第3話 うお座女子の特徴その3「星占いが好き」
『どうすれば人は運命の相手と出会い、幸せを掴むことが出来るのでしょうか?
これは地球上に生まれたすべての人間が求める永遠のテーマと言えるでしょう。
人生が星によって決まっているなどと簡単に信じることはできないかもしれません。
しかし大宇宙のしくみや人体のメカニズムなど、まだまだこの世にはわかっていないことが沢山あるのです。
星占いとはあなたが生まれたときに太陽が12星座のどこにいたか、に焦点を絞って占うものです。太陽はあなたの本質的な性格を表すとされ、基本的な運命や性格を導き出すことができるとされています。
星が導く運命を信じるも信じないもあなた次第です。
でも毎日のちょっとした選択肢を、たまには星に託してみませんか?
占星術師 パープル☆星羅』
「千鶴先輩、またそんな星占いの本なんて読んでる。中学生じゃあるまいし、そんなものに運命左右されてちゃ、ロクな人生歩みませんよ?運命は自分で掴み取るものです。」
会社近くのカフェで昼食後のコーヒーブレイクタイムに星占いの本を熱心に読みふけっているところを、後輩の高木美波に見つかってしまい、私はあわててページを閉じた。
美波はドライで現実主義者だから、星占いを信じる私の気持ちなどこれっぽっちも共感できないと言う。
男性を選ぶ基準はお金・勤めている会社名・ルックスの順だというから、いっそ清々しい。
私には金銭欲がないから、逆に美波の基準がまったくわからないのだけれど。
「別に星占いに左右されてる訳じゃないわよ?ちょっぴり参考にしてるだけ。」
「あ、それパープル☆星羅の本ですか?この占い師、いまバズってますよね。この人、顔も美人なんですよ。スタイルもいいし、まるでモデルさんみたい。」
そう言いながら美波は私の横の席に座り、コーヒーカップの載せられたトレーをカウンターに置いた。
「え?そうなの?」
「やだ。千鶴先輩、星占い大好き人間なのに知らないんですか?この前、ワイドショーのコメンテーターとして出演してましたよ?」
「そうなんだ。今度チェックしてみる。」
星占いなど興味のない美波さえ知っているなんて、パープル☆星羅先生も有名人になったものだ。
でも私はパープル☆星羅先生がバズる前から先生の本を読んでいた古参のファン。
パープル先生の占い本は、今や私のバイブルみたいなものなのだ。
家にはパープル先生の本が何冊も本棚に飾られているし、その年のうお座の運勢が書かれている本も毎年欠かさず購入している。
本にはパープル先生の顔写真など載っていないから、てっきり顔出しNGなのだと思っていた。
ピロリン♪とスマホが鳴った。
「パープル☆星羅の館」という占いサイトにファン登録すると、毎日星のお告げがメールで届くのだ。
もちろん有料ではあるけれど。
私はワクワクしながら、メールを開いた。
『今日のあなたへ星からのメッセージ・・・ラッキーカラーは白。ラッキーナンバーは10。今日は意外な人からのお誘いがありそう。思い切って新しい世界へ飛び込んでみましょう。』
「ふーん。・・・ん?」
タイミングを見計らったかのように、私のスマホにもう一通メールが届いた。
差出人は藤代柊からだった。
(今朝はありがとう。助かった。お礼に今度食事でもどう?)
絵文字も顔文字もない、ただ用件だけを書き綴られた無駄のないメール。
あの不愛想な藤代さんらしい。
私がクスリと微笑むと、美波がすかさずそれを指摘した。
「あ~。千鶴先輩、にやけてる。誰からのメールですかあ?」
「うん。合コンで出会った人なんだけど、今度食事にでも行かないかって。」
「いいじゃないですか!その人、絶対に千鶴先輩に気がありますよ。」
「そんなんじゃないと思うわ。単なる社交辞令よ。」
「どんな男性ですか?」
「そうね。まあ・・・背が高くてイケメン・・・と言ってもいいのかしら。」
「うんうん。」
「不愛想だけど悪い人じゃなさそうだし、案外甘え上手だったりして。」
「うんうん。」
「でも・・・その人、いて座なのよね。」
「は?」
「だから・・・うお座の私と相性が悪いの。」
「はあ?!」
美波は口元に近づけていたコーヒーカップをトレイに置くと、ものすごい剣幕で私に食ってかかってきた。
「またですか?!千鶴先輩は可愛くて性格もいいのに、どうして彼氏が出来ないのか、自分でわかってます?そうやって星座の相性にこだわりすぎているからですよ!いい加減に目を覚ましてください!」
「だって・・・。」
「この前告白されてた取引先の営業マンも、ふたご座で相性悪いからって断ってましたよね?あの人一流企業だったしきっとお金だって持っているだろうに、ああ勿体ない。」
いや、あの営業マンの人とは、相性うんぬんではなく性格的に合わなそうだから断ったんだけど・・・という言葉を飲み込んだ。
「美波ちゃん。お金ばかりを気にしていると、大切なものを見失うわよ?」
「その言葉、星座の相性ばかりを気にしている千鶴先輩だけには言われたくありません!」
美波は私をキッと睨むと、残りのコーヒーを飲み干した。
「わかったわよ。会うわ、いて座の彼と。新しい世界へ飛び込んでみたらいいって星のお告げにも書かれてあったしね。」
「星のお告げは関係ありません!」
美波の言葉に、私は小さく肩をすくめた。
どっちにしろタクシー代のお金を返さなければならないし、一度食事に行くくらいなら問題ないだろう。
私は藤代さんにメールを返信した。
(お食事、いいですね。私、新しい事に挑戦したいので、ベトナム料理が食べたいです。)
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