第43話 従魔の存在

「あの亀さんキラちゃんが、おっきなカエルヒュージトードさん達と戦って傷ついてたの。で、ポーションぶっ掛けたら、カチッて感じでついて来た従魔になったんだー」


 わかんないよ、ミルキィ。

 その、カチッって何?


 そもそも、どうして魔物が人について来るの?


 かなり珍しいけど、女神より与えられし職として動物使いビーストテイマーは存在する。尤もクラリスは出会った事ないけど。


 魔物じゃないの。動物。

 魔核コアが生成され魔物化した時点で、それは人に敵対する存在ってなる。


 そうは言っても、成り立ての低ランク魔物はまだ使役契約テイム出来るらしい。

 ホーンラビットとか森林猫フォレストキャット等のランクF魔物の従魔は存在が確認されて記録にも残っているとか。


 ただし、1匹。


 動物使いビーストテイマー使役契約テイム出来るのは1匹だけ。複数の契約は魔力枯渇や神経負担による焼き切れ等、動物使いビーストテイマーの生命に関わるとか。


 魔人族のミルキィの魔力は、控えめに見ても私達人族の10数倍は有るでしょう。

 でも神経負担は?

 それに蜘蛛種魔物デスタラテクト亀種魔物アダマンタートルもランクSだよ?


 アダマンタートルは、魔物には珍しく動物時と食生活が変わらない雑食性で、人を襲う事も殆ど無い。寧ろ人の気配で甲羅に閉じ籠る位。だから人に馴れる?ついて来るのも無理矢理だけど納得出来る。

 でも、最初の従魔、デスタラテクトタラちゃんは凶暴で人を捕食する事もある蜘蛛種最強の魔物。致死性の毒もある近付きたくもない魔物。


 どうしてミルキィは、ポーションかけよう助けようと近付いたんだろ?


 当時7歳だから、おっきな蜘蛛としか思ってなかった。ミルキィはそう言ってたけど。


 夕刻に帰宅したミルキィは、従魔達に自作餌ペレットを与えてる。

 皿に盛られた餌をパクついてる光景は、もはや魔物って言うか野生動物とすら言えない感じ。


 なにせペットサイズだし。


 デスタラテクトは蜘蛛種魔物の中でも最小に近い。ミルキィの肩に載る位だもん。

 アダマンタートルも亀としたらデカいけど、でもミルキィが両手で抱え切れる大きさ。甲羅が50㎝位かな?名前の通り鉱石アダマンタイトみたいな光沢を持つ甲羅がキラキラしてる。頭や手足は黄色ラインがいっぱい有るから、本来なら黒い身体なのに黄色体色に見える。口から覗く牙が無ければただの亀。うん、あまり魔物化前後で変わらない身体ってのも、見た目ペットって状況に輪をかけてる。


 ガチャ。


「よう、ミルキィ、帰って来たって?って、は?何、この亀?」

「…ミルキィの新しい従魔」

「は?2匹目?マジ?」


 私達を呼びに来たんだろうジオも、目の前の光景に絶句してる。

 って言うか、今、ノックもせずにドア開けたよね?ジオ!ある意味、その気安さは嬉しいけど、主人たる令嬢の部屋だって自覚ある?

「申し訳ありません、お嬢様」


 なんて白々しく軽い謝罪。


「貴方じゃなければ従者クビよ、ジオ」

 幼馴染の気安さ。問題あるかもしれないけど、例え着替え中に踏み込まれても、実は私自身にあまり抵抗が無い。

 なにせ、コッソリ池で2人裸で泳いだ事だって有るし。それも数年前に。


「夕食の支度が出来たそうです。お嬢様とお客人は食堂へお越し下さい」

 通路の先、他のメイドの姿が見える。

 だからジオも従者騎士としての態度をとって。

「わかりました。ミルキィ、行きましょう」

「そうね。じゃあタラちゃん、キラちゃん、また後で」


 食堂へ行きつつ、やっぱり考えてしまう。


 何故あの2匹は、ミルキィについていく事にしたのだろう。従魔だからミルキィに使役契約テイムされているのは間違いない。実際タラちゃんは凶暴って言葉捨てたの?って言う位愛嬌が有るし。人工餌ペレット食べているのもそうだ。人の手による餌を、とても美味しそうに食べてる姿はペットにしか見えない。

 何よりミルキィとタラちゃんは誰が見ても意思疎通出来てる。多分、キラちゃん?もそうなんだろう。


 ランクS魔物の従魔。

 ミルキィって何者なの?

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