1.始まりの夏
【始業式】
8月26日。始業式の今日、私たち生徒は体育館に集められ、校長先生のどうでもいい話を長々と聞かされている。
「ねえねえルチア。校長のこの話絶対ネットから拾ってきたよね。私記事見たもん。バレバレだよ。」
私の隣のリチカが声を潜めてそう言い、呆れた顔で苦笑いした。
私も『確かに。』と言って笑う。
先生にバレないようにリチカとお喋りしながら時間を潰していると、教師陣の話は終わり、恒例の表彰式が始まった。
が、『私たちには関係ないよね。』と私とリチカは再びお喋りを再開しようとした。しかし、
「表彰状、桐ヶ谷大附属高校2年A組、
伊勢崎 雁翔《イセザキ カリト》殿。」
その名前を聞いた瞬間、私ははっと舞台を見上げた。
【彼氏】
「えぇ?!さっき表彰されてた陸上部の先輩?!」
教室に戻ると、私はすぐにリチカに話した。
さっきの彼、伊勢崎雁翔…カリト先輩がつい最近私に告白してきて付き合うことになったということを。
「もぉー!なんですぐ言ってくれなかったの?!おめでとうルチア!」
カリト先輩の話で盛り上がる私達。
すると、そこに水を刺すように苦手なクラスメイトが入ってきた。
「ねえ、その『カリト先輩』って…伊勢崎先輩のこと?」
ウジウジしながら会話に入ってきたのは古瀬 沙依《コセ サヨリ》。クラスに友達1人もいなくて浮いてるタイプの女だ。
「そうだけど?夏休みに呼び出されて付き合ってくれって言われたの♪ま、アンタには関係無いけどね。」
早くこの女との会話を終わらせたくてそう言い捨てた。しかし、
「嘘…嘘よ…伊勢崎先輩が…あなたに告白するなんて…」
急に意味不明なことを言い出す古瀬。
ふーん。こいつも好きだったんだ。先輩のこと。
でも…
「アンタみたいな根暗女、先輩に釣り合うわけないじゃん。ブス。」
私は古瀬の耳元でそう囁くと、再びリチカと話し始めた。
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