無配怪物シリーズ
めとろ
プロローグ
この国では土葬が一般的だが、僕が引っ越してきたこの街では、古くから火葬が伝統なのだという。曰く、『昔近くの森に棲んでいた怪しい男が、墓を暴いて屍体を盗み、それを継ぎ合わせて怪物を造っていた』らしく、それから火葬が一般化したとの伝説が残っているそうだ。
「だからこの街の人は、誰も森に近づかないんですよ」
近所に住む親切な家族が、僕の引っ越しを手伝ってくれたうえに、なんと料理までしてくれた。そして私の新居でそろって食事をするときに、この街に暮らすために必要なあれこれを教えてくれたのだ。母と年頃の娘と息子の3人家族だというが、それにしても娘さんはきれいだし、母親は優しく、息子は無口だが好青年である。近所にこのような素晴らしい家族が住んでいて安心した。
「では、なにかありましたら遠慮なく言ってくださいね」
僕は部屋の窓から、3人が家に着くのを見届けた。
それじゃあ今夜はもう寝よう。
久しぶりにお酒が入り、気持ちよく眠ることが出来そうだと、僕は早々に床に就いた。
「素直な人で良かったね、きっと森へは近づかないよ」
家に着き、扉を閉めると、母親がそう言った。
「でもあのひと、スズヱさんのこと見つめていたね。面倒なことにならなきゃいいけど」、と息子。
「大丈夫、そういうことには慣れているから」、と娘。
「じゃあそろそろ帰ろうか」と母親が言い、スイッチを押すと、床下へ続く階段が口を開けた。
「今日はスズヱさんが当番だっけ、じゃあ後のことは頼んだよ」と母が言い、
息子と二人、床下に消えた。
「ミラちゃん、キュララちゃん、おかえりなさい!晩御飯できてるよ!」と出迎えたのは、顔に大きな傷のある、緑色の肌をした女性。
「ただいま、フラン。あー疲れた」と言いながら、息子が腕を顔の前で振り下ろすと、キバのある長い黒髪の女性へと変身した。
その横を、これまた顔に傷のある小柄な女性が食事を持って通り過ぎた。
「ネヂさん、それ、スズヱさんに届けるの?ありがとう!」と言いながら、母親もいつのまにか少女の姿へと変わっている。
「新しい人、どうだった?」とフランが聞くと、
「森に入らないよう忠告はしたけど、どうかな。一応気を付けておいて」と、黒髪のミラが答える。
「いつも気を付けてるよね~!」と答えたのは少女のような見た目のキュララ。
ここは怪しい森と、街とをつなぐ地下の家。
怪物たちはここに棲み、人間たちと、どうにか共存していた。
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