クラスで最低と蔑まれた上、幼馴染に振られたけど、後輩を助けたら、超グイグイ来た〜俺が無実な上、実はweb小説の神作者だとわかってももう遅い〜
島風
第1話クラスで最低と蔑まれた上、幼馴染の彼女に振られた
幼馴染の女の子から屋上に呼び出された。ドキドキの告白のイベントかって?
それはあり得ない。何故なら俺達は1年前から既に付き合っていて、もう彼氏彼女の関係だからだ。
なのにワザワザ呼び出されるイベントって……僕は幼馴染の彼女の言う言葉が既に頭に浮かんでいた。
学校の屋上に行くと、そこには黒髪の綺麗な、僕の幼馴染、花蓮がいた。
僕の彼女としては不釣り合いだろう。彼女の容貌はこの学校でも一二を争うだろう。
だからと言って、俺は自分の事を卑下するつもりはない、花蓮がただ可愛いというだけのことだ。
もちろん、俺は花蓮のことが好きだ。10年以上連れ添った幼馴染の彼女なんだ。
だけど、花蓮は見た目と裏腹に性格は決して良くはない。
でも、わがままで、多少の性格の悪さを差し引いても、俺は花蓮が好きだった。
もっとも、たいていの男がその外見と内面の違いに気が付くと引いてしまうだろうという事は察していた。
俺は特別、美少女の幼馴染の彼女がいることをラッキーとは思っていなかった。
花蓮と付き合うということは、かなり難儀なことがあり、苦痛も伴う、俺が花蓮を幸せにしないと、花蓮は不幸にしかなれないとすら思っていた。
花蓮には俺が必要なんだ。そう自分で勝手に思っていただけなことは、これから起こることでわかってしまうんだろうな、と、そう思った。
そして、花蓮の口から出てきた言葉は予想通りのものだった。
「……私達、別れよう」
「……ああ」
「悪いのはあなたなのよ。全部……あなたが悪い……。あんなことするから……」
「あれは誤解だって言っただろ?」
俺は腹が立ち、思わず怒気がにじんだ言葉が出てしまった。
「そんなの信じられる訳がないでしょ?」
「花蓮が信じてくれなかったら、誰が信じてくれるんだ?」
俺の魂の叫びだった。俺は3か月前からクラス…いや、学校中から孤立している。
ある、誤解…いや、無実の罪を着せられて、全校の学生から蔑まれている。
必死に担任の教師に訴えた。でも、取り合ってくれなかった。
両親もそうだ。俺はあんな噂のようなことは断じてやっていない。
せめて花蓮にだけは信じて欲しかった。
「あなたの言うことなんて、誰も信じないわ。当たり前でしょ? だから、今日から二度と私には近づかないでね。私、綱島先輩と付き合うことにしたから。あなたとでは月とすっぽんでしょ? 陰キャな上、あんなことまでして、あなたの正体が早くわかってよかったわ」
「……ああ、わかったよ」
俺は絶望のどん底に落ちていった。
気が付くと俺は涙を流していた。花蓮との思い出を思い出して……。
察しはついていた。
最近その綱島先輩とよく会っていることも、俺のことを信じてくれないことも……。
だけど、俺の脳裏には子供の頃からの記憶が走馬灯の様に蘇った。
子供の頃、「樹のお嫁さんになる」そう言ってくれた。高校一年の始めに、僕は花蓮に告白をした。花蓮は泣いて喜んでくれた。
付き合い初めて一ヶ月目の時、学校の帰り道、寄り道した河原のあぜで初めてのキス。
二人は将来を誓いあった。「何があっても一緒になろうね」花蓮はそう言ってくれた。
それが、今、たった3か月間の出来事で、俺は花蓮にとって邪魔な存在へと変わってしまった。
10年以上も関わっていたのに!
そして、俺は花蓮の性格の悪さを改めてよく知った。
「ぎゃははははっはは!? 笑える!!」
「ほんと、こいつ、マジで泣いているぜ!!」
「全部ばっちり、スマホで撮ったぜ! すぐに学校中の奴らに送信だぁ! 最低なヤツの惨めな姿はみんな涎を垂らしてまっているぜぇ!!」
気が付くと、俺と花蓮の周りには、同じクラスの同級生が取り巻き、俺をあざ笑っていた。
二人きりじゃなく。公開処刑にしたのか……。
俺の中の幼馴染は、この時、どこかに消えてしまっていた。物理的にも、精神的にも……。
俺のことをあざ笑うクラスメイト達を後に残し、俺はフラフラと学校から自分の家に向かっていた。
俺は死にたい位の落ち込んでいた。それで思わずTwi〇〇erに呟いてしまった。
『今日、幼馴染の彼女に振られた……』
普段ならこんなことはしなかっただろう。
だって俺の Twi〇〇erのフォロワーは10万人を軽く超える。
影響力を考えたらよく考えて呟く。
でも、今日は誰かに聞いて欲しかった。
誰からも信じてもらえない俺は、何処の誰とも会ったこともない人に向かって叫び声をあげた。
俺のアカウントは個人というより仕事のためなんだ。
こんなプライベートなことを呟くべきじゃない、そんなことはわかっていた。
高校生の俺のもう一つの顔。
俺はweb小説家にして、人気ラノベの作者である『しいくがかり』なのだ。
そして、俺のことを信じてくれる人は、この世界に一人もいなかった。
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