第26話 二回目の
ルニアはゆっくりとリリーを地面におろす。だけど、私の顔を見るとすぐにルニアの後ろに隠れてしまった。
私、そんなに怖がらせてた!?
「あの、リリーさん。私別にあなたを食べるとか考えてないですよ。ほんと。だから怖がらないでください」
と、伝えてみたけれど距離はどうやら変えられそうにない。彼女はぷるぷるしながらこちらを見るだけだ。
「エマちゃん、それでオレとのキスはー?」
「しません」
「え、ええの? そのめっちゃ複雑な呪いなんとかせんでも」
「それは――」
なんとかはしたい。けれど、他になんとか出来る手はないのだろうか。竜にしかとけないとかだったらブレイドは出来ないのかな?
言葉に詰まって考え込んでいると、気がつけば目の前にブレイドが立っていた。
そのまま顔が近くなったと思った次の瞬間には皆の前で唇を奪われていた。誰のだったのかわからないけれど、「あーっ!」という叫びが聞こえた。
え、何が起こってるの? 今私何してるの?
いきなりだったけどどこか遠慮気味で不器用なキス。彼とは二回目の。
少しして温かさが遠ざかる。もう少しブレイドを感じていたかった。
「ボクじゃダメみたいだ。ごめん」
「え、あ、あぁ、スピアーと同じ事しようとしてくれたの? ごめんね、そんな、あ……、ありがとうござい……ます」
今真っ赤な顔だと自分でもわかる。顔が全部熱い。それでもなんとかお礼を言う。お礼? お礼でいいんだよね? ん、でもさっき私スピアーに対しては嫌だって言ってたのにおかしいって思われない!?
「エマ、まさか、そこまで進んだのか」
ルニアのニヤニヤ笑いがいつもの三倍ニヤニヤしてる。気がする。あと、さっきのやり取りをリリーが興味津々で見ていた。そうだ、三人もまわりにいたんだった。その事実に顔が火をふきそうであまりの熱さに倒れてしまいそう。
「ううん、あいつがやってムカついたから、ボクのでエマを塗り替えたかっただけだよ」
ぷいっと後ろを向くブレイドの耳が少し赤く見えたのは気のせいかな。
「あー、そういうことか。そりゃ嫌だよな。自分の食べ物に他人の唾がとんだら嫌だもんなぁ」
なんてルニアが言うものだから、私はがっくりと肩を落とす。
あはは、そっか。やっぱり食べ物かぁ。
それにしても王子様でもムカついたなんて使うんだ。本の世界の王子様像とは全然違うブレイド。もっと知りたいな。どんな風にそだったのかな。ここが
「ぴ、ぴぃぃーーーーー!」
突然リリーが大きな声で鳴いた。そしてルニアの足元から何処かへはねて逃げていく。
「リリーさん!? また?」
私、また何か怖がらせるようなことをしてしまったのかな。
「今のは、まさか――」
「ブレイド様!!」
シルが息をきらせてあらわれた。相当焦っているように見える。
「瘴気が出ました。広場です。すでに何人かが――のみ込まれてしまいました」
瘴気を最初の場所で抑えなかった時どうなるか。瘴気はあちこちから噴き出すようになる。もちろんどこかなんて予想はできない。この国は今その状態なのだ。
「すぐ行く!!」
「私も!」
「ちょーっと、まった!! エマは服をなんとかしなきゃだろ」
ルニアに止められている間にブレイドとシルが走って行ってしまう。広場ならすぐそこだし一人でも行けるけど、少しだけ寂しかった。頼ってくれないのかな。私だって、浄化出来るのに。
「あーあー、忙しいやつやなぁ」
「……あっ!?」
「んー?」
「ブレイド、これ忘れていってる!!」
「……コレちゃうわっ!!」
あまりに急いでいるからか、ルニアがここにきたから任せたのか、スピアーを思いっきり置いていってる。
「なぁ、エマ。オレとこんか? あんな置いていくようなやつやめてさ」
「やだ」
「えー」
そりゃ、置いていかれたのは不服だけれど私はまだここに来て少ししかたってない。ずっとここで一緒に戦い続けてる人たちと比べて自分を大事にして欲しいなんて自惚れるつもりはない。
「で、コイツの首を切り落としとけばいいか?」
ルニアは剣をスピアーに向けると笑顔で聞いてきた。
「これとかコイツとか、あーもう!! オレはスピアーだって言っとるやろ。それより、もう一個の方はどうするんや?」
スピアーがブレイドの向かった広場とは違う方向へと首を動かす。
「もう一個?」
「瘴気があっちでも噴いてるぞ」
スピアーの視線の先はちょうどリリーが走り去った方向だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます