中華天界物語

煌烙

第1話 五佐と、はじまり

【天上界は五佐ごさと呼ばれる五人の神から始まった】


句芒「天界、冥界、そして人間界も守るためには、ボクたちだけじゃ大変じゃない?」


【木の神・句芒こうぼう


祝融「ふん、俺たちだけでは手に負えんとは、餓鬼じゃのぉ、句芒よ」


【火の神・祝融しゅくゆう


句芒「事実でしょ? 祝融だって、人間を従えきれてないじゃん」


祝融「あ?」


后土「まあまあ、落ち着いてくださいませ、祝融様。我々はこの世界の五行を司っている身。私たちだけでは立ち打ちできない程に人間は、大きな力を持ってしまっている。句芒様は間違っておりませんわ」


【土の女神・后土こうど


玄冥「それなら、我らの力を司り、かつ世界の善と悪を司る存在を作れば問題は解決するのでは? それに、暦における恩恵も碌に与えられていないことです、その方が効率的かと」


【水の神・玄冥げんめい


蓐収「まあ、確かにそれで問題は解決だが、納得しない奴がいるからこうして話しているんだぞ」


【金の神、五佐の長・蓐収じょくしゅう


祝融「俺のことか!? 遠回しに俺を侮辱したな、蓐!」


蓐収「うるさいのだ、貴様は。もう少し静かに話せんのか」


祝融「蓐、貴様……んんっ!」


句芒「みんな、黙れって言ってるじゃん。分からないの? この脳味噌筋肉男」


ボッ


祝融「……っ、貴様! 木で俺の口を封じるでないわ!」


句芒「燃やしてんだから、封じた意味すらなかったけど?」


祝融「こんの、餓鬼……っ」


后土「もうそれ以上喧嘩なさらないで下さいませ。蓐収様がキレかけてますわ」


蓐収「………………」


句芒「はいはい。で、どうするの?」


蓐収「祝融……。貴様だけだ、反対しているのは。どうなんだ?」


蓐収以外(威圧が凄い……)


祝融「…………っ、わかった、わかった! 汝等の言う通りにする! これでよいか!?」


蓐収「……玄冥」


玄冥「…………ここで、ですか?」


蓐収「どこでも構わん。陣を描け」


玄冥「はぁ……分かりましたよ。ここでも構いませんが、広いところの方が良いと思いますよ」


蓐収「……句芒」


句芒「さっきから、人任せすぎじゃない!?」


蓐収「嫌なら、后土に頼……」


句芒「いい!ボクがやる!《瞬》」


バビュンッ


句芒「ここなら広いでしょ」


玄冥「ええ、充分です。…………陣、描けました。術を施します。《我等われら五佐から誕生する存在たちよ、五行と善悪に分かれ、その身体を顕現けんげんさせよ》」


キラキラキラッシャンッ


蓐収「ずは善の方だな。目覚めよ」


祝融「ほぅ、八人か」


句芒「こいつら名前あるの?」


蓐収「問題ない。分かる」


句芒「へぇ、分かるんだ……って、は? 分かるって何? あるのかって聞いたんだけど?」


蓐収「だから、俺が分かると言ったのだ」


句芒「はぁ? 何で蓐収に分かる訳? 術を発動した玄冥は分からないの?」


玄冥「さっぱりですね。まあ、五佐の長である蓐収さんなら分かっても不思議ではないかと思います」


句芒「……玄冥の順応能力高すぎて、ボクついてけない」


蓐収「ちっとも進まん」


句芒「あーはいはい! 悪かったよ! どうぞ!」


蓐収「……左の四人。お前たちの名は、俺から見て右から、朱雀すざく青龍せいりゅう玄武げんぶ白虎びゃっこ。そして、お前たちは4人で四神ししんだ」


四神「はっ」


蓐収「それから、右の四人。お前たちの名は、俺から見て左から、鳳凰ほうおう霊亀れいき応竜おうりゅう麒麟きりん。そして、お前たちは四人で四霊しれいだ」


四霊「はっ」


句芒「ほんとに分かってたんだ……。怖っ」


后土「この世界の王たるお方ですもの。……ところで、顕現させたはずの悪を司る方々が見当たりませんわ」


蓐収「いるではないか、そこに」


祝融「そこって、ど…………っ!?」


玄冥「……暗い所に集合してますね」


蓐収「此奴こやつらは、冥界のそばでなければ生きられん体だ」


句芒「は? どういうこと?」


蓐収「悪を司るということは、人間の罪を司るということだ。此奴らは冥界の瘴気しょうきを吸っていないと生きられん。まあ、幽都ゆうとの門付近なら、天界にいても生活はできる奴らも混じってるがな」


【幽都の門とは、天界と冥界を繋ぐ唯一の門である。この門が開かれる度に冥界の瘴気が流れ込む為、付近は瘴気に満たされている】


蓐収「……おい、お前たち四人は、瘴気の消費量を調節出来るはずだ。……そうだ。左に固まってるお前ら四人だ。やってみろ。どうやるのかではなく、感覚でやれ」


祝融「言ってることが滅茶苦茶だぞ、お前」


玄冥「でも、本当に暗がりから出てきたんですが……流石に怖いです、蓐収さん」


句芒「怖い通り越して、気持ち悪い……」


后土「確かにちょっと怖いですわね」


蓐収「外野ども、煩い。黙っていろ」


蓐収以外「はーい」


蓐収「暗がりから出てきたお前ら、左から、混沌こんとん檮杌とうこつ饕餮とうてつ窮奇きゅうき。お前たち四人で四凶しきょうだ」


四凶「はっ」


蓐収「そして、暗がりから出てこれないお前ら、左から、共工きょうこう驩兜かんとう三苗さんびょうこん。お前たち四人で四罪しざいだ」


四罪「はっ」


蓐収「お前たちにはそれぞれ天界と冥界を守る役目を与える。全うせよ。それと…………《こよみを司し者に我らの恩恵を与えん》……」


十干十二支じっかんじゅうにし「…………」(顕現する)


蓐収「お前たちは三界における暦の役割を与える。四神、四霊、四凶、四罪より力は劣るが、なくてはならない存在には変わりはない。役目を全うせよ」


十干十二支「はっ」


【そうして三界は五佐から力を与えられた者たちに託された。この物語はそんな彼らが住む世界の日常の物語である。】

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