第132話 大事な人だから

「だから、オレが喰う言うとるやろ」

「ダメだ。ボクが食べる」


 あー、待ってまって。私の意見は聞いてもらえませんか?

 不穏な会話が聞こえてくるのに、私の体は言うことをきいてくれない。

 そうだ、あれからどうなったんだろう。リアは? ミリアやクロウは? 気を失ってる場合じゃない。リアをミリア達のところに行かせないようにしないと――。


「だからまって!! 食べないで下さいっ!!」


 全力で体を動かす。足は無理かぁ。あ、手が動いた! よし、体を起こして……、あ、まって、これお腹がなる!!

 予想通りにぐぅーと勢いよくお腹がなった。どうしよう、寝たふりを続けるべき? ううん、恥ずかしくても起きないとっ!!


「エマ!! 大丈夫か!? ほら、ごはんいっぱいあるぞ」

「ごはんっ!?」


 ルニアの声に反応し体が勝手に起き上がる。さっきまで動かなかったのに、どうなってるのかしら。


「エマ、良かったぁぁぁぁ」


 なんだか前にもあったような、目覚めからのルニアの抱きつき。


「ルニア、みんなは? 大丈夫?」

「何いってるんだよ、エマぁぁ。エマのほうが大丈夫?だったんだからなぁ!!」

「え、何が? 私はほら全然なんともないよ。ほらほら」


 手も足も顔だって動くし、お腹も空いている。いつも通りの私だ。


「そうだ、リア。リアは?」

「エマちゃん、リアは――」


 スピアーも横にいたみたい。ルニアの後ろに立って話し始めた。

 よく見れば、ここはお城の中だ。いつの間に戻ってきてたんだろう。


「リアは、どこを探しても見つからんかった」

「え……?」


 ◇


 赤い実のなる木の場所。そこから谷底を眺める。

 ここにリアは飛び込んで消えてしまった。

 私が意識を失った後、かなり危険な状態だったんだそうだ。

 その間の事はよく覚えてないけれど、何か大事な夢を見ていた気がする。


「また助けてくれたの?」


 いくら待ってても返事はない。

 またと私は言葉にだした。それがどうしてだかわからない。


「ありがとう。もう一度会えたら私今度こそあなたを助けるから」


 私がリアの瘴気を浄化したあの時、出来ていなかったそうだ。

 私に体からは浄化されるはずの瘴気が溢れだしていた。

 限界がきてたんだ。


「エマ、おーい」

「ん、何? ルニア」


 赤い実をいくつか手にしてルニアがやってくる。


「はいこれ、お腹は空いてないか? 大丈夫か?」

「うん。ありがとう。大丈夫」


 あれから私の食事制限はなくなった。お腹が空いては浄化も出来ない。そう思って私はお腹に食べ物を次々運ぶ。


「見つけなきゃ。リアを――」


 瘴気に飲まれていく私を助けてくれたのはリアだったそうだ。

 抱きしめられ、全部を抱え込みどこかに行ってしまった。


「そうだな。探そう」


 近くにいる気がする。きっと――。

 ルニアと一緒に城に戻る。皆が待ってるあの場所に。

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