第9話※性的描写アリ

 「素晴らしいね、今回も。」


思わず独り言が漏れた男は、一人の空間で息を大きく吐いた。吐息には熱がこもっている。

女の悲鳴と醜い化け物の荒い息遣いの協奏が響き渡っていた男の脳に静寂が訪れたが、映像を切っても男の興奮は覚めないようだ。右手は下半身の隆起した熱を握っていた。

男の頭の中で女は夢の中よりも酷いあられもない姿になっているだろう。男の目に嗜虐の色が濃く映る。男は頭の中に集中するよう目を固く閉じ、夢の髪の長い女を想像した


荒い息を出す自分はさながらあの化け物だろうか。あの女の顔は辱めを喜んで受け取っていた。この夢の作者は自然描写の想像が上手いと評判だが、そんなものよりも被虐性願望が垣間見える夢の方が需要があると思う。夢売買マーケットではこういった類の願望が映る夢はよく出てくるが、この作者は丁度いい塩梅だ。喜んでいるのに認めようとしない馬鹿で強情な女。

頭の中で想像しうる限りの屈辱を与えていく。


男はうっそりと笑って額に汗をかきながら自身を高みにもっていった。


一度深く息をすって吐いた男は、途端に自身の手を汚してしまったことを不快に思い始めた。

席を立って身なりを整える。


男の脳内は既に別のことで埋め尽くされていた。

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