第23話 リビラ防衛戦 其の参
バーグはSSランク個体3体を前にしてもいつもと一切変わった様子はない。
いつも通りの落ち着いた様子だった。
「あなたたちは話せますか?」
バーグは三体にそう聞く。
魔物の中には知能が高く、話すことができる個体が存在する。
そのほとんどが特殊個体のランクを1段階超えた魔物たちであり、目の前にいるフロストジャイアンを超えたSSランク級の魔物であるため質問をしている。
だがフロストジャイアンからの回答はない。
どうやら目の前の魔物は話すことはできないようだ。
「話せないのなら容赦なくいきます」
話せるのであれば情報を聞き出そうと考えていたが、話せないようなのでそのまま倒すことにする。
バーグは持っている剣鉈に魔力を込める。
この武器はクリストフが作ったものではなく、ウェルトが作ったものでバーグのオーダーメイドの武器だ。
銘はエルーデ。
刀でない理由はこの武器は基本冒険者として活動するときに使うものであるため、多少荒く使っても壊れにくいように、それに加えて重さによって力が乗りやすくなるからだ。
「ふんっ!」
バーグがエルーデを振るうと大地をえぐりながら斬撃が三体のもとに飛んでいく。
その斬撃の威力は
二体が【氷壁】を生成し、その斬撃を防ごうとする。
残りの一体は横に飛び、攻撃を事前に避けた。
何重にも張られた【氷壁】は残り数枚で斬撃を止めることができ、二体はすぐに【
バーグは【
二体のフロストジャイアンは【
二体が使用しようとしている魔法は、氷系統最強魔法【
その魔法を二体で行使することで短時間で完成させた。
その魔法は氷系統最強魔法と呼ばれるのにふさわしい威力を持っており、掠っただけで全身が凍傷になり、まともに食らうと一瞬にして身体全身が凍りつき、死に至るという恐ろしい力を持っている。
その分、魔力の消費量も激しく、1人で【
「エルーデ三式【
バーグはエルーデを地面に突き刺し、剣技を発動させる。
その技は名前のままで自分の前方に攻撃を反射する盾を作るというものだ。
能力は単純であり、シンプルに強い技だ。
そして弱点もシンプルで、横からの攻撃は防げないという点だ。
【
だが二体とも氷属性の魔物だからか【
そして【
先程、地面に叩きつけた一体が攻撃をしてきたのだ。
バーグは腰に何本も刺している短剣に魔力を込め、【
「面倒くさいですね」
バーグは横から茶々を入れてくる一体にいらだちを覚える。
そのため一番に倒すことにした。
【
肉薄されたフロストジャイアンは大きな杭のようなバーグにぶつけようとする。
バーグはその杭ごと腕を真っ二つに切り裂く。
そしてそのままバーグはフロストジャイアンの身体を切り上げる。
フロストジャイアンは身体と腕から血しぶきを上げる。
フロストジャイアントは傷口を凍らせることで出血を止めたが、傷は深く、腕は修復できていない。
その隙を逃がすほどバーグは甘くなく、フロストジャイアントに急接近し、首まで飛び上がって首を切り落とした。
そしてそのまだ立った状態の死体を蹴り、残りのフロストジャイアンのもとに向かった。
飛びかかってくるバーグに対し、一体は【氷壁】を作り、バーグの進行の妨害をする。
もう一体は氷で無数の槍を作り、バーグに攻撃を仕掛ける。
バーグは【氷壁】を壊しながら氷の槍を避け、ときに飛んできた槍を足場にしながら2体のフロストジャイアンのもとにつく。
この二体は魔法に特化していた個体のようで、まともな肉弾戦は起きることなく、呆気なくバーグを倒された。
「リハビリにはなりましたか」
バーグは三体のフロストコアを採取した後、バーグはそう言い残し、クリストフのもとに向かった。
★
バーグとハルトが自分たちの敵を倒し、クリストフのいる元に帰ってきた。
「皆さん、無事みたいですね」
「クリストフも倒せたんだな」
「あれぐらいは俺も倒せるぞ」
ハルトは道中回復ポーションを飲み、身体の怪我は既に治っている。
クリストフ、バーグ共に攻撃はほとんど食らっていないため、回復ポーションなどは使用はしていない。
「さっき出てきたのはここからだな」
「どうやら結界の一部が破損してるみたいだな」
「そうですね」
先程まで山に張られていた霧の結界の一部のフロストジャイアンが出てきた場所の結界に穴が空いている。
見た感じはしばらくすればまた修復させそうなもので、行くならば今行くべきだ。
「では、行きますか」
ハルトのクリストフはそれに返事をした。
★
「フロストジャイアンが全て死んだか」
「首尾はどうだ」
「誰も殺せていない。
「原因はわかっているのか?」
「原因は第三の冒険者、ボルザーク・リーズ・クリストフの存在だ。ランクは最上位のくせに一人でフロストジャイアンを2体も殺しやがった」
「なら簡単に倒せそうなのはどいつだ?」
「見た感じ、ハルトとクリストフの能力はほぼ同じだった。どちらかと言うよりもどちらも狙う方がいいと思うな」
「儂もそう思うね。どっちかが孤立したときに狙えばいい」
「ならそうしよう。ではやるぞ」
その声に3人が返事をし、各々自分の仕事を始めた。
★
結界内部に入っていく時の配列はバーグを戦闘にクリストフ、ハルトという順番だ。
これは奇襲を受けた際にここで一番ランクの低いクリストフを守るためにクリストフを真ん中にしているのだ。
ただその心配もなく、結界内では奇襲を受けることはなかった。
だが奇襲を警戒し、足が遅くなったために結界が再構築された。
「結界が閉じられたな」
「どうやら誘い込まれたようですね」
三人が結界に入り、山頂に向けて歩いている途中、クリストフとバーグが結界が閉じられたのを感じ取った。
ハルトはこういった魔法には疎いため分からなかったようだが、何かが起きたのはわかっていたようだ。
「それじゃ、山頂には行けなそうだな」
「ええ。まずは3人が固まってはぐれないようにするのが一番ですね」
3人は縦に組んでいる隊列の間をもっと縮め、はぐれないように対策をする。
そうした簡単な対策を取り、3人は山頂を目指して歩き始める。
だがいくら進んでも山頂にはたどり着けなかった。
「この霧では入ってからどれぐらいだったかもわからないな」
「この霧をどうにか晴れされられればいいんだが……」
「そんな方法があれば初めからしていますしね」
3人はやれることがなくなり、たまたま見つけた岩に腰を掛け、休んでいた。
3人はわかっていないが既に3時間近く歩いる。
まさに万事休すだ。
三人とりあえず飲食を済ませ、また探索に出かけた。
何度か休憩と探索を交互に繰り返したが、進展はなかった。
そして3人は1つ、確証に至った。
「やっぱりこれは魔導具の類の結界ですよね」
「そうですね。これほどの長時間魔法を発動するというのは非現実的です」
「じゃあ、俺らがすべきことは魔導具の破壊だな。だが、どこらへんにあるかわかるのか?」
「恐らく霧を発生させる魔導具のはずですので、霧の濃い場所にある思います」
「では、そういった場所を探しますか」
3人が立ち上がり、探索を再開しようとしている時、クリストフとバーグはある気配を察知する。
(東から何かが接近してきているな)
その接近しているものは一直線でここに向かってきている。
それが示すことは、その接近しているものは刺客ということだ。
クリストフはそれに狙われやすいようわざと2人から少しだけ離れる。
バーグはその意図に気付き、ハルトがクリストフの方を向かないように話しかける。
ハルトは敵がおよそ100m圏内に入ったタイミングでその接近に気付く。
「敵襲!!」
ハルトは2人に知らせるために叫びながらクリストフの位置を確認する。
バーグの位置を確認しなかったのは自衛できると信じているからだ。
クリストフの位置はバーグ、ハルトともに少し距離がある。
ハルトはクリストフを守るためクリストフのもとに走り出す。
だがハルトがクリストフのもとに辿り着く前にクリストフは風切り音とともに連れ去られた。
「バーグさん。どうしましょう!?」
ハルトはクリストフが攫われてパニックになっている。
だがクリストフが自ら連れ去られたこと、加えて本当の実力を知っているバーグは至って冷静だ。
「坊っちゃんを助けることよりも先に結界を壊すことが優先です」
「ですが!」
「大丈夫です。坊っちゃんは強いですから、そう簡単にはやられはしません。それよりも早くこの結界を壊さなければ、坊っちゃんの救助に行きたくともいけません。私たちは予定通りにいきましょう」
その後もしばらくバーグはハルトを説得する。
そしてハルトもバーグの意見に納得した。
「……わかりました。では早く行きましょう」
「はい」
バーグとハルトは先に結界を発生させている魔導具を壊し、その後クリストフの救助に行くことでまとまった。
2人はすぐに行動を開始した。
★
クリストフは連れ去られ、洞窟の中にきていた。
クリストフを連れて来た者と洞窟内に3人、計4人の戦士がクリストフの前に立っている。
そしてそれぞれの防具には有名な紋章がついている。
(全員が最上位鍛冶師の装備をしている)
(この騒動には長老たちが関係しているのか)
(だがウェルトの作品はないようだな)
「お前たちは誰だ」
クリストフ自身、敵勢力の目星はついている。
ドワーフの里の長老5人のうち、4人の紋章が入った武器、防具で固めれるような存在は1つだけ。
長老直属の配下、
それぞれの長老が持つ土地から毎年行われる闘技大会で上位3名に選ばれた最強の戦士がその称号を授かることができる。
そのためドワーフの戦士からすればその存在は憧れのものだ。
だが
ただ一番制約が緩いのはウェルトであり、あそこの戦士はかなりホワイトな環境だと言われている。
「数刻の生命の貴様は知らなくてよい」
「数刻の生命?笑わせるな。貴様らごときでは俺は殺せん」
「その減らず口がいつまで続くか見ものだな」
クリストフが無駄口を叩いて時間を稼いでいるのには理由がある。
クリストフはこの山に来てから何らかの方法で監視されていることには気付いている。
その監視をどうにかしなければ執行官としての力を使えないのだ。
そして現在、その監視の破壊を
その破壊が終わるまでの時間を稼いでいるのだ。
「クリストフ。監視は壊したぞ」
「まずは腕だ」
それと同時に
だがその剣は腕を切り落とすことはできず、肩で受け止められていた。
その肩には漆黒の何かが広がっている。
そしてその何かはクリストフの体を包むように大きくなっていった。
「なんだっ!?!」
その普通ではない様子を見た男は後ろに下がる。
「
そうクリストフが告げるとクリストフの身体が全て漆黒の何かに包まれ、中からはまるで別の者が現れる。
「王族の殺害未遂。それは立派な国家反逆罪だ」
その漆黒の球体から出てきた男は静かにそう告げる。
「刑を執行する」
そう一言言った男は虚空から武器を作り、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます