4-1.【事例1】上司からの理不尽な指示
私は会社員時代、化学会社に勤めており、工場の化学プラントの設計と工事の仕事をしていました。既に述べましたように、化学プラントというのは、石油精製や高分子製品の生産に用いられる工場のことです。
そして、私の会社では、期(6ケ月)に一度、その前の期の業務査定があり、その結果を上司が面接という形で部下に伝えていました。
ある時、その業務査定の面接があり、先期の業績の話が終わった後、当時の上司が私に次のようなことを依頼したのです。
「おい、永嶋。実は差し入って、お前に頼みたいことがあるんだ。実は研究所から、俺のところへエンジニアの応援が欲しいと言ってきているんだ。研究所の仕事は、我々の本来のミッションである『工場のプラントの設計と工事』の仕事とは違うんだが、断る訳にもいかないので弱っている。すまんが、お前、今期は研究所の仕事に特化して、研究所を手伝ってやってくれないか」
私は、上司が研究所から圧力をかけられて困っている状況がよく理解できました。それで、上司の言葉にあるように研究所の仕事は私の本来のミッションではありませんが、上司をぜひ助けてあげたいと思って、その依頼を快く引き受けたのです。
私は指示された通り、その期は研究所のサポートの仕事を集中して行いました。
そして、半年が経ち、期が変わって、また業務査定の面接がありました。
すると上司が、怒りを抑えきれないといった口調で、次のようなことを言ったのです。
「おい、永嶋。お前は一体何をやっているんだ。我々の仕事は、工場のプラント設計と工事だろう。しかるに、お前は、この半年間、研究所の手伝いばかりやっていた。研究所の仕事は我々のミッションではないだろう。お前は我々のミッションを少しも理解しておらず、結果として会社に何一つ貢献していないじゃないか。全くもって実にけしからん。従って、今期のお前の業績は最低点とした」
私は、この言葉を聞いて、びっくり仰天しました。
なんと、その上司は、自分が研究所の仕事を手伝ってやってくれと指示したことを完全に忘れていたのです。
このような指示をいちいち記録には残しませんので、上司がそのような指示を出したという証拠は何も残っていません。
私は上司に対して「あなたが指示したから、研究所の仕事をやったんですよ」と何度も何度も言いましたが、上司は自分が出した指示を完全に忘れていて、全く私の言葉に耳を貸しませんでした。それどころか、私が言い訳をしていると思って、ますます怒り出す始末です。
当時の会社のルールでは、面接での業績査定結果の通知は、最高裁の判決と一緒で、査定結果はもう決定されたものでした。従って、一度出された査定結果をくつがえすことなどは出来なかったのです。また、面接や業務査定結果に対して、異議を唱えるといったシステムもありませんでした。すなわち、私には泣き寝入りするしか手段がなかったのです。
結局、私はその期の業績は最低点となり、ボーナスが大きく減額となりました。実はボーナスよりも影響が大きかったのは、一度でも最低点が付けられると、それを挽回するには数年を要するという査定システムだったのです。こうして、私は将来の昇進にとって、極めて大きなハンデを背負うことになってしまったのです。
上司が困っているだろうと思って、上司を助けるために、わざわざ無理な要求を引き受けたのに・・・私を待ち受けていたのは、このような実に理不尽な評価でした。
私は上司に裏切られた気持ちで激しく落胆し、何とも言えない苛立ちを感じました。面接のあった夜は悔しくて一睡もできなかったのを覚えています。言うまでもなく、上司に激しい怒りを感じるとともに、この怒りを訴えて出るところもないという会社のシステムに、まさに、はらわたが煮えかえる思いをしたのです。
以上が【事例1】の私のストレス体験です。
皆様には、この【事例1】とよく似たご経験はありませんか? また、もし皆様がこの【事例1】の私の立場だったら、皆様はこの事例のストレスから逃れるにはどうしたらいいのでしょうか?
それでは、次回にこの【事例1】をゲーム分析で振り返ってみたいと思います。
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