織でもある。


 なぜ、そんな多宇宙総合留学組織が誕生したのかは…近々に判明する。


 ティリオ達が乗る時空戦艦がシュルメルム宇宙工業学園の格納通路へ向かう。

 様々な都市部を形成するスフィアの下部にある数百メートルの時空戦艦さえも収容可能な通路をティリオ達が乗ってきた時空戦艦が通過する。


 ティリオ達が乗ってきた時空戦艦は、魔導文明が作った魔導時空戦艦であり、その推力と防護は戦艦全体を覆う魔方陣で行われる。

 ティリオ達の魔導時空戦艦は、白い外観に涙粒のような流線型と全面に翼のようなフィンが広がる独特な船体の周囲を巨大な魔方陣が覆っている。


 ティリオ達が乗る戦艦が内部の巨大空間に到着すると、巨大空間を地面とする重力が掛かり、その上を滑るように移動する。


 数十キロ近い超巨大空間の上には全体を照らす光、このシュルメルム宇宙工業学園の動力を生み出すコアが輝き、巨大空間を照らすとそこには、他の時空から来た時空戦艦達が並んでいる。

 様々な形の時空戦艦のお陰で、ティリオ達の時空戦艦が目立つ事はなく。

 ティリオ達の時空戦艦は所定の場所に停泊する。

 そして、ティリオ達が時空戦艦から出て、所定の入学手続きを済まそうとした矢先、ティリオが空を、学園の動力を生み出すコアが輝く天井を見上げて

「あれ? まさか!」


 ティリオが見上げたそこには、天井から落ちてくる人影があった。

「いかん!」

と、ティリオは急いで自分の時空戦艦にアクセスして格納庫を開くと、そこには黒い機体、ティリオ達の魔導文明が作った機神、ゼウスリオンが収納されていた。


 ティリオは魔方陣を展開して天高く飛翔して、それに収納されたゼウスリオンも飛び出して追跡、ティリオを空中でコクピットに入れて

「助けるぞ!」

と、ティリオはゼウスリオンの操縦桿を握って落ちてくる人の救出に向かう。


 天井から落ちる人は、両手足を広げている。その服装は特殊なフルフェイスのスーツを装備していて、無作為に落ちている。


 そこへティリオが操縦するゼウスリオンが駆けつけて、その人物を保護して操縦席に入れる。

 ティリオが

「大丈夫か?」


 保護された人物がフルフェイスのガードを上げる。

 その顔は、白い肌の乙女で髪は光の角度によって青と赤を交差させるクリスタルな変化を持っている。


 その乙女が頭一個分も大きいティリオの襟首を掴み

「ふざけるな! 計画が台無しよ!」


「え?」とティリオの目が点になる。


 そこへ学園を防護する警備隊の人型機体達が来て

「お嬢様の保護を感謝します」

と、警備隊の操縦者が告げる。


 それを忌々しげに見つめる保護されたクリスタルな髪の乙女。


 その警備隊の中に金髪の中年の男性が乗る黄金の人型機体があり

「いい加減にしろ…エアリナ」


 エアリナと呼ばれたクリスタルな髪の乙女が

「うるさい! クソ親父が」


 エアリナの父親である黄金の人型機体に乗る人物は頭を抱えた。


 ティリオがその男性を見つめて

「ええ…なんで理事長のヴィルガメス様が…」


 エアリナの父にして、この学園組織の理事長のヴィルガメスが

「すまんな。ティリオくん。じゃじゃ馬娘が迷惑をかけた」


 ティリオは、襟首を掴むエアリナを見つめて

「ええ…娘…」

と、引いていた。





◇◇◇◇◇


 シュルメルム宇宙工業学園の理事長室で

「すまなかった」

と、ティリオより年上の男性が親子程の年の差があるティリオの謝っていた。


 ティリオは手を差し向け

「いいですよ。気にしていませんから…」


 ティリオに謝罪したシュルメルム宇宙工業学園の理事長のヴィルガメスが溜息交じりで

「全く、あの娘は…」

 ティリオが保護したクリスタルな髪の乙女エアリナは、ヴィルガメスの娘だ。

 その娘の暴走にティリオは巻き込まれた。


 ヴィルガメスが

「すまない。君は穏やかな学園生活を過ごしたいと…それを…こんな形で壊してしまって…」


 ティリオは微妙な笑みで

「大丈夫ですよ。まだ、大事にはなっていませんから! 問題ありません」


 ヴィルガメスは項垂れて

「今後とも気をつける。約束する」



 ◇◇◇◇◇


 ティリオは理事長のヴィルガメスの謝罪の後、ジュリアとナリルとアリルの三人と一緒にシュルメルム宇宙工業学園の広大な内部を進む。


 百キロ級の巨大な工学の学園。空を飛ぶ様々な人型機体をティリオは見上げて

「まあ、最初は色々とあったけど…問題ないか…」


 ジュリアが

「そうよ。大事にもなっていないみたいだから…」


 ナリルとアリルがティリオの両腕に抱き付き、ナリルが

「だから、学園内を散策してみましょう」

 アリルが

「そうそう、まずは楽しまないと…」

 ジュリアがティリオの背中を押して

「そうよ。見る場所はたくさんあるんだから」


 ティリオが頷き

「そうだな。まずは…色々て楽しまないと…」


 

 ◇◇◇◇◇


 四人はシュルメルム宇宙工業学園内を歩む。

 広い通路ばかりで、その多くは学園内で使われる人型機体、マキナ専用に整備されている。

 無論、人が通る事も想定されているが、大きなサイズに合わせて人のサイズを調節した方が楽な設計にされている。


 ティリオ達は、とある待ち合わせの場所に来る。

 そこは、人型機体マキナが並ぶ広場だ。


 ティリオ達四人へ「こんにちは」と呼びかける少女が来た。

 青い髪がクリスタルのように黒と青を交差させて色を変える少女にティリオが

「初めまして、貴女が…」


 青と黒のクリスタルな髪の乙女が

「私が、アナタ達の学園案内を務めます。シトリー・ジャスミンです」


 ティリオが

「初めまして、ティリオ・ヴォルドル・グレンテルです」

 ティリオの横に並ぶジュリアが

「こんにちは、ジュリア・ヴォルドル・グレンテルです」

 ジュリアの左右にいるナリルとアリルが

「こんにちは、アリル・オルディナイト・グレンテルです」

 ナリルが

「初めまして、ナリル・ユーチューリ・グレンテルです」


 シトリーが

「ええ…セカンドネーム以外、グレンテル? ご兄妹ですか?」


 ティリオが

「いいえ、違います。夫婦です」


 シトリーの目が点になり

「え? ご結婚なされている…と」 


 ティリオは頷き「はい。そうです」とよどみなく返事をする。


 シトリーは暫し困惑するも

「まあ、ともかく…学園内の案内をしますね」


 シトリーは、ティリオ達を連れて行こうとしたら…

「あああ! アンタ達!」

と、指さす人物がいた。エアリナだ。


 ティリオは、うぁ…と面倒くさい顔でエアリナから視線を逸らすが、エアリナが近づき

「アンタの所為で学園から出られなかったから、責任を取りなさいよ!」

と、ティリオに詰め寄る。

 だが、ティリオの方が頭半分も高いので、ティリオは顔を高く背けたまま無視をする。


 それにエアリナが苛立ち、ティリオの襟首を掴んで引っ張り顔を向けさせようとしたが…ティリオの方が圧倒的に力が強く、引っ張るつもりが自分を引っ張り上げてしまい足が浮く。

 エアリナは苛立ち手を離してティリオを指さしながら

「聞いているの! 責任を」

と、言葉の続きを始めようとした矢先に地響きが起こる。


 この全長が十八メートルの人型機体、マキナ達が並ぶ広大な訓練大地に、とあるマキナが乱入する。

 ショベル重機のようなマキナとは違う、鎧武者のようなマキナ。

 黒と白の意匠を持つ武者風のマキナがショベル重機の頭部を剣で貫き押して、重機のマキナが並ぶ広場に向かってくる。

 それに生徒が逃げ、コーチ達が退避の指示と逃れていた。


 ティリオは、ジュリアとナリルとアリルにアイコンタクトしてシトリーの保護を任せて、ティリオはエアリナをお姫様抱っこして退避する。


 ティリオ達がいた広場に鎧武者のマキナが、重機マキナを倒して仁王立ちする。


 ティリオは鎧武者のマキナに憶えがある。

 アレは…桜花の時空にあるクガイと… 

 そう分析していると、エアリナが

「アンタ! 気軽にお姫様だっこするな!」

と、ティリオから離れる。


「ああ…すまない」とティリオはエアリナを解放する。


 そして、鎧武者のマキナの胸部の装甲が開き操縦者が出てくる。

「よう…エアリナ」

と、呼ぶ長身の少年。


 エアリナが長身の少年を見上げ

「なに? グランナ…」

 

 グランナと呼ばれた長身の少年は、マキナから降りて

「コイツ」と倒したマキナを指さすと、胸部の操縦席から助け出される生徒がいた。

「お前の許婚になりたいって立候補して来たら、潰して置いたぜ」


 エアリナが苛立ち気味に

「そんなの意味ないのに…」


 グランナが胸を張り

「お前の許嫁はオレが相応しい。そうだろう? オレは」


「勘違いしないで」とエアリナが止めて

「いくら、デュエロタクト《契約闘争》したって私は、誰の許婚にもならない」


 グランナが

「オレは、絶対にエアリナの婚約者になる。ネオデウスを継承するヴィルガメス理事長の娘であるエアリナは、次のネオデウス継承者だ。オレは絶対にネオデウスを手に入れる為に、お前と結婚する」


 エアリナがグランナへ顔を向け

「絶対にイヤ!」


 グランナが

「なら、オレとデュエロタクトしろ。オレが勝ったらお前を花嫁にする」


 エアリナが苛立ち気味に

「私がマキナを上手く操縦できないって知っているクセに!」


 グランナが

「じゃあ、誰か補佐を付けても構わないぞ! それでもオレが勝つ」


 エアリナが

「アンタと戦って勝ったっても私には、何の得もない!」


 グランナが

「お前がやりたい事を、オレが手伝ってやる。母親の救出をしたいんだろう。その全面バックアップをしてやる。オレは知っているぜ。お前が学園から逃げた理由、母親を助けたい。でも父親が止めている。オレの家の力を使えば…できるぞ」


 エアリナが苛立ち手を握り締めて震えていると、隣にいる傍観者のティリオを見て

「手伝って!」


「え?」とティリオは困惑する。


 エアリナが

「責任を取って貰うから、私に協力して!」


 ティリオはグランナを見ると、グランナが鋭い顔をしている。

「いや…それは…」


 エアリナがティリオの手を取り

「お願い、助けて…」

と、切実な声を…。


 ティリオはエアリナを見つめると、エアリナは悲しげで涙を浮かべて訴えている。

 助けて欲しい…と。

 ティリオは項垂れて

「今回だけ…」


 こうして、訳も分からずにティリオは巻き込まれるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る