【短編小説】真田丸 ~未来への願い~

Yusuke Eigo

1章:陣

/ 大阪城 真田丸 陣内 /


佐吉:「なぁ、八兵衛」


八兵衛:「なんや佐吉」


佐吉:「聞こえるか、陣の外から聞こえるあの号令。あれ、徳川殿の軍勢やで」


八兵衛:「とうとうここまで来たんやな」


佐吉:「なんでこんなことになったんやろうなぁ」


八兵衛:「仕方ない、食うためには豊臣軍に雇われるしかなかった」


佐吉:「はぁ・・・始まるんやな」


八兵衛:「言わんでも分かっとる」


佐吉:「戦の前に、ワシは寒すぎて凍えそうやわ」


八兵衛:「せやな、今日は特に寒い」


佐吉:「腹も減ったしな」


八兵衛:「ここ数日、まともに飯も食えてへん」


佐吉:「一度くらい、飯に困らん暮らしがしてみたかったわ」


八兵衛:「せやなぁ」


佐吉:「ワシらのガキらには、戦のない暮らしをして欲しいな」


八兵衛:「あぁ、違いないわ」


佐吉:「戦は何も産み出さん」


八兵衛:「せやな、皆が揃って不幸になるだけや」


佐吉:「・・・なぁ、八兵衛」


八兵衛:「ん?」


佐吉:「来世でもな、友達でいてくれるか」


八兵衛:「なんや急に」


佐吉:「なんとなくな」


八兵衛:「ふん、縁起でもないけどな、当たり前やろ。ワシらはずっと友達や」


佐吉:「そいつはありがたい」


八兵衛:「・・・」


佐吉:「なんかな、さっきから急に足が震えてきてな」


八兵衛:「分かる、ワシも武者震いしとる」


佐吉:「怖いな」


八兵衛:「あぁ、ほんまに」


/ 敵兵の怒声と銃声が轟く /


門兵「敵襲!鉄砲隊!正門を守れぃ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る