7.奇策

7.奇策

いまから数年前、社長は2人の常務のどちらかを後継者に据えようと考えていた。専務に昇格させ、経営手法や人脈などを少しずつ伝承するつもりだ。しかし、2人はどちらも優秀で甲乙つけ難い。そこで"ゲーム"をして勝った方を後継者にすることとした。もちろん遊びではなく、彼らの能力をきちんと推し量ることができる"ゲーム"である。


舞台は会社が最も力を入れている新プロジェクト。その開発には社内のリソースだけでは足りずSEを一部外注化することとなっている。条件は会社の認定企業であることと、会社の試験でLANK分けされた超一流SEであること。認定企業は4社あり、企業ごとに一人当たりの提示年額は異なる。社長がロンドたちへ向けて書いた企業ごとの単価表は以下のとおり。


Companys LANK3 LANK2 LANK1

GOLD 35,000 20,000 10,000

SILVER 55,000 35,000 25,000

KNIGHT 50,000 30,000 20,000

LANCE 45,000 25,000 15,000

※数字は一人当たりの年額単価(千円)

※4人全員同じ企業へ発注しなければならない


また、今回必要なSEは4人。LANK3が2人、LANK2,1が1人ずつである。提示は4人まとめた場合の金額のため、2人は○社、もう2人は○社など、複数社に分けて発注することはできない。


A常務はGOLD社(4名合計100,000千円)、B常務はLANCE社(4名合計130,000千円)を選択し、各々価格調整に入った。GOLD社は値下げ交渉には応じなかったがLANCE社は4名合計110,000千円までの値下げを約束した。だが、GOLD社に及ばないため同社が内定、A常務の勝利が濃厚となる。


しかし、正式発注を目の前にしてトラブルが起きた。GOLD社のLANK3社員2名が同じ車で移動中に事故に見舞われ長期入院が必要となったのだ。GOLD社にLANK3の社員はこの2名しかいない。焦ったA常務は慌ててSILVER、KNIGHT両社へ並行して価格交渉に入るがLANCE社の金額を下回ることができなかった。そのため、価格だけではなく品質や納期など総合提案で勝負するも、その場凌ぎのプレゼンテーションでは社長の心には響かなかった。


このままLANCE社に決まりB常務が後継者の座を射止めると誰しもが疑わなかった矢先、A常務は"奥の手"を使いB常務に大逆転勝利したのである。

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