死にたいと思ふ日
@Aikuz_Salem
第1話 『ごめんなさい』
ただ見つめることしか出来ないこの自分を、呪いたいと、この場から逃げたいと、どれだけ考えただろうか。
ぐるぐると回り続ける思考回路には、ここから出ていくかはたまたベランダから飛び降りるかの二択しか無かったが、何方も正しいとは思えなかった。
自分の部屋に戻れば隣のマンションから幸せそうな笑い声とクラッカーの音が響き、幼く嬉しそうな声が遅れて聞こえてくる。
誕生日だ。
何時からだろうか。
自分が分からなくなったのは。
食べたいものは何か。
好きなものは何か。
嫌いなものは何か。
欲しいものは何か。
悲しいとは何か。
嬉しいとは何か。
怒りとは何か。
楽しいとは何か。
誕生日とは何か。
友達とは何か。
先生とは何か。
違いとは何か。
生きるとは何か。
死ぬとは何か。
神様とは何か。
死神とは何か。
人生とは何か。
私とは何か。
僕とは何か。
自分とは何か。
全てに答えられたならば、この日記など要らない。
書いてない。
人の誕生日を祝えない奴に生きる資格などあるか?
人の気持ちすら分からない奴に生きる資格などあるか?
こんな日記を書く様な奴に生きる資格などあるか?
答えは間違いなくいいえだ。
嗚呼ほら、結局こんな気持ちを抱えたまま朝を迎えなきゃいけない。
自分から動いておけば、
真っ先に謝っておけば、
そんな後悔をしたって何も残らないのは心の奥底で分かっていたんだ。
たった一言、『ごめんなさい』と。
明日の朝言いたい。
いつも通り朝起きて、『おはよう』と挨拶して、朝御飯を作って、洗濯物を干して、『今日は晴れだね』と他愛のない会話をして、『いってらっしゃい』と見送って、『ただいま』と夕方叫ぶ。
そんな一日を過ごさしてはくれないだろうか。
許してなんて言わない。
怒り続けていて欲しい。
『ごめんなさい』
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