03 私の秘密
私、ソフィア・エトワールには秘密がある。この秘密を知っているのはエトワール侯爵家のお父さまとお兄さま、信頼のおける少数の使用人、そして陛下と王妃様だけだ。
この秘密は私のお母さまが経験した出来事が発端となって生まれたものだ。
私のお母さまジュリア・エトワールは、私が2歳の時に馬車の事故で亡くなったそうだ。
残念ながら私にはお母さまの記憶はなく、後からお父さまやお兄さまから聞いた話によると、家族大好きのやさしいお母さまだったそうだ。
お母さまはプラチナブロンド碧眼のとても美しい人でスタイルも良く、学園に入学する頃になると、告白やプレゼント攻撃、一目ぼれされて付きまとわれるなど、日常茶飯事だったという。
16歳でデビュタントを迎えると、国内の貴族はこぞって釣書を送り、第二王子(今の王弟殿下)、周辺国の王子や貴族、しまいには某国の国王までがお母さまを熱望し、武力をもって奪い合う寸前までいったこともあったという。まさに傾国の美女だったのだ。
その高嶺の花を射止めたのが次期エトワール侯爵だったお父さま。
学園では3年間同じクラスで、告白して両想いだとわかった時には、天にも昇る気持ちだったという。
その後すぐに婚約し、そこから結婚までの手続きの速さは王国内の最短記録を樹立した程だ。
妻に迎えてからは、それは大切に(溺愛)されていたというのが執事のセバス談だ。
そのお母さまの色をすべて持って生まれた3歳年上のマクシミリアン兄さまは美しい系イケメンだ。お兄さまが美しすぎて女性の方が引いてしまうことが多く、釣り合う彼女ができるのか妹としては心配している。
そして、お父さまのエメラルドグリーンの瞳とお母さまのプラチナブロンドの髪色を受け継いだ私は、瞳の色以外はお母さまによく似ていると言われている。
そして、まだ私が小さいころ、「ソフィアちゃんは目の色は違うがジュリア様に似ているな」と、親族の1人がぽろっと発言したことをきっかけに、お父さまの心配性が爆発。
お母さまのように望まぬ相手に関わることがあってはいけないと対策を考えた。
その結果として作られたのが、今私が毎日身に着けているカチューシャの形をした魔道具だ。開発に相当なお金と時間をつぎ込んだと思われる。
これをつけると印象が薄くなり、外見も平凡なものに変わってしまうのだ。
私の場合、瞳の色以外は、髪の色はよくあるブラウンで、目鼻立ちはぼんやりした感じに変わっているようだ。体型も発育不良に見えるらしい。
おかげさまで、かすみ令嬢などと言われるようになっているが、それこそがエトワール家の思惑通りなのだ。
お父さまの口癖が、『人前で絶対外すな』なので、最近ではカチューシャを外すのがちょっと怖い。
これが私の秘密。
王立学園入学前になって、魔道具をつけて学園に在籍するためには、陛下の許可が必要だと、お父さまと一緒に王城に登城し、初めて国王、皇后両陛下に謁見をした。
国王陛下は私を見るなり驚愕し、ジュリアにそっくりだ、国宝級美少女だ、確かに魔道具がないと危ないな、ということになり即認可の運びとなった。
さらに昔お母さまを熱望していた未だ独身の王弟殿下には「娘を会わせないように」というのを陛下に念押しするお父さまを見て、私はみんなに守られているのを実感していた。
だが、この謁見をきっかけに、ダミアン王子の婚約者候補として国王陛下に推薦されてしまったのだった。
もちろんダミアン王子にも本当の姿は内緒だ。魔道具のことを知っている人は最小限にすべきなのだから。
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