第9話 犬猿の仲

【琇楽園・縁側にて】


鐸戌たくじゅつ「…………げっ」


申錫しんしゃく「人の顔を見るなり『げっ』はねぇだろ」


鐸戌「お前なんかそんな扱いで充分だ、バカ猿」


申錫「…………。本読んでるのに、俺に気づいていちいち反応するとか、わんわんはご主人様に従順で可愛いでちゅねー」


ピキッ


鐸戌「…………誰が誰の犬だって?」


申錫「わんわんがお、れ、の、犬」


鐸戌「……てめぇ、もっぺん言ってみろ」


申錫「おうおう、何度でも言ってやらぁ! 鐸戌くんは俺の……へぶぁ!!!!」


ボゴッ、ヒュッ、パシッ(申錫の顔面に膝キック。鐸戌、投げた本を着地と同時に見事キャッチ)


鐸戌「……はぁ、猿のせいで時間を無駄にした」


申錫「……へっ、背中がガラ空きだぜぇ!」


ボゴーッ、ビダーンッ(申錫の飛び蹴り炸裂。鐸戌、廊下に倒れて顔面強打)


鐸戌「…………っ、てめぇ、このくそ猿!! 表出ろや!」


申錫「あ!? 上等だ、コラァア!!」


巳炸みさく午燎ごりょう、今よ」


午燎「ラジャっす」


糸ピーン、ビダーンッズシャーッ


申錫「何しやがる!?」

鐸戌「何すんだ!?」


巳炸「貴方達、煩い。いつも私が貴方達の喧嘩を止めてこいって言われるから仕方ないけど、面倒くさいの。私のいない時か誰にも迷惑のかからない場所でやってくれる? ……はぁ、喋るのも面倒」


午燎「人間界で犬猿の仲って言葉があるっすけど、絶対申ちゃんと鐸兄のせいっすよね」


【まさにその通りです】


午燎「それを毎度止める巳炸姐さんはやっぱりすごいっす」


巳炸「私は止めたくて止めてるんじゃないのだけれど……」


【犬と猿の喧嘩を蛇が止めるのが常】

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