あてなプロフェッサー-003



 アテナ先生が片手を握り込むと、

 次いで、青空が黒々と塗りつぶされて、光が消え失せる。


 直後に、大気中の魔力への干渉が出来なくなるのを感じた。感知が出来ない、どういった手段を用いたとしても、前が見えない。


 上も下も、右も左も分からなくなるような黒。

 自分が今、本当に立っているのかどうかすら不安になる闇の中で、ただ、アテナ先生の声が響いた。

 

「これまで多くの魔装を見てきたとは思うけれども、少年は多分、魔装の本質を、少しだけ見誤っている」


 声が聞こえる。逆を言えば、声しか聞こえない。それ以外の音が、ほんの少しも鳴っていない。

 異常とも言える空間だった。何せ、自身の息遣いすら、耳を澄ましても聞こえない。


 いや、聞こえないどころか、感じることすら出来ない。

 今、俺、本当に生きてるか?


「魔術の出力を上げる、大規模な魔術を軽々と扱えるようになる。なるほど、それも確かに魔装の利点だ。これ以上なく映える、メリットの一つ。だけどね」


 近づいて来ている、

 完全に勘だ。というか、勘にしか頼れない。


 集中すればするほど、この気味の悪い空間に心を乱されるようだった。

 ていうかもう泣きそう。あるいはもう泣いてるかもしれないが。それすらも分からない。

 精神攻撃には普通に弱いので勘弁願いたかった。


「一番のメリットは、一定の領域を完全に支配した後に、その領域内でのみ、自身の属性そのものを引きずり出すことが出来る、という点だ────どうだい? 少年。闇は……?」


 怖いどころじゃないんだけど。パニックを起こすのを通り越して、身体が自由を手離しそうになっていた。

 息が乱れてる、んだと思う。心臓もきっと、激しく鳴っている。


「闇の中では人は動けない。闇の中では人は見えない。闇の中では人は聞こえない。闇の中では、人は生きていられない」


 ギュッと胸を握った。何か恐怖が一周して段々イラついてきちゃったな。

 何でこんな朝からボコボコにされ、泣きそうなくらい怖い授業を受けなきゃいけないんだ。


 クソッ、絶対目にもの見せてやる……と、展開していた夢纏を圧縮した。

 このまま砲撃として撃ち放つ。ぶっちゃけどこにいるかは分からないが、十中八九正面だろう。


 そうでなかったとしても、この空間を破壊できればまあ、何かしら好転するだろう。

 

「────ッ!!」


 だから、叫んだ。どうしても聞き取ることは出来なかったけれど、圧縮した砲撃魔導を解き放った感触だけが、掌に残って、


「そういう、使用者が思う概念をそのまま押し付けられる、非常識的な空間を生み出すのが、完成された魔装というやつだ。ま、せんせーほど完成度が高い魔装も、早々無いと思う──ってうわぁぁぁあ!? ちょっと少年!? ごり押しで破ろうとするんじゃなーい!」


 アテナ先生の、驚愕交じりの絶叫が響いた。

 魔装によって編み上げられた空間に歪が生まれ、俺達の中心で、魔導と魔術の砲撃が拮抗しているのが見えた。というか、押されているのが見えた。


 何で魔術で魔導に、力技で対抗できるんだよ……!

 俺の周りは例外ばっかりか……!? と、じりじり眼前へと迫る闇に冷や汗を流せば、


「呪怨武装:code003────ぶっ破壊こわせ! 超級SSR美少女百連ガチャスラーーーーッシュ!!!」

「ぎゃー! なになになになになになになに!!?!??」


 かなりのソシャゲプレイヤーと思われる発言が、闇をぶち割りながら降ってきた。

 突如として戻った全身の感覚を、思わずフル稼働させながら絶叫すれば、ズドゴォン! という激しい爆音と共に振るわれた、やたらとメカメカしい斧が、して、地面にぶち込まれた。

 それを握るのは、一人の少女。

 

「おっと悪ぃな。模擬戦じゃれあいっつーことは見りゃ分かったが、これ以上は日之守ヒノクンが危険ヤバそうに見えたんでな、介入させてもらったぜ」


 どっからどう見てもうちの学園の制服ではなく、修道女……かな? と不安になってしまうくらい、修道服をベースにした、露出の多い衣に身を包み。

 濃い紫の髪をベースに、明るいピンク色も交じった長髪の彼女は、「平気か?」と俺に手を差し伸べた。


「オレの名前はミラ=キュリオ・プリーモ。《ヴァルキュリア呪術騎士学校》から来た、テメーの護衛ラバーだぜ」








ご神託チャット▼

☆転生主人公また変な女が増えたんだけど!!?

名無しの神様 反射で出ちゃったにしても最悪の感想すぎるだろ

名無しの神様 誰!? とかじゃなくて完全に「何あの女?」の方向性なんだよな

名無しの神様 こわいよ~

名無しの神様 無差別女威嚇女じゃんこんなん

名無しの神様 女(男)(女)

名無しの神様 性別あやふや太郎花子がよ

名無しの神様 白黒つけろや

名無しの神様 まあ、ワイらとしても「誰!?」なのですが……

名無しの神様 急に異次元の戦い始まったと思ったらこれなんだもんな

名無しの神様 ヴァルキュリア呪術騎士学校って何だよ……

名無しの神様 初耳過ぎるんだが?

名無しの神様 この配信見てると俺のプレイ時間一万を超えたデータがゴミに思えて来る

名無しの神様 草、元気出せよ

名無しの神様 こいつらがおかしいだけだぞ

イカした神様 隣で見てた上司ちゃんが泣いちゃった

名無しの神様 いやワロタ

名無しの神様 お前は平然とチャットやってんじゃねぇ!

名無しの神様 全ての元凶がこの態度なの、最悪過ぎ

名無しの神様 ちょっ、まっ、え? いやいや、えっ……!!?

名無しの神様 なになに

名無しの神様 急にビックリしまくるじゃん

名無しの神様 初見かァ~?

名無しの神様 いやっ、そうじゃなくて、え? これ、今までのバグって、そういうことなのか?

名無しの神様 急に確信を得た感じの発言来たな

名無しの神様 恐れず言ってみろよ

イカした神様 つーか情報は欲しいからな、何か気付いたなら言ってくれ

名無しの神様 え? お前ら分かんない? 何もピンとこない感じ?

名無しの神様 焦らすじゃん

名無しの神様 良いからはよ言えや

名無しの神様 いや、もしかしたら勘違いかもしれないんだけど……このミラってやつ、『蒼天に咲く徒花2(仮称)』の開発映像で出てきて無かったか?

名無しの神様 えっ

名無しの神様 えっ

名無しの神様 えっ

名無しの神様 えっ

名無しの神様 ………………

名無しの神様 ワロタ

名無しの神様 は? ガチじゃん

名無しの神様 うわー! マジだ! え!? 次回作のキャラなの!?

名無しの神様 どうなってんですかねぇ、これぇ……

名無しの神様 拡張時に接続した世界は、次回作の世界だった……ってコト!?

イカした神様 んああぁぁぁぁあおおぉぉぉんんホントじゃんヤダもおぉぉぉおお!!


【性別可変ボケナスと】蒼天に咲く徒花 バグキャラ日之守甘楽 攻略RTA【謎のシスター】


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