第47話 いつかは言ってない
静かな時間が流れる。短いような長いような。
頭の中で私はすごい勢いで駆け回っていたのだけど。
どどどどどどど、どう答えたらいいのっ!? ヤダって言ったらどうなるんだろう。ブレイドがダイエット手伝ったりしてくれるのだって美味しくなるようにでだもの……。
はっ、そうだ。ダイエットするって言っておいてお菓子食べてるから怒ってる? あぁ、最初の時にきちんと食べるのお断りしていれば……。
すぅっと息を吸って笑って見せる。少し引きつっている気がするけれど。
「もちろん。その時がくれば食べてね」
いつを言わずに誤魔化してみる。今じゃないのよ。そうまだ、まだその時じゃないの。……ただ問題の後回しをしただけなのはわかってる。
ブレイド、なんだか笑ってませんか? 私の気のせい?
「――――その時がこないで欲しいな」
小さな小さな声がそう言った。聞き間違い? 聞きたいけれどブレイドはあっちを向いてしまっている。とりあえず、今すぐ食べられる事は回避できたのかしら。
スカートのひだを手でおさえ座りなおす。ふぅと一息はいて姿勢を整えた。
「お話って私がそろそろ食べられるかどうかの確認だったんですか?」
「あぁ、ごめん。違うんだ。ボクの話をしたくて。エマの話はルニアからある程度聞いているけれどボクの話はしてないからその、ボクの事知りたいって言っただろ?」
「うん。言った。でも、えっと、私の話を聞いてる?」
ルニアからいったいどんな情報がブレイドに流れているのか。話すなって言っておいたのに、まさか私の気持ちまで面白おかしく伝わってない!?
頑張って続けていた笑顔がだんだん崩れていくのがわかる。顔を突っ伏して寝てしまおうかしら。
「聞いてる。国を追い出された事や婚約者から婚約を破棄されたことや、聖女の仕事をしていたこと」
ひとまず、おかしな事は言ってなさそうで笑顔をなんとか保てた。次の一言までは。
「ボクにはやく食べてもらいたいって言ってる事」
ルニア……、ルニアー!?
食べられると困るんだって、一緒にいられないよ!? 応援してるの、してないの? いったいどういうつもりで!!
「この国では瘴気の事はボクがするから、エマは無理しなくていいからね」
「ありがとう。でもブレイドも無理はしないで頼ってね」
違う、今はそこじゃないと思いつつ私は頷く。
「それでエマのことを聞いてばかりだと、不公平かなと思ってさ。ボクの事知っておいて欲しい事があるんだ。ルニアじゃなくて、エマに聞いて欲しい」
「私に? どうして?」
ルニアに話せば私にも届くのは、わかってるだろうに。
直接私にということは、どういうことだろう?
「あまり他人に聞かれたくない話もあるからさ」
あの、私も他人では? よくわからないけれど、私にだけ話したい事があるでいいのかな。それって、期待してもいいのかな。私の事を少しくらいは信頼してくれてるって思っても。
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