第78話 触れていい?

 全身がぷるぷるする。久しぶりに思いっきり体を動かす方のダイエットを頑張った。

 なぜならルニアが、


「ほら、まずは何よりも痩せて好きだーって伝えてやるのが先だろ」


 と、言ったので私は納得し、そのまま流れで地獄の訓練所……ではなくルニア達の鍛える鍛錬場で頑張ってきたのだ。

 ふふ、これで体重減っただろう。と、体をぷにぷにしてみて今日もまた撃沈する。一日で変わるわけがないか。

 はぁーとため息をつく。最近は竜魔道具作りに精を出していたので、これだけ体を使うのは久しぶりだ。


「頑張るぞぉぉ」

「大丈夫? エマ。ぷるぷる震えてるけれど」

「大丈夫。私頑張るから」


 お風呂あがりだろう。ブレイドが顔を少し赤くして部屋に戻ってきた。

 私と師匠アルが作ったお湯沸かし機能の竜魔道具。さすがに冬で外のサラマンダー風呂は使えないので凍えるのは嫌なので城内にあった温浴用の場所を修繕してそれを使えるようにした。竜魔石はブレイドとスピアーの二人提供の品だ。あまりに便利なのでいっぱい作ってあちこちに設置したけれど、竜魔石の作り過ぎで二人がフラフラになってしまったのは記憶に新しい。

 魔法も竜魔石も無限に使えるものじゃない。とても疲れるみたいなので大量生産はしすぎないように気をつけないと、ということで気をつけている。

 いざ何かあったとき魔法が出来ないとか空を飛べなかったりすると困るものね。


「頑張るって何を頑張るの?」


 私が転がっているベッドのすぐ近くまでブレイドが近寄ってくる。

 今ならぽかぽかブレイドにくっつくチャンスなのに私の体は言う事をきかない。


「えっと、色々?」


 好きって言うために頑張ってるなんて言えないし……。

 私は恥ずかしくて顔を隠す。


「そっか、色々……。エマ、体に触れていいかな」

「え?」


 体に触れる? え、どういうこと?


「やめとく?」


 え、やめられちゃう? 私はドキドキしながら急いで答えた。


「あ、あの、大丈夫」


 いったい何が起こるのだろう。というか、え、このままでいいの? 起き上がる力が今、ちょっと……。あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁーーー。

 大きくてがっしりした手が私のぷるぷる震える足に触れる。それから腕や腰を撫でて行く。くすぐったい。あ、だめ、そこはっ……。


「あぁぁぁぁ、痛いぃぃぃ、でも、気持ちぃぃぃぃ!!!!」


 ブレイドはぷるぷる震える私の全身を揉みほぐしてくれていた。あ、そこです。そこ。ありがとうございます。


「痛かった? ごめん。でもこうしておけば治りがはやいよ。あとはどこかある? 手が届きにくいところとか」


 ふぇぇ、全身もっとやって欲しいですぅぅ。なんて口に出せなくて私はあとでめちゃくちゃ後悔した。

 次の日、確かに全身ぷるぷるから驚異の回復を遂げた。あの手にもう一度触れてもらいたくて、私は今日もルニアのいる鍛錬場の扉を叩いた。


「やる気だな」

「頑張るって決めたからね!」

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