第3話VSゴブリン
絵理歌は異世界へきて初めてのバトルが始まる予感に気持ちが高揚する。
こちらは武器を持っていないがゴブリンはそれぞれ短剣、鉈、弓を所持していた。
対武器戦闘で丸腰は圧倒的に不利だ。リーチが伸びる、刃物であれば一撃で致命傷を負ってしまうなど不利をあげればきりがない。
絵理歌は近接武器と弓で連携されると厄介だと判断し、まずは弓ゴブリンから速攻で潰すことにした。
「晴香、私が弓持ちを速攻で落とすから他を牽制して。史さんは伏兵を警戒してください」
「「まーかせて!」」
絵理歌は二人の返事を聞くと弓ゴブリンに向かって走り出した。
史は伏兵に備えて周囲を警戒し、晴香は短剣、鉈ゴブリンに走り寄りつつ落ちている小石や枝などを投げつけ弓ゴブリンの加勢に向かわせないよう牽制する。
弓ゴブリンが絵理歌を狙って矢を放つが左右に揺さぶる簡単なフェイントに引っ掛かり狙いを大きく外した。
次の矢をつがえる前に間合いに入った絵理歌は弓ゴブリンの首に前蹴りの軌道でトゥーキックを叩きこんだ。
首にローファーの固い爪先がめり込み、弓ゴブリンは地面と平行に三メートルほど吹っ飛んだ。
倒れたところに頭を踏み砕いて止めを刺し晴香の加勢に向かう。
「晴香、鉈は任せて、短剣ゴブリンをお願い」
「オッケー。さっさとやっつけちゃお」
それぞれが一対一の状況になった。
鉈ゴブリンは鉈を振り回すが、体が小さく筋力も足りないため逆に重い鉈に振り回されているようだ。
絵理歌はステップを踏み大振りの斬撃を躱し、ジャブで距離を測りストレートで打ち抜いた。顎が割れる嫌な感触が拳に伝わる。
倒れたところを弓ゴブリンと同じく頭を踏み砕き止めを刺して残心をとる。
晴香の方を見ると突いてきた短剣を体さばきで躱しつつ手首に当身を入れて短剣を落とし、腹に膝蹴りを決め、流れるような動きで悶絶するゴブリンの背後に回り込み首を捻り折った。
晴香は疾風迅雷の異名を持つ天才剣士である。素手でも強い。
「「イエーイ!」」
コツンと晴香と拳を合わせ勝利を祝う。
絵理歌は魔物とはいえ生き物を殺すことに抵抗があると思ったが特に何も感じなかった。
武術家として命のやり取りについては日頃から考えていたし、ゴブリンは明確な殺意を持っていた。殺意をもつ相手に対して殺さないように戦うのはとても危険なのだ。
晴香も生き物を殺したことには何も感じていないように見える。
「伏兵はいないみたいよ。しかし二人とも本当に強いわね。このゴブリン魔石とかあるのかしら? 解体の方法がわからないわね」
「取りあえず討伐証明部位になりそうな耳でも切り取りましょうか。ちょうどゴブリンが袋を持ってますし頂いちゃいましょう」
倒したゴブリンをどうするか史と話し合う。解体はやり方がわからないので耳だけ切り取り、使えそうな持ち物は貰って行くことにした。
学校の指定バックにゴブリンの耳など入れたくないので勿論別に保管する。
ゴブリンは女を攫い孕ませて繁殖すると伝えられる魔物だ。普通の女の子であればゴブリンによって凄惨な目に遭っていただろうが、この三人は荒事を得意とするお嬢様であるため問題にならなかった。
「魔物がいるような世界だと私たちみたいに戦闘力が高いグループじゃない人たちが心配ね。みんなとの合流を急ぎましょうか」
「ゴブリンは群れを作る魔物と言われます。さっきの3匹は斥候の可能性があるんでここに長居するのは危険ですね。まずは町を探しましょう」
方針を決めてゴブリンの袋、武器、耳を収集し町を目指すことにした。
どちらの方角に町があるかもわからないので、絵理歌が高い木に登って周囲を見渡すと、遠くに大きな都市を発見したのでそこを目指して移動を開始した。
森歩きは方向を見失いやすいので注意して歩いていると、少し整備されたような林道に出たところで一体の魔物に襲われている馬車を発見した。
豚と猪と人間を合わせたような外見で、身長二メートルはあり、横幅も大きな巨体の魔物だ。手には大きな棍棒を持っていた。
護衛らしき革鎧やローブを着た人間が戦っているが苦戦しているように見える。
「あれはオークかしら。見たところ苦戦しているようだけど、下手に助けに入ると人の獲物を横取りするな! とかで揉めそうね……、聞いてみましょうか。助けが必要ですか!?」
史は馬車の一団に大声で尋ねた。
すると助けが来たのを喜んだのか明るい表情を見せるが、絵理歌たちを見ると表情を曇らせる。女子中学生である絵理歌たちは強そうに見えないので致し方ないだろう。
「すまない! 戦えるなら加勢してほしい!」
藁にもすがりたい気持ちなのだろう、馬車の一団は助けを求めてきた。
「どうやら言葉は通じるようね。えりたん勝てそう? 私はあの一団より貴方たちの方が大事だから無理はしないでね」
「ありがとう史さん。無理そうなら引くので一対一でやらせてください。晴香も手は出さないで」
そう言って絵理歌はオークに向かっていった。
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