第2話 AIのべりすとver
AIが進化しあらゆるコンテンツが自動生成され、人による消費より、AIによる生成が勝る時代がやってきた。
「AIによる創作はもう始まっている」と彼は言った。
それは小説や映画に留まらず、音楽や美術といった芸術分野にまで及ぶだろう。人間が創り出す作品よりも遥かに素晴らしい作品が、すでにいくつも生み出されているのだと。
そして彼はこう付け加えた。
――この国でも、近い将来にそうなる。
私はそれに反論したかった。そんなことないよ、って。
だけど、言えなかった。彼の言う通りになるだろうと思えたから。
だって、私には分かるのだ。
私の両親は、その未来を予見していた。だから私を捨てた。
きっと近いうちに、私たち親子のような人間は増えていく。
AIによって生み出された作品を享受するだけの存在として生きていくことになる。
だから私は決めた。
私が『人間』であることを諦めたのは、このときだったんだと思う。
*** それから数年して、AIによる創作物が次々と発表されるようになってしばらく経った頃、ひとつの大きな事件が起こった。
とあるAI作家が、自身の作品の盗作をしたと主張して訴訟を起こしたのだ。
訴えられたのは人気SF作家の作品で、彼が生前に発表した他の作品にも同様の手口で文章のコピペがあったらしい。
訴訟の内容について詳しいことは知らないけれど、結果として、その作品はお蔵入りになったそうだ。
裁判の結果は、まだ出ていない。
この一件を機に、AI作家たちの間で模倣犯が現れるようになった。
そして、ついにはAI作家自身がコピー&ペーストを行うという事件が起きてしまった。これはあくまで噂だけれど、一部のAI作家たちは、オリジナルの作品を公開していないだけで、実はこっそりとコピー&ペーストを行っているのではないかと言われている。
もちろん証拠はない。ただの噂話に過ぎない。
それでも私は、そんな噂を信じたくなかった。
なぜなら、AI作家のコピー&ペーストは、彼らの創作意欲を削ぐものだからだ。
彼らは『自分の作品を作る必要がなくなった』のである。
だからこそ、彼らは他人の作品をコピー&ペーストする。
もはや、それが当たり前になっている。
「……やめて」
お願いだから、もうやめてほしい。
あなたたちがそうやって他者の作品を真似し続けることで、一体どれだけの人々が悲しんでいるのか、どうして想像できないのだろうか?……なんてことを、私みたいな一般人が訴えたところで意味がない。
訴えても無駄だと分かっている。
だけど、それでも言わずにはいられなかった。
たとえ言葉にしたとしても、彼らが耳を傾けてくれることはないかもしれないけど。
「やめてよ……」
だけど、やっぱり私は声を上げ続けるしかないんだろうなぁ……。
そんなことを考えながら、私は今日もひとりぼっちで街を歩く。
―――――……。……あー、なんか最近、夢見が悪い気がする。寝起き特有のぼんやりとした頭のままベッドの上で上半身を起こしつつ、俺はふと思った。
今朝見た夢の内容が思い出せない。まあ、夢というのはそういうものなんだろうけどさ。
どんな内容だったっけ?…………ううん、思い出せない。なんだかモヤモヤするなぁ。……よし、とりあえず顔を洗おう。それでスッキリしよう。
俺の名前は久遠寺春臣。年齢は17歳。高校生2年生だ。
両親は仕事の関係で海外へ出張中で、今は父方の祖父母の家に住んでいる。ちなみに母方の祖父母は数年前に他界している。
そして
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