78

 気づけば舟に乗っていた。うしろには、かいを持った老人がたたずんでいた。


「私は死んだのですね?」


 私の言葉に、老人は濁った眼を見開いた。


「ご理解の早いことで助かりますや」

「この道中、話し相手になってもらえますか。病気で長く人と語り合うことがなかったものですから」


 ギィと軋みながら、舟はゆっくりと暗い水面を進み始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る