怪異ノイナイ町ノ怪異譚 ~怪奇百景百物語~

端暮物書

序幕:黄昏町

 黄昏町の怪異は、悉く死んだ。

 

 残ったのは、怪異による怪奇現象の後遺症。


 天使の怪異による「楽園公園」。

 鉄道の怪異による「怪葬列車」「雲の上の踏切」。

 鏡の怪異による「地球の昇る丘」。

 えとせとら、えとせとら。


 それらは現在、黄昏町の幻想的な風景の一部となっている。

 

 しかし忘れてはならない。

 

 この平和は、僕と彼女の過ちの象徴だ。人間とも怪異ともつかぬ曖昧な僕らの罪そのものだ。


「ボクと君とで、怪異を殺そう。その過程で、必要なら人も殺そう。そうして怪異が滅んだ暁には、金輪際人も怪異も殺さない。何故ってほら、殺し尽くしたら、もう殺せないし……。んぇ? その後? その後は、そうだね――二人で仲良く、『ごめんなさい』しよっか」


 黄昏町の一角にある、寂れた古書店「浪楓堂」。

 その堂主たる、不気味で可憐な白髪の少女――式織四季しきおりしきと、そこに居候する、この僕。これは、僕と彼女による、「怪異譚の後始末」の物語。


 


 

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