108

「お母さん、それは息子さんの個性ですよ」


 無責任な医者はそう私を諭した。病院からの帰り道、息子は道端にしゃがみ込み、蟻の行列を何も言わずに見つめている。息子の名前を呼んでみるが、何も応えない、動かない。息子が生まれてから七年が経つが、お母さんと呼ばれたことは一度もない。この七年間、私はゆっくりと海底へと沈んでいっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る