ミルキィにおまかせ!
ノデミチ
学院の新入生
第1話 クラリスとミルキィ
王立レクタル学院。
レクサンダル王国の未来の担い手の学び舎として王都にある大陸でも有数の学校。才能あれば身分や人種すらも問わない門戸は、そうは言ってもかなり狭き門。
幸い、私クラリス=ケインには才も身分もあり今年、当校神聖科に入学する事が出来た。
ケイン辺境伯家は国境守備の要たる貴族。
父モーガン=ケインは剣聖と呼ばれる程の剣士であり、母メリッサは魔女と言われる大魔導師。私も曾祖母以来の聖女と噂される程、神聖魔法の才に恵まれた。
この学院は10歳以上ならば入学資格がある。
王立なのに、他に入学資格を問われないんだ。貴族だろうが平民だろうが、亜人獣人だとしても関係ない。問われるのは優れた才だけ。
レクサンダル王国が、大魔王ベルドを倒した勇者アレクを祖とする王国だから。再び地上を虎視眈々と狙う魔族達と戦う為に勇者が興した国だから求めるのは実力。
レクサンダル王国は、世界的にも珍しい亜人獣人でも下位までとは言え貴族爵位が与えられる王国なんだ。
「クラリス、ココにいたの…って、ミルキィもいたのかよ」
私の幼馴染で戦士の才を得たジオ=ヤザン。
ケイン辺境伯家の近衛騎士団長の次男。腰にあるのはミスリルの剣。それに錬金術で威力と追加効果を高める付与が施してあるんだけど、その付与した稀代の錬金術師が、私達の目の前にいる少女ミルキィ。
濃い藍色の髪と右目が紅眼、左目が金色のオッドアイを持つ、この国でも珍しい魔人族の血を引く少女で、私達と同じ新入生。
今、彼女は学内購買部に依頼された
「相変わらず冗談みたいなヤツだな。10個一気に錬成なんてどんだけの魔力なんだよ」
いや、生成魔法陣は元々それ程魔力を必要としてない。だから10個起動しても魔力枯渇で倒れる事は無いと思う。でもクスリの錬成ってかなり微妙な調整を必要としてた筈。攻撃魔法を使用する時の生成魔法陣なんかとは比べ物にならない位複雑な陣が形成されてるもの。
ミルキィの冗談の様な才は、そんな複雑な魔法陣を難なく複数生成し活用出来る処。
「魔人族とのMIXは伊達じゃないんだから」
初対面の自己紹介で、ミルキィはそう言って
「私におまかせ」
ジオの持つミスリル製の剣に、あっという間に色んな付与をやってのけた。
シュシュシュ!シュー‼︎
「うるさい、口じゃなくて手を…脚か。8本在るんだからもっと細かく動かして」
彼女の助手にして従魔の、肩に乗りそうな小型クモが何か文句言ってる。
糸や8本の脚を器用に使い、錬成材料を纏めていってる。
「タラのヤツも難儀な主を持ったなぁ」
「ジオ?聞こえてるからね」
あれだけの錬成をするから、その集中力は凄まじい筈なのに。確かにコッチは見ないけど。
それに、あの従魔。
タラって呼ばれたのは、デスタラテクトという猛毒蜘蛛の魔物。クモ型種の中でも最も遭いたくない相手で致死毒を持つ上にとても凶暴。更にこの子は希少種のウイング種。つまり甲虫みたいに内翅を持つ、飛翔能力をも持ってる最悪のランクS級魔物。
ミルキィとの掛け合いを見てると、何処が凶暴?って感じなんだけど。
何でも名前が不満なんだって。
…タラちゃんって呼ばれてるモン。
安直過ぎるよ、ミルキィ。
ミルキィと出会ったのは学院入試の為に、北の国境、辺境伯領都バルザールから王都へ向かう途中。私達の馬車は運悪くオーガの群れに遭ってしまった。
私の神聖防御魔法とジオの剣技、近衛騎士達の防戦で無事ではあったものの、打開するには一手少ない状況に、彼女が現れた。
その時、ミルキィの背にタラちゃんがいて、彼女の翼の役割も兼任していた。肩に載る位の大きさなのにミルキィに生えてると思える程の透明感溢れる翅を広げていて、私達は新しい魔物?魔族?って身構えてしまったの。
「大丈夫?助けますねー!このミルキィにおまかせ‼︎」
何処からともなく大鎌を取り出した彼女と従魔は、あっという間にオーガの群れを殲滅した。
「ありがとうございます。私達は王都に王立学院の入学適正試験を受ける為に向かっていた処、あのオーガの群れに出くわしてしまいまして。あ、私はクラリス=ケイン、彼も同じ受験者でジオ=ヤザンと言います」
「私はミルキィ。同じく錬金術科を受けようと向かってた途中で見かけたから」
何処へ先程の大鎌を仕舞ったのだろう?
それに、錬金術科?
あんな身の丈もある様な大鎌を振り回していて?
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